小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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「失礼します。」
ソファに腰を下ろした時、何か不思議な匂いを感じた。
「あれ?どうかしたかい?」
「いえ、なんでも・・・。」
「そうか、じゃ、話を始めよう。」
そこに女の子がお茶を持って現れた。
「塗料の臭いがキツイのよ、お父さん。」
さっきインターフォンに出た子だろうか。ちょっとかわいい。
「こら、ここでは社長って言えって言ってるだろ!」
「はい、はい。社長、すみませんでした。それより、窓開けたら?誰だって気分悪くなるよ、これじゃ。」
そう言って、彼女は窓を開けた。
「そうか?なんとも思わないけどな。」
太田は納得がいかなかったようだ。
やさしい風が、臭いを洗ってくれた。
「すまんね。なんの話だったかな?」
「いや、まだ何も・・・。」
「そうだったか。まぁ、この臭いでピンと来たかもしれないが、ここでは模型を作っているんだ。」
何処かで嗅いだ事がある訳だ。納得した。昨日も使ったばかりだ。だから、記憶に鮮明に残っていたのだ。ただ、すぐにわからなかったのは、埃のせいだ。埃が混じって、少し臭いが変わっていた。そのせいで気がつくのが遅くなった。
「模型ですか?」
「ん?その顔は何も聞いてないのか?」
「えぇ、母はここに行けとだけ。なので、ここが何をやっているのかは聞いてません。」
残念そうな顔をした。
「そうかぁ。てっきり内容を聞いた上でここに来てくれたと思ってたんだけどな。」
「あの、話が見えないんですが?」
そこにさっきの彼女が入ってきた。

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