小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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一章〜Seiya’s story〜




「おはよう、聖弥!」
「おはよう、愛里」
元気な挨拶が教室中に響き渡る。
ここは、静岡県熱海市の中学校である。
朝にこのような挨拶が飛び交うのは、日常の風景である。
「おはよう、お二人さん。恋人みたいだな」
「よせよ、翔大。俺達はそんな関係じゃないよ」
翔大に冷やかされたので、聖弥はムッとして言った。
「冗談、冗談。悪かったって。そんなにムキになるな」
「なんか絶対、悪いと思ってない気がするんだが?」
「私もそう思う。翔大酷いよ」
「悪かったって! 愛里と聖弥は恋人じゃありません!」
愛理と聖弥にきつく言われた翔大は、諦めたようにそう言った。
「そういえば、美奈遅いね。いつもは私達よりも早く学校に来てるのに」
愛里が心配そうに呟いた直後、ドアが勢いよく開いた。
「おっはよー!」
「あっ来た。心配した意味ねー」
「ハハハ、本当だ」
「なに? 心配してくれたの?」
「いや」
「別に」
「うん! ほんっっとーに心配したんだよ!」
美奈は素っ気ない返事をした男子を無視して、愛里に近づき、
「もう、可愛いなぁ。愛里は」
と言って愛里の頭を撫でた。
こうして、仲良し四人組の木村聖弥(きむらせいや)尾崎翔大(おざきしょうだい)中村愛里(なかむらあいり)大沢美奈(おおさわみな)がいつものように集まった。
四人は昨日のテレビの話や恋愛の話などのたわいない雑談をした。
そして、チャイムが鳴ると席に座った。
それとほぼ同時に担任の先生が教室に入り、今日の予定を話し始めた。
「今日は避難訓練があるということで、三時間授業になります。短いからといって気を抜かないように真剣に授業に取り組んでください」
「三時間」という言葉を聞いた生徒達は「イエーイ」「よっしゃあ」などの声を発し、とても喜んでいた。
それとは正反対に、聖弥達四人はどこか浮かない顔をしていた。

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