小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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〜ガウルside〜

きっかけはジョーヌの一言だった

「はぁ?勇者召喚?」

「退屈やし暇つぶしにええかなーって」

聞き返す俺に何かに期待するような目でジョーヌは言う

「アホ。勇者召喚なんて勝手にやったら、姉上に冗談抜きで殺されちまうだろうがよ」

俺はその提案を一蹴する

俺達が住むフロニャルドとは別の世界から勇者を呼ぶ『勇者召喚』

国の王や領主だけが行うことができると言われているが、ここ百年ちょっとは全く行われていないもの・・・

そんなものを勝手にやったとバレたら、最近妙にイライラしている姉上に本気で殺されちまう

「だからその真似事。勇者召喚は領主が祭壇で行うもの。だからここで私達がやっても何も起こらない」

すると今度はノワールがそう話す

「何も起こらないならきっと怒られませんよ、ガウ様」

ベールの言葉に俺はうーんと少し考える
まぁ確かに俺は領主じゃないし、祭壇でやらないなら召喚はできないだろう・・・

「ま、暇つぶしにはちょうどいいか・・・うし!やってみっか!」





〜美紗side〜

「美紗〜明日から学校なんだから早く寝なさいよ〜」

「はーい」

リビングでテレビを見ていた私は、お母さんからの言葉に適当に返事をして自分の部屋に戻る

今日は1月6日、冬休み最後の日

ガチャ・・・バタン

「うぅ〜寒い・・・さっさと寝よっと」

自分の部屋のドアを開け、部屋の中の冷えた空気に身を縮ませ、急ぎ目にベッドに入る

はぁ・・・明日からまた学校か・・・メンドイなぁ・・・

ベッドの中で私は明日から始まる学校に少し憂鬱になる

少しして、自分の体温で布団も温まってきて徐々に眠気がやってくる
私はそれに逆らわずに眠りに落ちる





この世界で過ごす、最後の夜になるとも知らずに・・・






〜ガウルside〜

「よーし、大体こんなもんか・・・」

俺とジェノワーズはノワールが持ってきた勇者召喚の儀式に関する本を参考に儀式の準備をした
実際儀式を行うわけじゃねぇからこの準備の時間が主な暇つぶしってことだ

「って結局何もしないで片すんだから、無駄もいいとこだったな。はぁ・・・」

「でしたらガウ様、儀式のほうもやってみますか?」

散らかした部屋の惨状に片付けの大変さを想像し、ため息を付くとノワールがそんなことを言う

「あー・・・」

俺は頭をボリボリと掻きながら少し考える・・・

ここまでやって何もしないのは、流石に勿体無い感じがする
どうせここは祭壇じゃないし、俺は領主じゃない・・・だから儀式は完成しないのだから結局何も起こらないはず
ここで終わってもまた退屈な時間に逆戻り・・・それなら少し儀式の真似事でもやってもうちょっと暇を潰すのも悪くないか・・・

「おし!儀式もやろうぜ!方法は?」

「まず召喚の魔法陣に輝力を流してください」

ノワールが本に書いてある召喚の方法を読み上げる
俺は本に書いてあった召喚の魔法陣をそのまま大きな紙に書いたものに輝力を込め、魔法陣が俺の輝力の色のエメラルド色に輝きだす

「次は?」

「召喚の呪文。今から言いますので続けて言ってください」

「おう」

ノワールが本に書いてある召喚の呪文を読み上げ始める

「我、ガレット獅子団領国領主ガウル・ガレット・デ・ロワ」

「我、ガレット獅子団領国領主ガウル・ガレット・デ・ロワ」

ノワールの言葉に俺は可笑しさを堪えながら続く

ハハ・・・俺領主じゃねぇのにな

「我、求めるは異世界からの勇者」

「我、求めるは異世界からの勇者」

召喚の呪文を唱える俺をジョーヌとベールが真剣な表情で見ている

暇つぶしのつもりだったが結構ワクワクするな・・・

「我、今ここに召喚のゲートを開かん」

そう言ってノワールは本から顔を上げてこっちを見る
呪文はそれで終わりと言うことか

「我、今ここに召喚のゲートを開かん」

俺がそう言って呪文を完成させる

ま、何にも起こんねぇんだけどな・・・はぁ〜あ思ったより楽しめたな・・・

そう思って俺は輝力の放出を止めようとした瞬間

「「「「え?」」」」

魔法陣の輝きが急に強まった

「ガウ様?!輝力を止めてください!!」

「ああ!わかってるよ!でも・・・」

ノワールの慌てた声に俺は輝力を止めようとするが、なぜか輝力が勝手に出ていく・・・まるで魔法陣に吸われるようだ・・・

「ダメだ!止まらねぇ!!」

「もしかして、儀式が完成してもうたんか?!」

「そんなはずは・・・」

「じゃあなんで?!」

俺の言葉にジェノワーズが慌てだす

「ゲートが開きます!」

ノワールが天井を指してそう言う、魔法陣の真上の天井に俺の輝力が集まりだして薄く広がっていく

その薄く広がった輝力がゆっくりと滴のように垂れ始め・・・滴がゆっくりと床に落ちながら消えていく・・・そしてその滴の中に1人の人間が入っていた

その光景に俺達は呆然とする

ゆっくりと落ちてくるその人間はフロニャルドの人間とは違い、尻尾は無く、耳も頭の天辺ではなく頭の横についている・・・明らかな異世界人・・・

顔を覗き込める高さまで落ちてきて、俺が顔を覗き込むとその人間は目を瞑っていて、どうやら眠っているようだった

髪の長さと顔立ちからたぶん女・・・勇者って男じゃねぇのかよ・・・

「ガウ様、受け止めてあげたほうがよろしいのでは?」

「ん?あ、ああ・・・」

ノワールの声に俺はその人間の背中と膝裏に腕を通して抱き上げるように受け止める
すると今まで止まらなかった輝力がピタリと止まり、魔法陣の輝きも止まった

「召喚・・・してもうたな・・・」

「ですね・・・」

ジョーヌとベールがそう呟く

これどうすんだよ・・・

-1-
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