小説『ある死神の憂鬱な日々』
作者:睡眠()

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前書き

 初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。

 以前はあの某二次創作投稿サイトで『BLEACH転生小説(シンプルなタイトル)』という小説を投稿していましがた、そのサイトの閉鎖に伴い、自分自身も事情により執筆活動を停止していました。ですが、その事情が落ち着いたので、再び執筆の再開をすることに致しました。

 投稿するものはやはり『BLEACH』の作品ですが(苦笑)。

 その旧作と本作は別の作品ですが、旧作の設定を引き継いでいる点もあるかと思います。

 では、プロローグです。


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〜プロローグ 慌ただしい朝は憂鬱の元〜


 陽の光が照らされるような感覚に、僕は目を覚ました。

 そのまま布団を剥がし、ゆっくりと起き上がると、窓の方までフラフラと歩き、それを全開にする。気持ちの良い春風が日光と共に外から入ってきて、少し暑くなっていたこの部屋の温度を涼しくするのと同時に、明るく照らしてくれた。

 思いっきり背伸びをすると、僕はこの心地よい朝に満足気に頷いた。

 布団を畳み、それを押入れの中に詰め込むと、枕元に置いてあった制服へと着替えた。

 内側には六回生の証である『六』という文字が縫われ、袴は男子生徒用の青。

「僕も今年で卒業か……感慨深いものがあるね」

 新しく支給された自分の制服を見た僕は、思わずそう呟いてしまった。

 真央霊術院。護廷十三隊の入隊希望者が最初に通うことになっている、簡単に言えば死神育成学校。そこの成績で自分がどの部隊、どの部門に向いているのかが決定され、卒業時に隊へと振り分けられる。

 中には飛び級する人も居るけど、通常のカリキュラムは六年。無論、凡人である僕は飛び級なんて出来るはずもなく、通常の六年のカリキュラムの道を歩んでいる。

 トレードマークである赤いニット帽を被ると、筆記用具やノートの入った鞄を担ぎ、部屋を出た。

 外には同じく霊術院へと登校する人が居るのか、それなりに多くの通行人が同じ制服を着て歩いている。

「最上級生っていうのも、案外悪くない気分だね」

 威張るつもりは無いけど。

 過去になぜ先輩たちはここまで僕たち後輩をシゴくのか自問していたけど、ようやくその理由が分かった気がした。

「さて、行きますか――――」

 いざ学校へ向かって歩こうとした瞬間、突然、僕の身体は宙に浮いた。

 おそらく原因は、自分の頭の側面に直撃している、一本の足だろう。いったいどうやれば顔ではなく頭の側面を蹴れるのかが不思議だけど。

 全てが超低速に感じられ、その蹴りの痛みがゆっくりと伝わってくるのが分かる。

 そのまま僕の頭は吹き飛ばされ、その頭に繋がっている僕の身体も必然的に吹き飛ばされることになった。

「ふごッ!? ぐもッ!?」

 ボールのように数回跳ねると、急ブレーキした自転車のように地面を引き摺りながら、僕の身体は停止した。

 さっきまでの心地よい朝は一転して、激痛と共に地面を転がる惨めな朝へと豹変してしまった。

 いったいどうしてただの通行人である僕が蹴られるのだろうか、そもそも何故僕ばかりこんな目に遭うのか、やっぱり僕は運の悪い史上最低の下等人種なんだろうか。そんな自虐的なことを考えている最中、倒れている僕の直ぐ真横に、ある人物が歩み寄って来た。

 着ているのは同じく霊術院の制服。女子生徒用を意味する赤い袴を着ており、特徴的な紫色の髪の毛は頭の後ろで赤いリボンで括られている。

 おそらく先ほどの襲撃の犯人は、彼女だろう。

 予想通りの人物の登場に、最早呆れを通り越して笑うしか無かった。

「おっはよー荒葉(こうば)。そんな所で何してんの?」

「さて、なんでだろうね。君の草履に付いている頭髪にでも答えを訊いてみようか? それにしても、とっても良い朝だね、茜雫(せんな)。思わず笑いたくなっちゃうよ」

 同じく真央霊術院の六回生である茜雫が、半笑い気味に見下ろしていた。

 六回生とは言っても、飛び級している彼女は実質三年ほどしか通っていない。所謂『天才』。しかし、その素行から教師とのトラブルが後を絶たず、成績がそこまで良くない、なんとももったいない人物でもある。

 そして、なぜか四回生の時から僕にしつこく構って来る僕の唯一にして初の悪友だ。

 「よっこいしょ……」と立ち上がった僕は、ニッコリと笑顔を浮かべている茜雫の頭に、拳骨を振り下ろした。

「あぎゃ!? 何するのよ!」

「仕返し」

「普通は女の子の頭を殴る!?」

「女の子を気取るのならまず体型を女の子っぽくしろよ! 手荒い素行に加えていつまで経ってもペッタンコでチビの茜雫を女子と認めるほど僕は心が広く無い。ふざけるのはその髪の毛の色だけにしてくれ。いい加減にしないと僕の胃が爆発する! そしたら僕泣くぞ! 無様に泣き喚いて君に大迷惑を掛けるぜ?」

「その程度で泣くほどアンタは人間性が無いでしょ。それに、この髪は地毛だって何度言えば良いのよ! 身長だってアンタもあたしとほとんど変わらないでしょ! バーカ!」

「茜雫にだけは言われたくないセリフだね! そっくりそのまま返すよ、この大馬鹿!」

 余談ではあるけど、僕の身長は164センチで、彼女の身長が160センチだったりする。

「「言いやがったなテメェ!!」」

 その言葉を引き金に、僕たちは毎朝恒例の殴り合いの喧嘩を始めた。

 地味に学校へと向かいながら殴り合いをしていることを自画自賛したい。

 周りの通行人は「またお前たちか……」と呆れたように頭を抱えながら僕たちを無視している。毎日こんなやり取りを続けているのに直接文句一つも言わないご近所様は、ある意味一番の苦労人かもしれない。

 しばらく喧嘩を続けながら歩いていると、ようやく校門が見えてきた。

「お前たち! いつまで喧嘩しているつもりだ! もうすぐ授業が始まるぞ!」

 ボコスカ殴り合う僕たちを発見した見張りの教師は、大きな怒号を叩きつけた。

 そこで殴り合いの手を止めた僕たちは、その言葉の意味を理解するのに数秒掛かった。

 そしてようやく、授業開始まで後一分という絶体絶命な状況に陥ってしまったことを理解した。二人同時に「やばい!」と吐き捨て、全速力で教室に向かって駆け出す。

「茜雫がくだらない理由で怒るからだろ!」

「それを言うなら荒葉が喧嘩を始めたのが悪いんでしょ!」

 尚、全速力で走りながらも、僕たちは喧嘩をやめることはしなかった。



 こうして、僕こと仲野宮(なかのみや)荒葉の慌ただしい新学年初日が始まった。




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後書き

 いかがでしたか?

 久しぶりの執筆ということもあって、とても楽しくプロローグを書くことができました。

 なお、本作では劇場版で登場した茜雫が登場していますが、本作の茜雫は劇場版に登場する茜雫とはまだ違う人物です。少し分り難いかもしれません。今の茜雫は劇場版の茜雫ではない、ということです。見た目と性格が同じの別人、と考えてください。

 主人公の苗字も違いますが、それは今作と旧作が違う作品だという点を強調したいがための処置です。

 ちなみに旧作にて登場したオリジナルキャラクターは全員、今作には十中八九登場しません。理由としては、大量オリジナルキャラクターが個人的にあまり好ましくないからです。オリキャラたちが好きだった方々には、申し訳ございません。

 では、次回に、よろしかったお会いしましょう。

〜睡眠〜

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