〜美紗side〜
「うーん・・・」
朝になったのか、私は目が覚める
あれ?おかしいなぁ・・・今日から学校だからお母さんが起こしてくれるはず・・・早く目が覚めたのかな・・・?
そう思いながら私は起き上がって目を開く
「え・・・?」
寝ぼけ眼でも明らかに自分の部屋じゃないことに気付き、私の眠気は一気に吹き飛ぶ
寝る前は確かに自分の部屋の自分のベッドで寝ていたはず・・・それがなぜこんな・・・
壁が石のレンガでできている建物の、シャンデリアなど高級そうな内装をした部屋の、バカみたいに大きなサイズのベッドの上で目を覚ますことになるんだろう・・・?
いったいどうなっているの・・・?
私がベッドから降りようとして、ふとベッドに寄りかかるように座って寝ている4人の人影を見つける
誘拐された・・・?いやいやそれはおかしい・・・誘拐されたのなら私が床で寝ているほうだろうし、私の家は普通の家庭だから取れる身代金なんて高が知れてる
にしても・・・この猫耳ウサギ耳は・・・本物?カチューシャとかじゃないようだけど・・・
私はそぅっとその動物のような耳に触れようと手を出していく
ピクン
私の手が耳から生えている毛に触れた瞬間、耳が動いた
私はそれを見て慌てて手を引っ込める
本物・・・え?なに?どういうこと?何かの実験で生まれた新生物?ってそれは流石に映画の中だけか・・・
とりあえず、他に情報を・・・
私はベッドから出て、部屋の中を音を立てないように歩いて回って色々と見る
床にはこれまた高級そうな絨毯が敷かれている。私は裸足なので足の感触がホワホワで気持ちいい
何これ・・・?文字、なのかな?こんな文字見たこと無い・・・
本棚に並べられた本の背表紙の文字のようなものを見て、私はそう感想を浮かべる
これは、時計、だよね?文字は全く違うけど・・・
次に私の身長以上もある大きな柱時計を見る。振り子式の古い型のようだ。文字の配置から考えて今は7時35分か?もちろん私が知ってる時計と同じものならばの話だけど・・・しかし窓の外の明るさを考えると案外外れていないのかもしれない
そうだ、窓の外・・・
私は窓に近づいて外を見る
うん・・・明らかに日本じゃないね・・・ヨーロッパ?というかこれは現代なのかな?
窓の外の風景を見て私はそう思った
集めた情報から考えてこの状況・・・
「なぁんだ、夢か」
そう結論付けた
あーバカバカしい・・・どうやったら目が覚めるのかな?とりあえずベタに頬でも抓って・・・
ムニ、グィー
私は頬を抓って横に引っ張ってみる
痛い・・・けど目が覚めない。あ、そうか頬を抓るのは夢か現実かを調べるときか・・・えーっと痛かったときは・・・現実だっけ。え?現実・・・
現実、そう思った瞬間、急に涙が溢れてくる
そして自分の身に何が起こったのかがわからない恐怖感が体中を駆け巡って、体が震えだす
「ヒック・・・ヒック・・・」
私はその場に座り込んでただ泣くことしかできなかった
しばらく泣いていると・・・
「う〜〜っあ〜〜〜っ」
ベッドに寄りかかって寝ていた4人のうちの1人が目を覚まして腕を上に突き出して背伸びをした
私はその姿を見て恐怖感が増すが動く気になれない
動いたところでどうすればいいのかもわからない
「座って寝たから体がバキバキだなぁ・・・」
白い髪の男の子?が立ち上がって体を解しながらそう呟いている
耳だけじゃなく尻尾まであるの・・・
座っていて見えなかった尻尾を見つけ、私はますます訳がわからなくなる
「ん、おぁ起きたか。よかったよかった・・・ってうぉ?!なんで泣いてるんだ?!どこか痛かったりするのか?!」
その男の子は私を見つけて声をかけ、私の泣き腫らした表情を見て慌てた様子で気遣ってくる
明らかに日本じゃないのになんで日本語で話しているの・・・?
「ここはどこ?あなたたちは何なの?」
「えっと、ここはガレット領国の領主の城。俺はガレットの王子でガウル、ガウル・ガレット・デ・ロワだ」
私の問いにその男の子はそう答える
ガレット?そんな国聞いたことない・・・
「じゃあ、私はなんでここにいるの?」
「あー・・・それは・・・」
ガウルは頭をポリポリと掻きながら答え辛そうにする
「スマン!遊びで勇者召喚の真似事してたら召喚しちまった!」
そしてパンッと手を合わせてそう謝ってきた
勇者召喚が何かはわからないが、遊びと真似事、その2つの言葉からふざけた理由と判断して唖然とする
「え、えっと・・・私は帰れるのよね?」
謝っているガウルの必死な様子に私は恐る恐るそう尋ねる
「・・・悪い」
少しの沈黙の後、ガウルは暗い表情をしてそう答えた
「勇者召喚で召喚された者を元の世界(・・・・)に返すことはできないんだ・・・」
「・・・ウソ、だよね?ねぇ、ウソだって言ってよ!それに元の世界ってここは世界も違う場所なの?!ねぇ?!」
ガウルの言葉に私はガウルの服を掴みかかりながら問い詰める
しかし、私が望んだ答えが出てくることは無く・・・
「ううーん・・・」
「なんや・・・騒がしいな・・・」
私の声に残りの3人も目覚め始める
「ガウ様!」
「止まれ!」
ガウルに掴みかかっている私を見て黒髪の子が声を上げ、3人がこっちに駆け出そうとするがガウルの制止の声にピタッと止まる。どうやらあの3人はガウルの護衛をしているお付の子のようだ
王子って言っていたもんね・・・そりゃ掴みかかっていたら護衛としては黙っていられないか・・・
私は頭が冷えて掴みかかっていた手を放す
「ご、ごめんなさい・・・混乱してしまい・・・」
私は慌てて頭を下げる
「あ、いや・・・別にそこまですることはねぇよ・・・元々悪いのはこっちだし・・・」
「しかし1国の王子に掴みかかってただで済むとは・・・」
14歳の私の少ない知識でも、王族にこんなことをして、何の罪に問われないなんてことはありえないとわかる
「いいから、頭を上げてくれ」
「はい・・・」
そう促されて頭を上げると・・・
くぅ〜〜
私のお腹からそんな音がした
「・・・」
私はお腹を押さえて4人の顔を見る
「「「「・・・」」」」
4人は何か聞いてはいけない物を聞いてしまったような表情をして顔を逸らす
「と、とりあえず朝メシにするか。流石に食堂につれてくのはまずいだろうし、取りに行ってくれ。後今日は俺も部屋で食うと伝えてくれ」
「はい、じゃあ私が取りに行ってきます」
「うちも行くで」
ガウル様の言葉にウサギ耳とトラ耳の女の子が返事をして部屋から出ていく
「これからのことは、まぁなんだ、飯を食いながらな」