小説『IS 戦う少年と守護の楯』
作者:天地無用生もの注意()

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※本編にまったく関係ありません。勢いで書いています。(こぼれ話みたいな物だと思って下さい)



18話 設子さんの料理修行

「一夏、いる?」

「おう。だが少し待て、今部屋を片付けているんだ」

最近箒や鈴、それにセシリアが襲撃する為それなりに綺麗にしている。
入って部屋が汚かったらいい気分ではないだろう。
だが、今日はキッチンを重点的に綺麗にしている。
―――正確には、妙子さんのお願いで出来るだけ必要ない物をしまっている。と言うのが正解だ。

「なによ、アンタまさか今日出かけたのって、エロ本とか買いに行っていたんじゃないでしょうね?」

扉を開けて鈴が勝手に入ってくる。
ダメだぞ。いくら寮だからといって住人に許可を得ないで入ってくるのはマナー違反だ。
それとも何か? 女子達はそんな事気にしないのか?? 
ダメだぞ。考え方が古いと言われようがもう少しお淑やかにしないと、相手がいなくなるんだぞ。

「失礼な。ここの寮長は千冬姉なんだぞ。もしそんなもんがあったら俺の命は無い」

正確に言うならそんなもんにお金を使うんなら生活費に回している。
貧乏では無いが、少しでも千冬姉の負担を減らす為にやりくりしている。

「ふーん…。ま、とりあえずは信用しといてあげる」

何でこの人上から目線なんだろう? ちっこいのに。

「アンタ、今すごっく失礼な事考えたんでしょう。
まあいいわ。でも、この部屋のどこを片付けたいたのよ?」

「キッチンだ。今日設子さんに料理を教える約束をしたんだが、まさかその日のうちにやるとは思わなかった」

何でも、どうしても食べさせたい人がいるらしい。あー、羨ましいね。あんなに綺麗な人がそこまでしたいって言うんだから……。

「ハア? それでこんな時間に部屋に来るの? ちょっと非常識すぎない」

「非常識って言ってもまだ七時じゃないか。それを言うんだったらお前だって……」

睨まれました。ごめんなさい。

コンコン。と控えめな音が扉から聞こえてきた。
おお、なんてタイミングのいい。

「一夏さま。お邪魔してもよろしいでしょうか」

「どうぞどうぞ。って、設子さん。かなりやる気ですね。それにそのエプロン……」

普段の設子さんはサイドの髪を後ろに持っていってリボンでとめているだけだが、料理をする為に背中の中ほどまである髪をポニーテールにしている。
それに妙子さんの養父さんから貰ってあるはずのエプロンではない。

「ハイ。小父様から教わったのですが、殿方は限定品という言葉に弱いとお聞きしましたので、あのエプロンはその時だけ使うようにしています」

限定品っていうのは、むしろ女子達の方が弱いと思うが、どちらにせよ設子さんの特別な人は幸せだろうな。

「で、アンタの相方は?」

「妙子さまですか? 小父様から貰った資料を確認していますよ」

うーん。いつも二人でいるから、ついついセットで考えてしまったが、二人が別行動をするときも……見たことが無いな。

「それで、一夏さま? 今日はどのようなお料理を教えてくださるのでしょうか?」

「へ? あ、すまん。ちょっと違う事考えていた。
今日の料理は『肉じゃが』だ」

『テケテッケテケテ、テケテッケテケテ。テ』
「ちょっと待て!! 設子さん、その音楽はなんなんですか!?」

「え? 小父様が料理名を聞いたら、この音楽を鳴らすのが慣わしだと…。もしかして、間違っていましたか?」

「アー、アンタさあ。人を疑ったりしないの? 飴あげるからついていくタイプ?」

「鈴さま。いくらなんでも酷いです。過去の犯罪の傾向と対策は全て覚えました」

頬を膨らませて、プンプンという表現が似合うほどその仕草が似合っている。本当にこの人の彼氏は幸せもんだな。

「……傾向と対策って、って言うか全ての?」

「はい!! 頑張りましたから」

「おーい。そろそろ始めていいか? それと鈴。ちょっと来てくれないか」

近寄ってきた鈴に「もしかしたら、すっごく大変な事になるかもしれん。手伝ってくれ」そう耳元で囁いたら顔を赤くしてコクコクと頷く。
なんていうんだろう。赤べこみたいだ。

「それじゃあ、ジャガイモの芽を取って皮を剥いて四等分に切って、水にさらしてくれるか? とりあえず包丁捌きが見たい」

「ハイ」と元気のいい返事があった後、あっという間に下処理を終わらせる。
なんだ、これなら料理くらいすぐに覚えられそうだな。

その後、にんじんとタマネギ、サヤインゲンも一口サイズに切り包丁を使う工程は終了した。

「なんだ。これなら教えることは少なそうだな」

「本当ですか! 今まであの人に料理だけはしないでくれと言われたので、勉強したかいがありました」

すごく嬉しそうな設子さん。『あの人』って言う男にちょっと嫉妬を持つが、恋する乙女はすごいねえ。

「ねえ、アンタさ、一口サイズって言われたときに何かブツブツ言っていなかった?」

なんだよ、鈴。せっかくいい生徒が出来たのに、文句を言うな。

「はい。一口サイズとは親指のツメ、又は第一関節までの大きさなので切るのに苦労しました」

これが、この後の苦労を指し示す発言だった。




「一夏さま。大さじはどこにあるのですか?」

「ん? 無いぞ、でも大体の量は分かるだろ?」

「ダメです! せっかく口に入れるものなのに、手抜きなんて出来ません。
えーと、大さじは15g。水1に対して醤油が1.2。大さじ4ですから醤油72gですね。計りはありますか?」


そこから始まり、



「一夏さん。煮込むときに使う温度計はありますか?」

「へ? そんなの無いけど……」

「そんな……。ならば妙子さんが持っているはず。
いいですか、一夏さま。お肉のたんぱく質は50℃〜60℃までが軟らかい状態です。すぐに戻りますから、絶対に65℃以上にしないで下さい」




「後は落とし蓋をして味が全体に馴染むようにすればOKだ。たまに煮汁を全体にかければ完成なんだ」

「一夏さま。それは無理ではないですか? 落とし蓋をしたのに煮汁をかけるなんて……。
そうですわ!! スポイトがあれば出来ます。えーと、キッチンにスポイトが無いのですが……」

「料理でスポイトなんて使わないわよ!! 鍋を傾けて煮汁をお玉ですくって落とし蓋の切れ込みからかければいいじゃない!!」

「なるほど、さすがは鈴さまです。目から鱗が落ちました」




「私なんかすっごく疲れた。心配して最後まで居たけどもう帰っていい?」

奇遇だな。まさか俺もこんな事になるとは思わなかった。
途中から料理じゃなくてどっかの実験室にいるもんだと思っていたところだ。

たぶん初めて上手くいったんだろう。設子さんはすごくうれしそうに皿にもられた肉じゃがをもって帰っていった。

―――勉強もスポーツも出来る設子さんの意外な弱点を知った一日だった。





後書きみたいなもの

『恋楯』では千切りを文字通り千に切り分ける事をやった設子さん。
修史君の為に料理の勉強をしたのはいいけど、もしかしたらこんな事になるんじゃないかな? と思い書きました。

書いているおいらも、たまにはこういった息抜きしないとね。

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