小説『ハイスクールD×D〜転生せし守り手〜』
作者:ブリッジ()

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Life.20〜不死鳥との激闘、覚悟〜














昴side

ドン!!!

足に氣を集中させ、大きく跳躍し、部長達がいる新校舎の屋上に飛び移った。

「!?」

屋上に飛び移り、俺の目に飛び込んできたものは、ライザーが撃ったと思われる炎を部長が魔方陣で受け止めている絵だった。

「ほら! もういっちょ!」

ライザーがもう一撃炎を部長に飛ばした。

まずい! あれ以上の炎は部長でも無理だ! 後ろにアーシアがいるから避けることもできない!

俺は村雨に手をかけ・・・。

「行け、飛龍!」

ドォン!!!

俺は部長に迫る炎目掛けて氣でかたどった龍を飛ばす。

ボォォォン!!!

氣の龍と炎が激突すると、部長の目前で爆散した。

「あっ・・・」

部長が瞑っていたがおそるおそる目を開け、俺の姿を確認し、ポツリと声を上げた。

「お待たせしました」

俺は部長に笑顔を向けた。

「スバルさん!」

アーシアが歓喜の声を上げた。

良かった、アーシアに怪我はなさそうだ。部長もアーシアが治療のおかげで目立った怪我はない。だいぶ疲弊しているみたいだが・・・。

「あの時の下級悪魔の兵士『ポーン』か」

「よう。久しぶりだな」

互いに殺気を帯びた挨拶を交わす。そこに、俺と同じく屋上にやってきたライザーの女王『クィーン』がライザーの横に降り立った。

「ライザー様、私が兵士『ポーン』の相手をしましょうか? あの者はなかなかあなどれない実力を有しています」

そう言って女王『クィーン』がライザーの一歩前に歩み出たが、それをライザーが手で制す。

「いや、この兵士『ポーン』は俺を愚弄し、このゲームでも俺の可愛い下僕をたくさんやっている。リアス共々俺が相手をする。そのほうがこいつらも納得するだろうからな」

・・・ちっ、今の言葉、あくまでも絶対負けるはずがないという前提でほざいてやがる。他者から見ればライザーの心意気を讃えるかもしれないが、俺達からすればこんなのただの同情、憐み向けられたようなものだ。部長もそれを感じとっているらしく、ライザーの言葉に怒気を溢れさせている。

「アーシア。部長の回復が済んだなら安全なところに下がっていろ。アーシアは俺達の生命線だからな」

「・・・はい。わかりました」

アーシアは一瞬ためらう素振りを見せる。おそらく自分も共に戦いたいと考えたんだろう。けど、自分が戦闘では役に立たないとすぐに気づき、俺の言葉に素直に従って下がってくれた。

よし、これでいい。

俺がアーシアが下がっていくのを確認し、視線をライザー達に移したその時・・・。

「きゃっ!」

俺の後ろからアーシアの悲鳴が聞こえた。俺が慌てて振り返ると、アーシアが足元の魔方陣に捕らわれていた。

「その僧侶『ビショップ』の回復は封じさせてもらった。あまり長引いても興ざめなんでな」

ふと見ると、向こうの女王『クィーン』の指先が光っていた。

なるほど、あいつの仕業か。見たところ、アーシアを傷つけたり、苦しめたりする代物ではなく、ただ単純に動きを封じるだけのものみたいだな。それならいい。

俺は部長のすぐ傍まで歩み寄り、ヒソヒソ声で部長に話しかけた。

「部長。部長はあの女王『クィーン』と戦ってください。ライザーは俺が引き受けます」

「えっ?」

部長が俺の提案に驚きを隠せない様子だった。だが、すぐにさっきまでの険しい表情に戻った。

「ダメよ。ライザーとは私が戦うわ。あなたが行きなさい」

「部長」

「ライザーは・・・ライザーだけは私が直接討たなければ気が済まないわ。私達のことをこうまでバカにして・・・! いいわね、ここは私に任せて」

部長がそう言うと、ライザーに向かって飛び出そうと前に出た。俺はすかさず部長の腕を掴み、それを止めた。

「部長!」

「離しなさい!」

部長は俺を睨み付け、腕を振り払おうとする。

「部長、落ち着いてください!」

「私は落ち着いているわ! いいからその手を離しなさい!」

「ダメです! それではこのゲームには勝てません!」

「私の命令が聞こえないの!? いいからその手を・・・」

「いい加減にしろ! リアス・グレモリー!」

「っ!?」

俺は思わず叫んでいた。

「今のあなたは純血悪魔のグレモリーでもなければただのリアスでもない、グレモリー眷属の王『キング』なんだぞ! そんなあなたが私情で冷静さを失ってどうするんだ!」

「!? 私は・・・」

俺の言葉に部長は顔を強張らせる。

「良いか、王というのは如何なる事情、如何なる状況であっても氷の如く頭を冷やし、冷静に最善の選択を選ばなければならない。カッとなって突っ込むのは愚の骨頂だ」

「・・・」

「俺達眷属は、あなたの命令通りに動く。それが如何なる困難を伴う命令であっても、たとえ、死ぬことになったとしてもだ。あなたの選択、言葉は眷属の命運を分けるもの。決して感情だけで動いていいものじゃない」

「あ・・・」

部長が俺の言葉に目を見開いた。抵抗していた腕は今では大人しい。

「すいません。俺は眷属にあるまじき言葉をあなたに吐きかけました。如何なる罰も受けます」

俺が頭を下げて謝罪すると、部長は首を横に振った。

「いいえ、あなたが謝ることではないわ。私が軽率だったの。あなた達眷属は私のために戦ってくれたというのに。ホント、主失格だわ。ごめんなさい、昴」

逆に部長が俺に謝罪をした。部長が謝る謂れもないことだが、今はそれよりも・・・。

「とりあえず、頭の方は冷えましたね? それでは、作戦ですが、部長はさっき言った通り、あの女王『クィーン』と戦ってください。理由は、まず、ライザーが俺達を1人で相手をすると言った言葉に嘘はないでしょう。けど、俺達がライザーを窮地に追いやってもなおあの女王『クイーン』がその命令に守る可能性はまずないでしょう。もし横槍を入れられればかなりの痛手を被ります」

「ええ、そうね」

「部長に戦ってもらう理由ですが、あの女王『クィーン』は魔力を武器に遠距離で戦う魔術師タイプ。刀を使っての近接戦闘を主とする俺では相性があまりよくありません。勝てないこともありませんが、それではかなりの体力を消耗し、手傷も負うでしょうし、それまでに部長がライザーに討たれてしまう可能性もある。けど、同じ魔力で遠距離で戦う部長なら、滅びの力を有する部長なら俺よりも遥かに容易く討つことができます。部長が女王『クィーン』を早々に討てば晴れて後顧の憂いもなくライザーと二対一で戦えますし回復役のアーシアも復活できる。この状況を作り出せれば勝率はかなり上がります。ですから、部長は女王『クィーン』を討ってください」

「・・・現状ではそれが一番勝率が高そうね。わかったわ。女王『クィーン』は私が早々に撃破(テイク)するわ。あなたはそれまでライザーをお願い」

「任せてください。そうと決まれば、行きましょう」

「ええ!」

俺達はライザー達に振り返った。部長は手に滅びの魔力を集め・・・。

ドン!!!

女王『クィーン』目掛けて撃ちこんだ。

バチィィィッ!!!

女王『クィーン』はその行動に驚くも前面に防御魔方陣を展開してそれを防いだ。

「女王『クィーン』ユーベルーナ! 私があなたの相手をするわ!」

部長はそう告げて再びその手に滅びの魔力を集めた。相手の女王『クィーン』は一瞬呆気にとられたかのような表情を浮かべるもすぐさまさっきまでの嘲笑を浮かべ・・・。

「せっかくライザー様がチャンスを与えてくださったというのに・・・。いいでしょう。ならば私が直接引導を渡してさしあげましょう」

部長と向こうの女王『クィーン』は黒い翼を広げ、空に羽ばたくと、魔力による砲撃戦を始めた。

これでいい。・・・だが、部長はさっきまでのライザーとの戦いでかなり消耗している。負けはしないだろうが、勝つことも容易くないだろう。援軍は、ないものと考えた方がいい。つまり・・・。

俺はライザーに振り向いた。

こいつは俺1人で片付ける覚悟が必要だってことだ。

ライザーはかなり不機嫌そうな顔を浮かべている。

「何の真似だ? 俺は1人でお前達の相手をすると言ったはずだが。俺が吐いた言葉を違えるような恥知らずだとでも思っているのか?」

「お前の言葉を信用してないわけじゃない。だが、お前の女王『クイーン』はお前が窮地に陥ってもなお、その命令を忠実に守り続けるような愚物なのか?」

俺の言葉にライザーは嘲笑を浮かべ始めた。

「はっ! それはないな」

「そういうことだ」

「違う、勘違いするな。俺がないと言ったのは俺が窮地に陥るというところだ」

「なら、今すぐ追いつめてやるよ。プロモーション、女王『クイーン』」

俺がそう唱えると、身体中に力が溢れてきた。

よし、これで準備は終わった。

俺は村雨を正眼に構えた。

「フハハハッ! なら俺は、その淡い幻想ごと消し炭にしてやるよ!」

ゴオオッ!!!

ライザーが手に炎を発現させ、俺に向けて撃ち放った。

「はぁ!」

ブォフ!!!

俺は飛んできた斬り裂き、ライザーへと突っ込んだ。

「おら!」

ゴオオッ!!!

ライザーは俺に飛び込まれる前にもう一度炎を発現させ、撃ってきた。俺はその炎を肩越しにかわし、すぐさま距離を詰め・・・。

ズシャッ!!!

ライザーの胸を上から斬り付けた。

「まだまだ!」

ズシュッ!!! ズシャッ!!!

さらに追い打ちをかけるように胸を十字に斬り裂く。

「ちっ! 小癪な真似を!」

ブォン!!!

ライザーは拳を振るう。俺は上体を前に倒してそれを避け・・・。

グシュッ!!! ザシュッ!!!

起き上がり際にその腕を斬り落とし、さらにライザーの横をすり抜けると同時に脇腹を斬り裂いた。

「無駄だ!」

「っ!?」

ライザーはまったく異に返さない様子で背後に回り込んだ俺に拳を振るった。

「ちっ!」

俺はその拳を飛んで避けると、村雨を上段に構え・・・。

「ふっ!」

振り下すと同時に氣の斬撃をライザーに飛ばした。

ブォシュッ!!!

ライザーのその飛ばした斬撃をもろに直撃し、脳天から真っ二つになった。だが・・・。

「無駄だと言っているだろう?」

すぐさま復活をしてしまった。

ちっ! 並みの奴なら何回死んでんだよ。これが不死身か。正直、気が遠くなる。ちまちま傷を負わせてもすぐに再生しちまう。もっと威力のある攻撃をもっと速く、間髪を入れずに撃ちこまないと。

チン!!!

俺は一度村雨を鞘に戻し、地面に着地し・・・。

「斬月」

ブン!!!

抜刀と同時に氣の斬撃を飛す。

ドン!!!

飛ばすのと同時にライザーに突っ込む。俺はグングン加速し、先ほど放った斬撃に追いつき・・・。

ザシュッ!!! ブシュッ!!!

ダブルの斬撃でライザーを4つにする。

「おぉぉぉぉっ!!!」

ザシュッ!!! ザシュッ!!! グシュッ!!!・・・!!!

俺は4つに分かれたライザーをさらに細切れにしていった。

これなら・・・っ!?

突如、俺の眼前に炎の揺らめきが現れたかと思うと、そこから手、そして腕が形成された。

ゴオオッ!!!

「くっ!」

その形成された手に炎が発生し、俺に発射された。それをすんでのところで上体を後方に倒してかわした。

「ちぃ!」

ブシャッ!!!

さらに上体を倒し様に村雨を斬り上げ、再生しようとしているライザーの胴体を斬り裂いた。

「この!」

グワァシャ!!!

俺はライザーの胸に拳を突き刺し、心臓を握りつぶす。

「これで・・・っ!? くそ!」

ボワッ!!!

ライザーの身体に炎に包まれる。俺は慌てて後方に飛び去り、距離を取った。

「・・・」

後方に着地すると、ライザーの身体がどんどん再生し、元の姿に戻ってしまった。

「無駄だ無駄だ。お前じゃ俺には勝てんよ。いい加減に諦めろ」

嫌味な顔を浮かべながらライザーが再生を完了していく。

「黙れ。不死身以外に何も取り柄がないくせに偉ぶるな」

くそ! また復活しやがった。ったく、嫌になるぜ・・・。

「全くしつこいな・・・。いいぜ。なら教えてやる。不死身の本当の恐ろしさをな。・・・来いよ」

ライザーが指をクイックイッとさせ、俺を挑発する。

言われなくても行ってやるよ。

俺は村雨を脇構えにし・・・。

ドン!!!

一気にライザーとの距離を詰めていった。

「・・・」

ライザーは動きを見せない。攻撃にも、回避にも転ずる素振りを見せない。

何の真似だ?

グゥワシャッ!!!

俺の村雨がライザーの脇腹に食い込む。村雨はそのまま胴を突き抜け、真っ二つになる・・・と、思いきや・・・。

ズシュッ!!!

村雨が胴の真ん中を通過したところでライザーが自分の腕で村雨の進行を阻んだ。

「ようやく、止まったな」

ライザーがニヤリと笑う。

まずい!!!

俺は村雨を離し、距離を取ろうと試みたが・・・。

パシッ!!!

「っ!?」

ライザーがもう一方の手で村雨を持っていた俺の腕を掴みあげた。

「普通なら相討ちは引き分けだ。だがな、不死身を相手に相討ちをするということは即ち・・・負けだ!」

ゴオオオッ!!!

「ぐわあぁぁぁーーーーっ!!!」

掴んだ腕から炎が発生し、たちまち高温の灼熱として俺の身体を包み込んだ。

「そのまま灰になれ! 小僧!」

ライザーはさらに炎を威力を強める。

「ぐっ・・・こ・・・の・・・!」

ザン!!!

俺は焼き尽くされる前に右脚に氣を集中させ、俺の腕を掴みあげてるライザーの腕を切断した。

ダン!!!

そしてすぐさまライザーと距離を取った。

シュゥゥゥッ・・・。

ライザーの手が離されると、俺を包んでいた炎は消えたが、俺は身体の至るところに大火傷を負った。

「くそ・・・」

俺はそのダメージによりその場に膝を付いた。

「これで理解しただろ。もうお前に勝ち目はない。最初はお前のスピードに少々驚かされたが、それももう身体で覚えた。何だったら何度でもその腕を掴んでやるぞ?」

クククと嘲笑を浮かべ、腹に刺さっている村雨を引き抜き、地上へと投げ捨てた。

・・・最悪の手だな。不死身ならではの戦法だ。これをやられたら俺はお手上げだ。

「諦めろ。お前達はよく戦った。ここで投了(リザイン)してもなんら恥ではない。もともと条件が違うんだ。正直、もしお前達が眷属をフルに揃え、経験を積んでこのゲームに臨んでいたら結果はまた違ったものになっていただろう。だがこのゲームの勝敗はもう決まった。もう詰み(チェックメイト)だ。早くリアスに宣言させろ」

ライザーが俺に敗北宣言を薦める。

・・・これは無理だな。接近戦を挑めばまた掴まれて今度こそ終わりだ。だからといって遠距離戦でライザー相手に勝機を見いだせるとも思えない。攻めきれずに途中でガス欠起こして終わりだ。

「勝てない・・・か・・・」

勝てっこないな。・・・・・・俺の命を削らなければな・・・。

奥の手はある。だが、できればこれは極力使いたくなかった。文字通り、命を削りかねないし、下手すれば命と引き換えになる。まあ、死ぬことは覚悟してこの戦いに臨んではいたが、俺が死ねばアーシアや部長は悲しむことになる。だから使いたくなかった。・・・しょうがないな。

俺は焼け焦げた制服のブレザーを脱ぎ捨てる。

「フゥー・・・」

俺は大きく息を吐いた。

「氣功闘法・・・最終奥義・・・」

俺の周りに風が集まり始めた。

「七星閃氣・・・、廉貞、解放」

コオオオオ・・・。

俺の身体から黄金色の光が天に昇り、そして俺を包み込んだ。














続く

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