小説『ハイスクールD×D〜転生せし守り手〜』
作者:ブリッジ()

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Life.53〜ゲーム決定、風呂場での珍事〜














「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

先程の争いにより、半壊した大広間だが、駆け付けたスタッフの魔力によってほとんど元通りに修繕していた。そこに改めて若手悪魔達が集まり、挨拶が始まった。

最初に挨拶したのは、例のサイラオーグさんに殴り飛ばされた奴とやりあっていたメガネを掛けた女性若手悪魔だ。

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

部長と会長がそれに続き、挨拶をする。

主が席に着き、眷属がその後方で待機する。それは、どこの席でも同様だ。

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ」

中でも威風堂々と挨拶をするのが、若手ナンバー1と目されるサイラオーグさんだ。

「僕はディオドラ・アスタルト。アスタルト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

先ほど知らぬ存ぜぬで過ごしていたアスタルト家の次期当主は見た目通りの優しげな声で挨拶をしていた。

ちなみに、先程殴り飛ばされたグラシャラボラス家の次期当主はまだ戻ってきておらず、その眷属達だけがテーブルを囲っている。

正直、他はともかく、そのグラシャラボラス家はあんなのが次期当主で大丈夫なのか? とも思ったんだが、サイラオーグさんが、グラシャラボラス家は先日御家騒動があり、本来の次期当主となるべき者が不慮の事故死を遂げたため、繰り上がりであのヤンキーが次期当主となったらしい。

こうして、若手悪魔6名が揃い踏みしたわけだが、内4家が魔王を輩出し、残りは大王と大公だ。よくよく考えるとすごい面子だよな、これ。

俺が周りを見渡していると・・・。

「おい、御剣、なにマヌケ面してんだよ」

「ん?」

横にいた匙が嘆息しながら俺に言ってきた。

「別に、ただ、すごい面子が集まってきてるからついな」

「ったくよ、お前は赤龍帝なんだから、もっと堂々としてろよ」

そんな問いかけに俺は頭を掻く。

「赤龍帝は関係ないと思うが・・・てか、なんで怒ってんだ?」

「眷属悪魔ってのはこの場では堂々とするもんなんだよ。相手の悪魔達は主を見て下僕も見るんだからな。お前がそんなんじゃ、先輩にも失礼ってなもんだ。ちったぁ自覚しろよ。お前は先輩の自慢の眷属なんだからよ」

「グレモリー眷属は俺だけが自慢の眷属じゃないんだがな・・・。そういうお前だって、五大龍王のヴリトラの神器を有した会長自慢の眷属だろうが」

俺がそう言ってやると、匙の表情が若干曇った。

「俺なんかまだまだだ。・・・俺だって会長の自慢になりたいさ」

一瞬きつく歯を食い縛ったかと思うと、今度は苦笑していた。

「皆さま、大変長らくお待たせいただきました。皆様がお待ちです」

とうとう行事が始まる。










・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


若手悪魔が案内されたのは、何とも言えない空気を醸し出した場所だった。上を見上げると、上段に席が置かれており、そこにお偉いさんと思しき者達が着席していた。

「・・・」

だが、その目付きは正直気持ちのいいものじゃない。値踏み半分、見下し半分と言ったところだ。

その、もう1つ上の段には、見知った顔があった。サーゼクス様にセラフォルー様。後の2人は察するに、ベルゼブブ様とアスモデウス様なのだろう。

俺達眷属は、部長の後方に並んで待機している。

「よく、集まってくれた」

上段の初老の男性悪魔が手を組みながら言った。

「さっそく、やってくれたようだが・・・」

別の者が皮肉たっぷり言い放った。

白々しいな、それを承知で集まらせたくせによ。

そして、サーゼクス様のお言葉が始まった。

サーゼクス様からの言葉によると、ここに集まる若手悪魔には、デビュー前に互いに競い合い、力を高めてもらいたいとのだという。そして、先日より現れた禍の団(カオス・ブリゲード)との戦いには、できるだけここにいる若手悪魔を投入したくはない考えらしい。

その言葉に対してサイラオーグさんが異を唱えた。俺も同意見であったが、今の悪魔の世界にとって次世代の悪魔は宝も同然であり、失わせてくはないという。故に大事に、段階を踏んで成長してほしいと、言葉を続けた。

それに対し、サイラオーグさんは一応ではあるが、返事をしたものの、内心では納得していない様子だった。

その後、上役達のお言葉や、魔王様達のお言葉が続いていった。

「では最後に、それぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」

その、サーゼクス様が問いかけた。その問いかけに最初に答えたのがサイラオーグさんだった。

「俺は魔王になるのが夢です」

その言葉と瞳からには迷いはなく、自信に満ちていた。

上役達も感嘆していた。

「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」

この場で言い切れることがすごいな。本当に魔王になってしまいそうな雰囲気を醸し出している。

「私はグレモリー家の次期当主として生き、そしてレーティング・ゲームの各大会で優勝することが近い将来の目標ですわ」

次に夢を語ったのが部長だ。

その夢を叶えるために俺の・・・俺達眷属の力が必要不可欠だ。その夢、絶対に叶えてあげたいな。

次々と若手悪魔が夢、目標を口にし、最後となったのがソーナ会長だ。

「冥界にレーティング・ゲームの学校を設立することです」

その語られた夢に、上役達が眉を顰めていた。

「レーティング・ゲームを学ぶ場所ならば、既にあるはずだが?」

上役達の確認するかのような言葉に、会長は淡々と語っていく。

その施設は、上級悪魔と、一部の特権階級の悪魔しか通う事が許されない施設であるため、会長は、下級、転生悪魔が分け隔てなく通うことができる学び舎を設立したいのだという。

その夢はとても素晴らしいものだと俺は思った。だが・・・。

「「「「ハハハハハハハハハハハッ!」」」」

上役達は会長の夢を笑い飛ばしていた。そして、口々にバカにした挙句、さらには下級ごときにとまで吐き捨てていた。

正直、かなりカチンと来た。俺ですらこうなのだから、会長の眷属、中でも匙には黙っていられないことだろう。視線を向けてみると、案の定、その表情は怒りに満ち溢れていた。

「っ! 黙って―――」

ついに黙っていられなくなり、上役に食って掛かりそうになったので、俺は素早く気付かれないように匙の口を塞いだ。

「やめとけ、この場で食ってかかっても不毛だ」

俺は匙の耳元で囁くように呟いた。

『放せ! ここまでバカにされて黙ってられるかよ!』

尚も食って掛かろうとする匙。

『この場でお前が食ってかかれば、会長に迷惑がかかるだけだ。会長はただ夢を語っただけだ。壮大だったり、型破りな夢ってのはいつの時代、どこでも笑われるもんだ。いちいち気にしてたらキリがないぞ』

『っ! ・・・だからってよ・・・』

俺は匙の肩に腕を回し、窘めるように言った。

『笑いたい奴には笑わせておけ。お前がすることはここで感情のままに怒りを吐露することじゃない。会長と共に夢を実現させ、あいつらを黙らせることだ』

『っ!』

その言葉を聞いて匙もある程度落ち着きを取り戻したようだ。

『夢を夢のまま終わらせ、結局笑わせたままにするか、夢を現実のものにし、あいつらを黙らせることができるかはお前達や会長次第だ。励めよ。会長の自慢になりたいならな』

俺はニカッと笑みを見せた。それに対して匙も笑みを浮かべた。

『そうだよな。わりぃ、少し熱くなり過ぎた。危うく会長に迷惑をかけるところだったよ。ありがとな、御剣』

『気にするな。そんじゃ、俺はそろそろ戻るな』

そう告げ、こっそりとさっきの立ち位置にまで戻っていった。











・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


その後、落ち着きを取り戻した匙なのだが、我慢しきれなかったのは、最上段に居座る会長の姉にして魔王様であるセラフォルー様だった。

涙目で物申すセラフォルー様を前に、会長は顔を真っ赤にして両手で顔を覆っていた。

その後、サーゼクス様の提案により、1つのことが決まった。それは―――












グレモリー眷属と、シトリー眷属とのレーティング・ゲームだった。












          ※ ※ ※


「そうか、シトリー家とゲームか・・・」

グレモリー家の本邸に戻ると、そこでアザゼル先生が俺達を迎え入れてくれた。

その後、リビングに集合し、先程決まったことの詳細を説明した。

「人間界の時間で現在7月の28日。対戦までは約20日と言ったところか・・・」

アザゼル先生が計算をし出した。俺達の修行の予定でも組んでいるのだろう。

無益に過ごすわけにはいかない。相手は会長、そしてその眷属。部長にとって、若手悪魔の中で一番のライバルと言える相手だ。前回のライザーとのゲームで敗北しているだけに、是非とも部長に勝利を捧げたい。

「早速、明日から修行を始めるぞ。明日の朝、庭に集まれ。各々に修行方法を教える。覚悟しとけよ」

「「「「はい!」」」」

よっしゃ! ガンガン鍛え抜くぞ!

決意を決めると、そこにグレイフィアさんがやってきた。

「皆さま、温泉のご用意ができました」

けど、その前に温泉でゆっくりくつろぐとしますかね♪












          ※ ※ ※


「あ゛ー、極楽極楽〜」

タオルを額に置き、俺は温泉をこよなく満喫していた。

「おーおー、なーにおっさん臭ぇ声出してんだよ」

「ほっといて下さい」

横にはアザゼル先生が浸かっている。ご丁寧に堕天使の証である12枚の黒い羽を広げている。

木場は身体を洗っており、ギャスパーは何故かタオルで胸まで覆っている。

「やっぱよぉ、冥界、地獄といやぁ温泉だよな。冥界屈指のグレモリー家の私有の温泉となりゃ、名泉中の名泉だろうよ」

「確かに・・・」

俺は額のタオルを手に取り、辺りを見渡す。

にしても、奇妙なものだな。冥界だってのに、和風造りの温泉とはな。

すると、垣根を越えて女湯から声が聞こえてきた。

『リアス、また胸が大きくなったわね』

『ぅん! もう、卑猥な触り方しないでよ、朱乃。そういうあなたの方こそ大きくなったんじゃない?』

『見せたい相手ができましたから。今では寄せて上げて大きく見せるようにしてますわ。うふふ、意中の殿方ができると女は大胆になるものね』

『そこには同意するけれど、あまりあの子を刺激しないでもらいたいわね』

『大きいです・・・。まるでメロンです。それに比べて私なんか・・・』

『あらあら、アーシアちゃん。殿方を悦ばせるのは何も大きさばかりではありませんわよ。それに、大きいは大きいなりに悩みも多いのですよ?』

『それにも激しく同意するわ』

『うぅ、それは贅沢な悩みです〜』

『何だ、アーシア? もっと大きくしたいのか? ならば、私が強力してやろう』

『ひゃっ! ゼ、ゼノヴィアさん! そ、そんな、んん// 揉まないで下さい!』

『何だ、知らないのか? 胸は揉むと大きくなると言っていたぞ? それにしても、程よい大きさに柔らかさだな。これなら存分に男を悦ばせられるだろう』

『そ、そんな先の方まで//』

『あらあら。若いってホントいいわね』

『そういうあなたはいつまで触って・・・んぅ! ちょ、朱乃!』

『あなたと違ってこっちは素直ね。こうしたらどうなるのかしら?』

『あ// や、やめて・・・、初めてはあの子に決めて・・・ひゃっ//』

などが、垣根を越えて、はしゃぐ声と一緒に湯内で暴れる音が耳に届いてくる。

「・・・ぶくぶくぶくぶく//」

俺は湯に口元まで浸かった。

「何だ、女湯が気になるのか?」

横でアザゼル先生がニヤニヤと笑みを浮かべながら俺の肩に手を回してきた。

「ぶはぁ! ・・・まぁ、気にならないと言えば嘘になりますが・・・」

「ハッハッハッ! だったらよ、堂々と女湯に行きゃいいじゃねぇか。こんな垣根、お前ならひとっ跳びだろうが」

「そんな野暮な真似はしませんよ」

それじゃ、あのバカ共(松田と元浜)と同レベルじゃないか。

「はぁ、そうかよ」

アザゼル先生は1つ溜め息を吐いた。そのまま大人しく温泉を満喫する・・・と、思いきや。

ガシッ!

唐突に俺の首根っこを掴まれた。

「カッコ付けんなや!」

ブォン!!!

「嘘だろうぉぉぉぉぉっ!!!」

そのまま上空に投擲された。

「なんの!」

俺は魔力で足場を創造し、踏ん張りながらブレーキをかけ、空中で停止した。

「この程度で俺をどうにかできる・・・えっ?」

急ブレーキをかけて空中で停止したその瞬間、顔を上げると、眼前に光の槍があった。

真下にはその光の槍を投擲した体勢でこちらをニヤリと見つめるアザゼル先生。

「正気かぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

チュドォォォン!!!

「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!」

咄嗟に障壁を展開するも間に合わず、槍が俺に直撃した。

ドッボォォォォォン!!!

俺はそのまま身体から煙を上げながら落下した。

「ぶはぁ! あんのチンピラ堕天使がぁ! よりにもよって光の槍までぶつけてきやがって! 今すぐぶちのめして! ・・・あっ」

ふと、我に返ると、そこには桃源郷、もとい、我らがグレモリー眷属の女性達が。そして、当然、その姿は薄いタオルで裸体を覆った程度だ。

「あら、昴。あなたもこっちに来たのね」

「うふふ。大胆ですわね、昴君」

そう言いながらスススッと俺に近づいてくる部長と朱乃さん。

「し、失礼しましたーーーっ! すぐに退散し―――」

「ダメよ」

「ダメですわ」

部長と朱乃さんに両サイドから挟まれ、湯に沈めれてしまった。

「お風呂は肩まで浸かって1000数えてから出なさいと習ったでしょう? 私と一緒に数えましょう♪」

プニプニ♪

「せっかくですから、私がマッサージをしてさしあげますわ。どう? とっても柔らかいでしょう?」

プニュン♪

「〜〜// ふ、ふたりとも、近い・・・近すぎます・・・」

「朱乃、くっつきすぎよ。離れなさい」

「やーですわ。こうして肌を合わせて一緒に心身共にリフレッシュすると決めたのですわ」

俺の言葉など無視してやりあう2人。

さらに、視界の先には飛び込むタイミングを図っているアーシアにゼノヴィア。

俺は理性と戦いながら温泉を満喫したのだった。









続く

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