小説『俺と彼女と精霊演舞』
作者:友笠()

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『お前なんかいらない』

『使えない奴はゴミなんだよ』

『この世界にお前の居場所なんてない』

 そう言われて、私は捨てられた。

 私は何も悪くないのに。

 頑張っているのに。

 努力しているのに。

 相手の都合だけでいとも簡単に捨てられる。

 異常(・・)な私がなにをしても無駄なのだ。

「…………雨……」

 ぽつぽつ、とそれは降りはじめる。徐々に勢いが強くなって、周りの音をかき消すぐらいに。でも、それは
私をあざ笑うように思えて。

 私だけが世界からはじき出されたような気がして。 

『邪魔者だ』と言われた気がして、仕方がなかった。

「……ぅ……ぅぅう……」

 泣いた。もう限界だった。

 無情な雨に体を打たれ続ける。

 この世界(・・)でも私に声を掛けるものなんていなかった。その事実と共に。

 体が冷えていく。時間がいくら過ぎても、雨は一向にやむ気配はなかった。

 寒い……寒い…………。

 ねぇ、神様。……もう……良いよね…………?

 そうだよ、ここで倒れたら楽になるのだから。この先、どうせ変わらない世界しか待っていないのだから。

 ならば、もう、私は。

「――――――」

 ――――――――――――――――――――。


                  ○


 雨が降りしきっている。それは町全体を包むベールのように。どんよりとした少し重い空気が漂っていた。

 ザーザーとやかましく音が響く。周りの音は全てかき消すようにして。……これだから、雨は嫌なん
だ……。

 自分が『邪魔者』だと見事に痛感させられる……。

 こんな日は速く帰るのに尽きる。……と、思ったのだけれど。

「……ん?」

 目に人影がうつった。……そういえば、もう一つあったな、雨が嫌いな理由。こういうときに限って視界はきれいに映るのだ。

 あまりに平和なこの国には珍しい、倒れた状態の少女。金色の髪が特徴的だ。ハーフなのか……? いや、それよりも気になることがある。

 ――なんで誰も助けようとしないんだ?

 ここは町の中でも有数の大通り。なのに、誰もその少女に話しかけるどころか見向きもしない。

「……どうなってんだよ、これ……」

 俺は急いで少女に駆け寄り、上着を被せる。

 ……冷たい。かなりの間、雨に濡れていた事が安易にうかがえる。

「すいません! 誰か手を貸していただけませんか!?」

 だが、しかし。返事が返ってくるわけもなかった。

 弱っていく少女の呼吸音。無表情でぁ通り過ぎていく奴らに苛立ちを感じる。でも、今はそれどころじゃない。

「くそっ!」

 俺は少女を抱きかかえると、自分の家に向かって走り出す。

『――――――――――――』

 その間も雨は降り続けたままだった。


                  ○


 部屋の端に設置されたベッド。本来なら俺が寝ているはずなんだが、現在は金色髪の少女が占領していた。さっきまで絶えかけていた呼吸も今となっては正常に戻っている。

「……すぅ……すぅ……」

 気持ちよさそうに寝息を立てている少女を見ると、少し安堵する。それに心が安らいだ気がした。ほっと、一息つく。

「なんとか……なったみたいだな……」
 ドッと疲れが湧いて出てくる。……思えばずっと寝ていなかったな、俺。緊張も途切れたから尚更、疲れた。ちらりと少女に目をやる。

 変わらず、気持ちよさそうに。その顔には笑みを浮かべている。

 ……この様子なら、もう心配はなさそうだな。

「……電気は消したっと……」

 それだけ確認して、もう一度、彼女を見る。そして、一言。

「……おやすみ」

 俺もその場で眠りに着いた……。

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