小説『お姉ちゃんの恋』
作者:Rui()

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恵は菜月に探りを入れてみたが、「あんたは自分の心配だけしていればいいのよ」の一点張りで、なにも教えてはくれなかった。

それから3日後、姉菜月が夜になってもまたなかなか帰って来ないため、
恵は菜月の高校2年生の時の彼氏の家に電話してみた。
菜月は携帯を家の自分の部屋に置きっぱなしにしていたため、携帯のアドレス帳から電話番号を探り当てた。
履歴に、その彼氏の携帯電話番号がいくつも残っていたため、最近その人との接点が多かったことがすぐに分かってしまった。

恵はなにか情報は手に入らないだろうかと、その彼氏の家に電話してみたのだった。

「こんにちは、私、姉の北川菜月の妹の北川恵です。菜月がまだ家に帰っていなくて、そちらにいるのではないかと思って電話してみました」

「力也の兄です。力也だったら家にいますし、菜月さんはいませんよ」

「あのぉ、すごく聞きにくいことなのですが、力也さんは姉と付き合っているんでしょうか?」

「いやぁ、力也はここのところ行先不明になることはなくて、女の影なんて一つも見当たらないよ」

少し小声でそう話す力也の兄の言葉に声色からして嘘はなさそうだなと恵は思った。

「それから、力也には少し前までは彼女がいてね」

恵は、その「彼女」が自分の姉である可能性もあるとみて、話の続きを聞いた。

「デートの後にその彼女の跡をつけたことがあって、その彼女が一人の女性とオカマバーに入っていくとこを見たんだって言ってたんだけど」

(はぁ!?オカマばぁ??)

「その女性が、彼女とそっくりな人らしくて、多分、妹なんじゃないかな?彼女のことを随分立ててたって話だし」

「有力な情報、ありがとうございます…」

(オカマバーでバカ騒ぎして憂さ晴らしして夜帰りが遅くなる、冷静に考えれば、あり得る話ね…)

「あのう、そのオカマバーってどこか分かります?」

「新宿にあるってことだけ」

「そうですか、夜分にすみません、ではこれで失礼します」

「うん、力也がお姉さんに迷惑かけてたらこちらから謝っておきます、御免なさい」

「いえ」

電話を切って、恵は少し黙って一人で考えた。
菜月が遅く帰ってくるのは月に1回程度だし、もし力也が彼氏でもう既に別れていてオカマバーに行っているのだとしたら、あまり心配をしなくてもいいのかなぁと恵は思った。


2時間後に帰ってきて、すぐに床に就いた姉のコートに入っている財布を見てみた恵は、
オカマバーで働くオカマの名刺を発見してしまった。

(…それにしてもどうやって実の妹探し当てたんだろう…)


-3-
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