小説『鏡の中の僕に、花束を・・・』
作者:mz(mz箱)

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違和感。そうとしか言い表せない。子供が砂場で足を擦りむいたら、入院するだろうか。するはずがない。感覚的には、擦りむいたくらいの怪我なのだ。なのに、脳を検査するなどと言われて、入院させられた。これを違和感と呼ばずしてなんと呼ぼうか。
「じゃ、次は第二検査室にお願いします。」
看護士の言う通りにしなければいけないと思いながらも、もういい加減ウンザリだ。もう何度検査室に入ったか、数える気も失せたくらいだからだ。
「あの・・・。」
「何でしょう?」
「まだ、検査続くんですかね?」
「あ、これで終わりです。気持ちはわかりますが、もう少し耐えて下さいね。それだけ、大変な事なんですから。」
「は、はぁ。」
大変な事の実感がまるでない。生返事しだ。

「どう、終った?」
入院の手続きをした美園が、病室に戻って来た。
「なんとかね。もう、ウンザリだよ。」
「そんな風に言わないの。生きているなんて奇跡なんだからね。」
「奇跡ねぇ・・・。」
鼻の頭を掻いた。
いきなり美園は抱きついて来た。
「良かったぁ。ホント、良かった。」
再び、美園は泣いた。うれしくて、感極まって涙が溢れてきた。
「お、おい。」
「ちょっとこのままでいさせて。ねっ、お願い。」
静かに美園を抱いた。
「痛っ。」
肩に痛みが走った。

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