小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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一時間目は国語だった。
授業中は黒板の文字をノートにうつす人や、机に落書きをする人と様々だが、聖弥はというと、深い睡眠に入っていた。
机に落書きをする人はほとんどバレることはないが、寝ている人というのは先生に気付かれて注意を受けやすい。
だが、聖弥は注意されなかった。
聖弥の隣の席の愛里が美奈、翔大に「寝たよ」と知らせるサインをして、サインを受けたら先生に質問の雨を降らせる。
先生に質問の説明をさせることで、聖弥の睡眠を妨害させないという作戦だ。
聖弥の睡眠を妨げたくない理由は、聖弥の家庭状況にあった。
聖弥は四人家族で、父、母、兄、聖弥という構成で成り立っている。
家族構成は普通だが、状況は異常だった。
母は二年前の聖弥が中学一年生の時に脳出血をおこし、右半身麻痺となった。
父はそのショックのせいか会社が終わって家に帰っても全く家事をやらず、子供達に任せるようになった。
兄は昔から気晴らしのためか、聖弥をいじめ、家事を一つも手伝わず、聖弥に押し付けるようになった。
その兄に対して諦めのようなものがあるのか、両親でさえそれを見て見ぬふりをしている。
兄に対するストレス、母の介助に対するストレス、父の態度に対するストレス、その三つのストレスが彼をとても苦しめ、疲れさせた。身体的にも、精神的にも。
しかし、その疲れを回復させるはずの睡眠はとれなかった。
なぜなら母は夜型で、ご飯を食べたり、煙草を吸ったりなどの行動を夜中にするため、聖弥は母が転ばないように介助しなければならないからだ。
そんな家庭状況を一番よく理解しているのが、愛里達三人だった。
だから、寝る間もない聖弥を気持ちよく寝かせてあげようとしていたのだ。
そんな友達の優しさのおかげで、聖弥はずっと寝ていることが出来るのだ。

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