小説『プライベート・ホスト』
作者:ウィンダム()

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既にメイドは帰り邸宅には玲子と昭吾の二人しかいない。

リビングに座る玲子と昭吾。

この予想外な展開に戸惑い気味でどこか落ち着かない昭吾。
そんな昭吾に玲子は、
 
  ねえ、おなか空いたでしょ、今からなにか作ってあげるね。

といそいそとキッチンへと向かうと、鼻歌を歌いながらなにやら調理を始めていく。
暫くすると用意ができたらしく昭吾をダイニングルームへと連れて行く。

テーブルの上にはシャレた鍋を中央にハンドメイドな感じの木製サラダポールの中にはサーモンマリネ、
そして同じ材質のサラダサーバー、パン籠の中のロールパン、そして皿が並べられていた。
 
  有り合わせの材料でサラダとシチューを作ってみたんだけど・・・。

といいながらそれぞれの皿にシチューを盛ると皿のひとつを昭吾の前に置く。
次に玲子はサラダサーバーでそれぞれの小皿にサーモンマリネを盛り付けると、
そのひとつを昭吾の前に置く。
こうして準備か整うと玲子が、
              
  さぁ、食べましょう。

と促す。

  へえ、なかなか美味しそうだね、いただきす。

とシチューを口にする。
初めて口にする玲子の手料理の腕前はなかなかのものだった。
 
  へえ、有り合わせの食材で作った割には、美味いね、

玲子は嬉しそうな笑みを浮かべると、
 
  そう、ねえ、このマリネも食べてみて、
  イタリアンドレッシングで和えてみたんだけど。

昭吾は玲子の作ったマリネを口にすると、
鮮度のいいサーモンと適度な量のドレッシングで和えてあり、なかなか美味い。
昭吾は感心しながら、
 
  このマリネも美味い、へえ、君、料理上手なんだね。

玲子は笑みを浮かべて、
 
  そう言ってくれると嬉しい、作った甲斐があるわ。
  あっ、そうだ!

玲子は席を立ち、
 
  ちょっと待ってて。

とキッチンへ行く。
暫くすると赤ワインとワイングラスを持ってテーブルに着くと、
グラスのひとつを昭吾の前に置く。
昭吾は、
 
  え? なに、どうするの?

玲子は悪戯っぽく笑うと、
 
  飲んじゃいましょうよ。

玲子はボトルを持つとワインオープナーでコルク詮を抜くと、
昭吾のグラスにワインを注ぐと自分のグラスにも注ぐ。
昭吾はビジネス上、或る程度ワインを口にしてきたが玲子はどうなのだろうか。
 
  いいの? 見つかって怒られない?
 
  大丈夫よ、地下のワインセラーに行けば幾らでも転がってるわ、
  一本くらい分かりっこないわよ。
 
  そう? なんか心配だな。
 
  いいのよ、どうせパパなんか今頃接待で飲み歩いているんだから。
  ママだって旅行先で同じことしているだけよ。
 
  そうかな。
 
  そうよ、いいから飲みましょう。

玲子はグラスを持つと、
 
  カンパイしましょう。

昭吾はグラスを持つと玲子とグラスを合わせる。
昭吾は一口飲むと、かなり上等なボルドーワインであることが分かり思わずラベルを見ると、

  PREMIER GRAND CRU CLASSE

と書いてある。
昭吾はワインを飲んでいる玲子を見るとボトルを指して、
 
  これ、ラベルにプリミエ・グラン・クリュ・クラッセと書いているけど、いいのかなぁ。
 
  え、あなたラベル分かるの?
 
  ん? 少しね。

昭吾はボトルを持つと玲子にラベルを見せ、
 
  ほら、ラベルの銘柄の下に小さな文字で書かれているだろ?

玲子は示されたラベルを見ると、
 
  プレミア・・・、グランド、クル・・。

英語読みしていく玲子に昭吾は、
 
  いや、これはフランス語で書かれているから、これはプリミエ・グラン・クリュ・クラッセと読むんだ。

玲子は感心して、
 
  へえ、よく知っているのね! で、どんな意味?
 
  これは格付けを表し、このワインは第一級の格付けであることを表しているんだ。
 
  へえ、そうなんだ。

玲子は感心しながらボトルのラベルを見ている。
昭吾は、
 
  ところで、君のお父さんはどんなお仕事しているの?
 
  わたしのパパ? 会社の社長よ。
  だから仕事と言ったって、議員や官庁の偉い人とか、
  そういった政府の要人と接待してるってだけ。
  わたしから言わせれば、そんなのただ飲み歩いてるってだけよ。

昭吾は玲子の話を聞くと感心して、
 
  へえ、君のパパって偉い人なんだね。
 
  とんでもないわ、何が偉い人よ、わたしやママを放ったらかしにしてきたロクデナシよ!

と言うと玲子はグラスのワインをグイっと飲み込む。
 
  だからわたしのママは、パパが相手にしてくれないものだから、
  お付き合いだなんて言って、他の奥さん達と遊び歩いているのよ。

するとまたグラスをグイっとあおる。

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