小説『東方羅刹記』
作者:unworld()

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第一話 死ぬことより怖いこと

この世の中には妖怪がいる。といったのは誰だったか。
それはいつの話だったか…
昔懐かしいお話だ。
だが、俺は信じる。妖怪はいる。
そう思う。否定した奴を殺しにいくかもしれないほど信じている。
無角月夜(むかくつきよ)それが俺の名前だ。
無角家は代々対魔師の家系でそこら辺に精通していた。
だが、俺には対魔師の才能いや、いろいろなモノが欠損していたのだ。
情けない話だが…
そこで俺が極めようと思ったもの、それが武術だ。幸いにも武術、特に体術の才能が段違いだったんだ。
無角家はいろいろ者に精通しているため武術も発展している。
俺はそれをフル活用して強くなろうと努力している。
それと俺にはもう一つおかしいモノがある。
突然ではあるが、羅刹天という神様を知っているだろうか。
それが俺の身体の中に埋まっている。
それはいつか説明しよう。

もう冬に近づくということもあってか外は寒く、思わず身を震わせる。
それでも、朝のランニングは忘れない。

まだ、寒さが身に染みて凍えそうになる気温だがそんなこと気にしてはいられない。

「はっはっはっ…」

規則正しく息を整え道を走っていく。
しかし、20キロの重りをつけて走る15キロマラソンは結構疲れる。
しかし、目的の地はもうすぐそこだ。

俺が階段を駆け上がりついた場所。
そこは神社。
しっかりとした鳥居と大きい本殿。
その神社の名前は洩矢神社。
ここには俺の知り合いがいる。
いや、正確には知り合いだった奴らか…
俺はお賽銭を投げ込んで手を合わせる。願いは願わない。
だって、神様頼みなんて面白くない。
自分で努力してそれを勝ち取る、それが面白いのだ。
まぁ、神様宿してる奴がいうことではないんだけどね。

俺はもう一度来た道を帰り自分の家に戻る。
ちなみに一人暮らしだ。
そして家は三階建ての一戸建てだ。
こういうことを言ってしまってはなんだが、俺の父。無角月下は無角の本家から離れ気味の俺に援助をしてくれた。しかも手厚く。
いや、してくれすぎな気がするが…
まぁ、別に気にしては負けだ。
実は俺の年齢は17歳…
普通なら高校に行って青春をエンジョイしているところなのだろう。
俺はそんなこと興味がない。
てか、いろいろ仕事の関係で忙しい…
これでも凄腕のSPやっていたりします。

まあ援助してくれているのは、本家から勘当され気味の俺を思ってのことなのか。
これだけやるから本家から離れてくれということなのかはわからないが…

別に父さんが嫌いとかそういうのではない。
むしろ父さんは俺のことを認めてくれている数少ない人だ。
感謝している。
稽古も率先してやってくれるし、俺の誇りでもある父だ。
俺の兄も俺の事を認めてくれている人の一人だ。
名前は無角三多(むかくさんた)だ。
サンタ兄さんはもう子ども夢満載の名前なんだが、いかんせん…
はちゃめちゃ強い。
体術しか特化してない俺はすぐ負ける。
いや、体術は勝てるのだがそれでも負けることもしばしばだ。
頭もいいし、しかもイケメンだ。
容姿端麗、頭脳明晰、文武両道、才色兼備…と非の打ち所がない兄で正直その才能が羨ましいと思わなかったといえば嘘になる。

俺がドアを開けて家に入ると携帯がなっていた。

「あれ?スリープにしてなかったけ?」

その電話をとり、出てみると…

「おっす。弟よ元気してるか?」
「サンタ兄さん?」
「おうさ、子供の夢を運ぶサンタさんだが?何か?」
「で、用は?」
「ん?特にないが?」
「だったら電話しなければいいのに…」
「そーいうわけにはいかねぇよ?
お、思いだした。
お前は今から京都に行って本家にあって欲しい。」
「総領事のところにか?」
「そうだ。
始めるそうだ。

…お前のいや、羅刹天の封印作戦。
月夜の封印をだ。」
「そうか…そうか…
ここまで来たのか…」
「…すまない」
「なんで謝るのさ?」
「俺は弱い…少なくともお前より弱いな。
羅刹天なんて神を自分の身体に封印するってだけで俺は身が竦んじまう。
下手したら死ぬ。
お前は怖くないのか!?
自分が死ぬかもしれないんだぞ!?
怖くないのかよ!」

まるで何かを訴えるように声をあげていう。
俺はそれを聞いてすこし口元を緩めてこう言った。

「うん。怖いさ。
でもさ、俺にはもっと怖い事があるんだよ。

自分の事を忘れて欲しくない。

俺のもっとも怖いのはそれなんだよ。
死ぬのは二の次だ。
俺は…無角月夜っていう男はさ、

くだらない事が大好きで、

呪われてて醜くて

存在意義がないやつだったよ。

でも、それを作ってくれたのはみんななんだ。

羅刹天?

それがなんだよ。

破壊?滅亡?

どんとこい。

俺はどんなことでも乗り越えてやる。

俺は約束したんだ。
みんなのところへ帰るって…

だから俺は怖くない。
どんな障害も乗り越えて先に立ってるよ。
じゃあね。」

ピッ

俺は電話をきり急いで準備に取り掛かる。
着替えとお金と電話と…
色々なものをカバンに詰め込む。
そんなとき、何かが俺の頭に当たった。
それは赤と黒の十字架が二つついたネックレスと呼べばいいものだ。
全然年代的にも古そうだしこんなものを着けるやつはいないだろう。
だが…

「また、懐かしいものが…」

俺がそれを拾うとチャリという音をたて十字架どうしがぶつかった。
俺はそれを器用に首につけ、荷物をもち家を出る。
途中、タクシーをひろい、東京駅に向かう。
俺は頬杖をついて窓の外をみながら無意識的につぶやいた。

「もうすぐだ…待ってろよ…幻想郷…」


物語の歯車は刻々と廻り始めた。



どうもunworldです。
プロローグからの第一話。
月夜君の能力もちょこっと書いてあります。
羅刹天が出てきましたので説明をしましょうか…まあ、wikiってくださいと言いたいのですが、説明も大事です。
羅刹天は黒い身体に赤い髪をもった破壊と滅亡を司る神様です。
主に羅刹天の元となる羅刹とは鬼神でもあり、時には『羅刹鬼』『足疾鬼』と呼ばれます。
こんな神様ですが一応十二天の護法善神で西南の担当だそうです。
地獄にも関係があり、毘沙門天にも仕えていました。
こんなわけで幻想郷には意外と関係の深そうな神様です。
では、次のお話
『羅刹天は気まぐれである』
でお会いしましょう。

-2-
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