小説『絆の決闘者と夜天の主』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 鉢合わせた未来組。
 まぁ、この事件に関わっている者全てが各々事態解決に動いている以上、いつかは鉢合わせただろう。

 「トーマって…あのトーマ!?トーマ・アヴェニール!?」

 「そうだよ!分らないの!?」

 「えぇ!だって私の知ってるトーマって普通の男の子で、そんな刺青とか壊そうな剣なんて持ってなかったんだけど!」

 「はぁ!?」

 だが、会話がかみ合わない。
 トーマはヴィヴィオとアインハルトを知っているようだが、ヴィヴィオは記憶の中のトーマとは違うらしい。
 アインハルトに至っては全く分っていないようだ。

 『ねぇトーマ、若しかしてこのヴィヴィオとアインハルトって…』

 「かも知れない。なぁ、ヴィヴィオ、アインハルトちょっと俺と戦って、DSAAルールで!」

 何かを思いついたのか、トーマはヴィヴィオ達が格闘技で使用するルールでの戦闘を申し込んだ。
 はてさて、その結果はどうなる事か…












  遊戯王×リリカルなのは  絆の決闘者と夜天の主 クロス61
 『未来組確保しました』











 「DSAAルールで!?何で?」

 「ちょっと確かめたい事が有るんだ。それに、其れが分れば万事解決ってね。」

 突然言われたヴィヴィオは当然驚くが、トーマも退かない。
 更に…

 「其れと改めて、覇王流継承者アインハルトさん!此方は銀十字流銃剣術のトーマ・アヴェニールあ〜〜んど!」

 『リリィ・シュトロゼック!』

 「正式に試合を申し込むぜ!」

 アインハルトにも改めて試合の申し込み。

 「…分りました、其の試合お受けします。」

 で、アインハルトはあっさり受ける。
 本よりアインハルトはシグナムに匹敵するほどのバトルマニアの面がある。
 『覇王流継承者』の自覚がより戦いを求めているのかもしれない。

 「アインハルトさん!?」

 「大丈夫ですよヴィヴィオさん。DSAAルールだったら仮想ダメージですから。
  それに、格闘家としては挑まれた勝負を受けないほうが礼を失すると思いますから。」

 驚くヴィヴィオもなんの其の、覇王は完全にバトルモードである。

 「あう〜〜そう言われちゃ仕方ないですね。分った、相手するよトーマ?」

 「だからなんで疑問系!?」

 「だってやっぱり同じ人には見えないんだもん!」

 確かに戦闘形態と通常状態では眼の色も髪の色も違うから仕方ないだろう。

 「はぁ…エリオにも『悪そう』って言われるしさあ…」

 『では試合を開始します。』

 「銀十字!お前少しは空気読め!!」

 『周辺の大気は正常です、有害物質は検出されませんでした。』

 「そうじゃねぇ!ってか其のネタは前にもやったっつうの!!」

 落ち込むトーマは銀十字と天然コントである。
 如何にも緊張感に欠けるのは何故だろうか…


 「あの、試合は構わないんですが、彼方1人で私とヴィヴィオさんの相手を?」

 流れを戻したのはアインハルト。
 2vs1に見える状況に『変則マッチ』かと問う。

 「あ、それなら大丈夫。こっちも実質2人だから。まぁ、やってみりゃ分るって。銀十字、改めて試合開始を!」

 『DSAAセット、試合を始めてください。』

 仮想ダメージシュミレートが起動し、やっとこさ試合開始。


 其れが始まった瞬間ヴィヴィオとアインハルトの雰囲気が変わった。
 紛れも無くそれは『格闘家』としての気合だ。

 アインハルトが前衛、ヴィヴィオが後衛と言う陣形を作る。
 クロスレンジに長けるアインハルトと、相手の分析とカウンターブローに定評のあるヴィヴィオなら自然とこうなるだろう。

 「2人とも雰囲気が変わった…こりゃ油断したら落とされる。リリィ!」

 『うん、頑張ろうトーマ。』

 トーマとリリィも気合を入れなおす。


 「覇ぁぁぁ…崩天琳!」

 先に仕掛けたのはアインハルト。
 一足飛びで間合いを詰めてからの流れるような連続攻撃で先手を取る。

 「!!思った以上に速い!!」

 トーマも其れを手にしたディバイダーで防ぐ。
 が、相手は2人、アインハルトの一撃は正に『第一波』に他ならない。

 「アクセルスマ〜〜〜ッシュ!!」

 アインハルトに隠れるようにして接近したヴィヴィオの追撃。
 其れも防ぐが、今度の一撃は少しばかり浅くトーマが反撃するには充分な隙ができてしまう。

 「貰った!クリムゾン!!」
 『スラ〜〜ッシュ!!』

 横薙ぎの斬撃を放ってからの突進突きで2人纏めて吹き飛ばす。
 中々の攻防だ。

 「って〜〜…腕が痺れる。間違いない、この拳の重さと鋭さは本物のヴィヴィオとアインハルトだ!
  けど、なんだろう……少し戦闘パターンが古いような…?」

 『トーマ、よそ見したらダメ!!』

 「へ?ぬおわぁぁ!!!」


 ――ガキィィン!!


 女子2人の実力に、其れが欠片ではなく本物だと見抜いたトーマだが戦闘中に考え事は宜しくない。
 吹き飛ばしたヴィヴィオが持ち直して、未来のなのはから教わったであろう超強力バインド『レストリクトロック』でトーマを拘束。

 そしてこのバインドで拘束したということは=最大の必殺技が来るわけで…

 「捕らえました!いきますよ、アインハルトさん!」

 「はい、ヴィヴィオさん!」

 普段から一緒に練習している先輩後輩で親友でライバルでもある2人の息はぴったり。

 「しまった!!」

 慌ててもう遅い。
 必殺の一撃はスタンバイ完了なのだから。


 「一閃必中!セイクリッド…ブレイザー!!」

 「覇ぁぁ…覇王!断・空・拳!!!」

 トーマを挟み込むようにして放たれた必殺攻撃!
 全開の直射砲と、練り上げられた魔力付与の拳打のコンビネーションは凄まじい。

 「手応えあり!」

 「やりましたか?」

 ガッツリとした手応え。
 DSAAルールなら設定されたライフが消し飛ぶほどの一撃だが…


 「ふぅ…危なかった…助かったよリリィ。」

 「分断うまく行ったね♪」

 今までエンゲージ状態だったリリィが外に出て攻撃を分散させていた。
 更に、

 「今度はこっちの番!銀十字。」

 銀十字を使い中空に魔導書のページを散りばめヴィヴィオとアインハルトを取り囲む。

 「「!!」」

 今度はヴィヴィオ達が驚く番だ。
 まさか落されていないだけでなくこんな攻撃をしてくるのは予想外だっただろう。


 「アインハルトさん…」

 「拙いですね…周囲全てを囲まれています。この状態で魔力弾が来たら旋衝波でも返しきれません。」

 「ですよね…」

 周囲を囲まれては全弾撃ち落しは至難の業。
 となれば、被弾覚悟で行くしかないだろう。


 「お願い!」

 リリィの掛け声と共に放たれた射撃に対し2人は最低限の防御だけをして特攻!
 ヴィヴィオはリリィ、アインハルトはトーマ狙い。

 だが、少しばかり遅かった。

 「今度はこっちの番だぜ!シルバー…ハンマー!!!」

 突撃してきた2人に対し、カウンターの直射砲炸裂!!
 最低限の防御しかしていなかった2人は防ぎきれないわけで…


 ――ドッゴォォォン!!!


 「にゃぁぁぁ!!」
 「きゃぁぁぁ!!」

 見事撃墜。
 ついでのこの一撃で設定ライフが0になったらしい。

 「うえぇぇ…DSAAルールで負けたぁぁ!!」
 「マダ精進が足りませんね…」

 ダメージシュミレーターが終了し、全員元通り。

 「何とか勝てた…けど間違いない。」

 「でもあの2人は私達の事知らなかった、…めんどくさい事かな?」

 「如何やらそのようで…」

 未来組も未来組で、複雑かつ面倒な事になっているようだ。








 ――――――








 「俺達が来たのは新暦82年…3年もずれてるのか…」

 「3年後のトーマ…だから大きかったんだ…」

 試合終了後、一行は近くのビルの屋上で情報交換をしていた。

 分った事は多くないが、互いに此処よりも未来の世界から来て、更にそれでも元の時間軸は違うということは分った。
 だからと言って状況が進展したわけではない。

 夫々の未来に獲るにしても方法は不明なのだ。

 「さてと、どうしたものか……!?」

 「此れは…魔力反応!?其れも物凄く強い!!」

 そして、こういう時に新たな何かが起こるのはお約束。
 近づいてくる強力な魔力反応をキャッチし、一行は再び戦闘形態をとる。

 「近づいてくるのは一体?さて誰が来るぅぅぅぅぅ!?」

 目視できる距離にまで来た反応の正体に、一行は驚きで目を剥いた。
 よりにもよって現状ではあまり会いたくない方々だったのだ。

 「ややややや、八神司令ぃぃ!?」

 「ママ!?」

 「フェイトさん!?」

 現れたのははやて、なのは、フェイトの3人。
 後に次元世界に其の名を轟かせる事になる3人の魔法少女のご登場である。


 「ねぇ、迷子さんなんだよね?お話聞かせてもらえないかな?」

 「ちゃんと帰れるように、私達が手伝うから…」

 「出来れば良い子で一緒に来てほしいんやけどなぁ?」

 ぶっちゃけて言うとこの3名は全員が未来組より年下である。
 それでも、精神的には全然大人で余裕だ。

 其れとは反対に、未来組――と言うかトーマには余裕が無い。
 エンゲージ状態のリリィもだ。

 「あ、あのスイマセン!ちょっとアレなんで離脱します!!」

 『へ?トーマ!大丈夫だよ、八神司令ちっちゃいから!』

 「ちっちゃくても司令だから!怖いに決まってるから!!つーことで、アディオス!!」

 一体未来でトーマははやてに何をされたのか?
 怖がり方が半端ではない。

 更にこのトーマの緊急離脱が…

 「あ、あのスイマセンちょっとしつれいしま〜〜す!!」

 「此処は退かせていただきます!」

 ヴィヴィオとアインハルトの離脱も誘発していた。
 勿論はやて、なのは、フェイトの3人が其れを逃がすはずが無い。


 「は〜い♪って何でやねん?逃がさへんて!」

 「うわぁぁ!突っ込みながらおってきたぁぁ!!!」

 「何でそんなに怖がるかなぁ?未来では私等知り合い?未来の私っておっかないんか?」

 「ももも、黙秘権を行使します!!!」

 「…未来の私はこの子に何したんやろか?」

 謎である。
 が、こんなアホ会話をしていながらもデッドヒートは続いている。
 なのはとフェイトも同じだろう。


 しかしながらこのままだと分散してしまう。
 其れは良くない。

 だが、マンツーマン状態では仕方ない。



 そう、仕方ない『マンツーマン』だけならば!!


 「頼むぞ『ジャンク・ガードナー』『ジャンク・デストロイヤー』『ジャンク・バーサーカー』!」

 忘れてはいけない。
 この3人娘のほかに、遊星という最強の切り札が居るのだ。

 すぐさま3体のシンクロモンスターを召喚して未来組をとめる。


 「え?きゃぁぁ!!」

 アインハルトは突然目の前に現れたジャンク・ガードナーに行く手を阻まれてそのまま激突して確保。



 「4本腕って…そんなのアリ!?」
 『えっと、不動博士ならありだと思う。』

 トーマとリリィはジャンク・デストロイヤーの4本の腕で動きを封じられ…



 『ワリィゴハ、イネガァァァ!?』

 「にゃーーーーー!!!」

 ジャンク・バーサーカーがヴィヴィオの前にドアップで現れ戦意と奪い去っていた。
 この状況で的確な一手を打つ当り流石遊星である。


 「逃げないでくれ、別に俺達はお前達をどうこうしようって言うんじゃない。
  ただ、無事に元の世界に送り返してやりたいだけだ……出来れば従ってくれないか?」

 其の遊星も、未来組に優しく言う。
 危害などは絶対に加えないから従って欲しい、と。


 「はあ…此処までか。八神司令に不動博士まで出てきたら俺達じゃ無理だ。」

 「これ以上は私達だけではどうにも……分かりました従います。」

 トーマとアインハルトは観念しアースラの保護下に。
 残るはヴィヴィオだが…


 『ワリィゴハ、イネガァァァァ!!』

 「きゃー!きゃー!!」

 バーサーカーに追い回されていた――何故に!?
 手にしたアックスソードを振り回しながら美女を追いかける狂戦士…シュールにも程があるだろう。


 「…戻ってくれ、ジャンク・バーサーカー…」

 で、遊星がカードをディスクから外せば即消えた。


 「…大丈夫か?」

 「な、何とか…博士トンでもないカード持ちすぎ…」

 解放されたヴィヴィオは息が上がっていた。

 「…見た目は怖いかもしれないが、頼りになる仲間だぞ?」

 「でも怖いの!!」

 ご尤もである。


 「え〜っと…此れは全員確保言う事でえぇんやろか?」

 「た、多分…」

 で、はやてとフェイトは状況を確認。
 もう逃げる意志はないようなのでアースラに連れて行っても大丈夫だろう。


 なのははと言うと…

 「え〜っと…大丈夫?」

 「うえぇぇん!怖かったよママーーー!!」

 「ほえぇぇ!?」

 ヴィヴィオに抱きつかれて……と言うよりも『ママ』と呼ばれた事に驚いていた。
 未来組を全員確保したものの、アースラに戻るには少々時間が掛かりそうだ…








 ――――――








 其のアースラ内部では…


 「独断で何処に行くつもりだ?」

 「幾ら遊星君に治してもらったって言っても貴女はマダ完全じゃないんですよ!」

 「あら〜…そんな怖い顔しないで♪自分の不始末の片付けをしにいくだけよん♪」

 クロノとシャマルがキリエの前に立ちふさがっていた。
 独断で何かをしようとした彼女と止めようと…そんなとこだろう。


 「不始末…?」

 「…私の勝手な行いでトンでもない事が起きちゃったから。
  U-Dが全能力を解放すれば、星の2つ3つ簡単にお陀仏よ?だから其れを止める為にね…
  アミタが使ったオーバーブラストも、私ならもっと巧く使えるし、あれならヤミちゃんもイチコロよ♪」

 「でも、其れを使ったら貴女は…!」

 「言わんとすることは分るんだけど、機械って元々人の為に何かをなすものでしょ?
  だったら、私はせめてもの償いに其れを全うするだけ……お願い、通して!!」

 己の不始末…確かにそう言えるだろう。
 だからと言ってミスミス自己犠牲を見逃せるかと言えば其れは否。


 キリエが並々ならぬ覚悟を決めたように、クロノとシャマルも此処を通す心算はない。
 誰よりも命の重さを誰よりも知っているシャマルは特にだ。

 「悪いけれど、其れは出来ないお願いよ。」

 「どうして!?世界と私1人なら天秤にかける必要も無いでしょ!?」

 「『仲間が危険を冒そうと居ているのを見過ごす事はできない!』…遊星ならそう言うだろう。
  僕も、僕達も同じだ!どうしても此処を通りたいなら、僕達を倒していってくれ…!」

 S2Uからデュランダルに持ち替え、クロノはやる気だ。
 シャマルもクラールヴィントを展開している。



 自己犠牲で破滅を止めようとする者。
 犠牲を認めず、全員が生きて未来を紡ぐ事を望む者達。

 其の激突は避けられそうには無い。














   To Be Continued… 




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