スパイ終了後、翌日。
学校が終わりいつものように作戦会議の為にアジトに向かう。今日は少し遅くなってしまった。
いつものように。
数日前の自分はどうだっただろう。果たして”いつものように”アジトに向かっていたのだろうか。
分かっていてもそんなことを考えてしまう。
俺の目的も変わっている。いつしか俺には他に目的があった。
そのために彼女の家に足を運び、遊んだり、ただ一緒にいたり。
ただ、なんとなく。なんとなくだが、そんな目的どうでも良くなっている。
俺がいなくても、そんな目的なんて完遂する日がやってくる。
だって、彼女はもうすでにニートなんかではないから。
商店街に入るより前に俺はある視線に気づいた。
誰かに見られている。なんなんだ。
俺をただ見ている、というよりは一匹の動物を狙うハンターのような視線。しかも複数。
彼らは、姿を現し疑惑の眼差しでアイコンタクトを取り合う。
そして彼らの着ている服、全身が黒くて頭に猫耳。一見可愛らしい外見ではあるが中身はライオン。
彼らは龍人隊だ。この目でアジトにも潜り込んだのだから間違える訳が無い。
「こいつだ」 「間違いない」 「あぁ、いたかもね」
待て……なんでだ。なんで俺を知っている。こんな街中で何故俺をスパイをしていた奴だと特定できる。
というか何故、スパイがばれた!?
まずいまずいまずい。
逃げなきゃ……まずい。
「こいつだぁ!!捕まえろッ!! 」
雄たけびを上げるライオンの如く叫び、さらに視線が俺に集中する。
商店街に向かって伸びていた足を戻し逆方向を向く。
こっちにもいる……。
仕方が無いので右側に建物のある場所を向く。
あった!隙間だ!
建物の間を上手く縫って逃げていく。
急いでいるので何回も躓いたり壁に激突したりを繰り返しする。
くそ、どうすればいい!!
ジジジ……ジジ……
ん、なんだ?
ポケットの中に入っていた無線機から声が聞こえる。
「悠っ! 聞こえる!?」
こ、心音!?
「あ、あぁ! 聞こえる! どうして無線……」
「その無線には発信機もついてる! だ、だから悠が急に走りだして、意味不明な場所に進んでいって……とにかく公園の空き地に来て!あのでっかいとこ!」
「あぁ!わかった!」
とりあえず心音に言われたとおりに空き地にいこう。
薄暗い路地に入り突き進む。
途中でホームレスのおっさんにぶつかったりビール瓶を吹き飛ばしていったが今はそれどころじゃない。
路地を出たところで空を仰ぐ。真っ赤な色に染まった空。
そして目の前に空き地を発見。特に何もないが……。