「あぁ、なんかすごい仕事やる気が出てきた。」 母親は大きく伸びをした。 「現金ね。それじゃ、今まで全然やる気なかったみたいじゃない。」 「当然よ。悶々とした気持ちで仕事なんか出来る訳ないじゃない。」 「患者さんが聞いたら怒るわよ。」 「そうね、今のは無しにして。」 母親は笑った。山下も笑った。もうすぐ夜があける。ナースコールはきっと鳴らないだろう。穏やかなまま、仕事を終えるに違いない。 太陽が廊下を照らす。さっきまでの薄暗い廊下が嘘のように思えた。