小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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まだ、子供の頃の話だ。クリスマスの頃だった。クリスマスの準備をしている母親の姿を見て、僕は興奮していた。はしゃぎまわり、何度も怒られた。でも、うれしくて、何かせずにはいられなかった。
そこで僕がとった行動。それはかくれんぼだ。テーブルの下に隠れ、母親を脅かそうとしたのだ。
「ようし、びっしりさせてやれ。」
急いで潜りこんだ。テーブルの上には、ご馳走やらケーキやらがあり、とてもいい匂いがしている。
母親がまた何かを運んで来た。
ドキドキ。心臓が高鳴った。匂いに促され、腹の虫も鳴った。
「こら、何してんの?!」
脅かすより前に見つかってしまった。驚いたのは、僕の方だ。
「ご、ごめんなさい。」
テーブルの下にいるのを、完全に忘れていた。思い切り立ち上がった。持ち上がるテーブル。ご馳走やケーキは床の上へと落ちて行った。
最悪のクリスマスだった。

訳もなく思い出した。
“あん時は無茶苦茶怒られたよな・・・。”
同時に思い出した。
“このテーブル、割と簡単にひっくり返るんだっけ?”
体が無意識に動いた。手前にある足を掴み、そのまま前に押し倒した。僕の体と共に、テーブルは勢い良く倒れた。
縁が腹を強く打った。しかし、それ以上のダメージを奴は負った。壁に後頭部をぶつけた。背中も強打したようだ。僕を押さえつけていた手はなくなった。
後ろに身を反らす。それから、再び足を持ち、テーブルを裏返した。奴は映らない。奴を凌いだのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
思わぬ形勢逆転だ。僕自身が一番驚いた。
そんな僕に次の敵がやって来た。

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