小説『東方羅刹記』
作者:unworld()

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 プロローグ

フクロウがホーホーと鳴き声を鳴らすとき、そう真夜中である。
何時かは分からない。ここは原っぱみたいなもので草たちが風になびいて音を奏でていた。
この日の夜は雲一つ無くきれいな満月が良く見えていた。
しかし、どんな時も危険はつきものである。こんなきれいな夜に忙しなく動く影が二つ。
しかも、一方は体力の消費が激しいのか息が切れている。
察するに戦いである。
戦っているのは黒い羽を持つ妖怪と人間の少年である。
少年の足下には血だまりが出来ていて素人目にみてもあまりにひどい怪我である。
すると、妖怪がとてつもない早さで少年に迫りくる。
少年は防御も出来ずに妖怪の手が少年の腹を貫き口から血が漏れる。
あまりにも凄惨な光景である。やがて手が引き抜かれ黒い翼をもつ妖怪が急ぐように飛んで逃げていく。
少年は糸を切られた人形のごとくその場に崩れ落ちた。
ヒューヒューと明らかにおかしい息をしながら上空に広がる満点の星空を見上げる。

すると、少年を呼ぶ声が遠くから聞こえ、それもだんだん近くなる。
声を上げようとのどをふるわすが出てくるのは声にならないかすれた声
少年はそこで自分の死期を悟ったのだろう。
今日は少年の誕生日である。12歳の誕生日…それで少年の仲間たちと一緒に宴をしていたのである。
そこで、騒いでいる仲間たちをみて何を思ったのかその場を離れたのがいけなかった。

みなのいないところについたときに先ほどの妖怪におそわれたのである。
武器も何も持っていなかった少年は何とか善戦したが意味はなくこのざまである。

なんとか生き延びたいと思っても運命というものは時に残酷である。
星空を見上げていた少年は自分の異変に気がつき体を動かそうと力を入れる。
だが、それも意味がない。
言うこと聞いてくれない少年の身にまたもや不幸が訪れる。
季節はまだ夏には届いてなく春である。
しかもこの日は夜が寒く何時間もいたら風邪を引いてしまいそうなほど寒かったのだ。
そんな所に半分以上死人の少年がいたらどうなるかたやすく想像が出来る。
…死…これの足音が聞こえるように近くに来ていることを感じた。
思ったより早かったな…などとおもいつつ自分が死にゆくのを感じた。
すると声が聞こえた。自分を呼ぶ声が…
しかし、その声はすぐに悲鳴に変わっていった。
すると、さわぎを聞きつけた仲間が集まってきて、少年に気がつき悲痛な声が上げられた。
すぐに応急処置が施されるがそれだけで助かるとは到底思えない傷が少年の体についていたのだ。
泣き崩れる者が出た。
泣きながら憤る者が出た。
明らかに泣くのを我慢している者もいる。
自分が死ぬのを悲しんでいるのか…と少年は思い救われた。

そしてかすれる声でこう言った。

「あり…がとう…絶対…絶対戻って…くるからさ…
そのとき…は…また…笑顔で…迎えて…くれる…か?」
「ええ、絶対絶対笑顔でむかえるわ」

泣きながら作った笑いで落ち着かせようとしてくれているのか。
励まされた。

「…約束…だ…守って…くれな…かったら…針のんで…もらうからな…」
「ええ、そうしなかったら、千本でも一万本でも飲んであげるわ。
だから、生きなさい…」

生きろ…か久しぶりに聞いたな…と思いつつ目が利かなくなってきていることに気がついた。
ああ、ここまでか…そう思い呼びかけてくれている女性に手をのばす。
一人に手を伸ばしたはずが
幾人にも手も握られ思わず涙が吹き出す。
ああ、生きたい。
まだ、こいつらにお礼を言ってない…
いろいろ謝りたいこともいっぱいあるのに…
そう思えば思うほど覚悟を決めたはずなのに未練が涙が止めどなくあふれてくる。

くっそ…くっそ…こころの中でそうつぶやく。
悲しい…悔しい、負けてしまう弱い自分がうらめしい!そう思う。
赤い巫女装束に身を包んだ少女が呼びかける。
「…みんなあり…がとう…でも…もういい…」
「何言っているの!私が、いえ、私たちが絶対に生かして見せる!」
「…そうだと…いいんだ…けどさ…ゴフッ!?」
「っ!傷が…」
「もう…俺が…助からな…いこと…くらい…自分で…わかって…いるよ…
最後にさ…」
「最後じゃないわよ!だって…だって…」

その言葉きいて顔を両手で押さえ泣いてしまう。
あーあ俺はサイテーだ。女性泣かせるとか…などとこころで思った少年は言葉を紡ぐ。

「最後にさ…お願い…聞いてくれるか…?」
「…うん…」
「名前で…呼んでくれ…俺からの…最後の…」
「最後じゃないっていっているでしょ!?…あんたみたいなやつ…大嫌いなんだから!
いつも無責任で!ふざけてて!変な所真剣で!
意味がわからないし!本当に!本当に…本当に…大嫌い…大嫌いなんだからね…」
「わかった…気をつけるよ…また会ったら…そのときは…」

そこからあとは言うことが出来なかった。
この日この時、少年は死んだ。
場が静寂し…誰かがつぶやいた。

「なんなのよ…」
「えっぐ…なんであいつが…」
「ふざけるんじゃないわよ!!!何、勝手に死んでいるのよ!!」

巫女少女が声の限り叫んだ。
それを初めにするように皆が泣き始めた。

「何悲しませないみたいな事言っておいてなに悲しませてるのよ!」
「答えなさいよ!!」

少年は答えない。
否、答えられない。だってもう死んでいるのだから…

「答えなさいよ…ねぇ答えてよ…また会ったら何なのよ…ねぇ…
月夜…」

この日この夜
無角月夜(むかくつきよ)は死んだ。

そして…この五年後から物語が紡がれる。

「俺は絶対帰るよ。約束したし…それに俺は
羅刹鬼だ」





どうもunworld です。
こんにちは。もしくは始めましてですね。
僕の作品『呪い使いの転生者』と同時並行でこの作品を書くことになりました。
この作品を書くにあたって少しあらすじというか人物紹介をしますね。
主人公は
無角月夜という青年でプロローグ時は12歳
本編では、五年後ですから17歳ですね。
この人はですね、察してくれた方がいるとありがたいのですが。
幻想郷で死亡した人間が外の世界に戻され、がんばって幻想郷に戻るために奔走するお話です。
あ、今の「外の世界に戻され」って重要ですよ。
そして、なぜ『東方羅刹記』なのかについて説明しますね。
それは月夜君関係で羅刹天という神様が登場するからです。

さて、注意事項ですが、これは東方projectの二次創作です。
原作からのブレやキャラ崩壊等々あるかもしれませんが宜しくお願いします。

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