小説『真・恋姫†無双〜その身を捧げて〜』
作者:ディアズ・R()

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第一話 三国志?いや、少し違うかな?





ん、明るいな……
目を開けると同時に、光が差し込み目を細める。

「あらあら、起きたみたいですね?」

声が聞こえたので、そちらを見ると、美人がいた。
明るい黒髪を団子状にしていて、綺麗な紫の瞳。
肌が白っぽくて綺麗な女性だ。
誰だ、この人?

「ふふ、私の可愛い子」

どうやら、この方の子供になったらしい。
コレが所謂転生か。
興味深い。

「貴方の名前は【劉豹】。真名は【夜空】よ」

真名ってなんだ?
そして、劉豹?
転生じゃなくて、憑依じゃないか?
この世界は三国志?
体が動かないので、天井のシミでも数えてるか。
あ〜綺麗な天井だ。
シミが無い。


◇◇◇◇◇


最近、考え事が多くなった。
後、真名がなんなのかを教わった。
自身が呼んでも良いと思った相手に、呼ばせることが出来るモノらしい。
呼んでいい、と言われてもいないのに呼んだ者は、首を切られても文句が言えないらしい。
変な世界だ。
ちなみに住んでいる家は、ほとんど無い知識で造って貰った日本の木造建築。
畳もある。
まあ、畳と襖しかないが。
町と言うよりは、村と言える場所に家を建てている。
ギリギリ五胡の領土に位置している場所でもある。
ギリギリ五胡が支配している領土の場所でもある。

母の【於夫羅(おふら)】は、南匈奴の単于という王様的な立場らしい。
周りの重鎮が、戦争戦争うるさいらしい。
それと、叔母で母の姉の【呼廚泉(こちゅうせん)】という人は、匈奴全体の帝的な人の様だ。
しかもこの二人、無駄に仲が良い。
そして、何かと俺に話しかけてくる。
まあ、暇しないからいいけども。
あ、母の真名は【雫】で、叔母の真名は【暈(かさ)】らしい。
ちなみに妹がいる。
この世界に来る前に付けたサポートで、妹の【姜維(きょうい)】として生まれてきたらしい。
真名を【胡花(こはる)】と言う。
俺のことを兄様と言って、何時も後ろにくっ付いてくる。
二人っきりの時だと猫を被るのをやめる子だ。
そう言えば、父は死んでるらしい。
まあ、別に良いけど。
そうだ、俺の髪は黒と灰色の混じった長髪をポニーテール状態にしている。
切ろうとすると周りの女性陣に止められる。
現在は、のんびり七歳として文字の勉強中だ。

「夜空、これはどうしたら良いと思う?」
「ん?あぁ、これはもうやっておいたよ」
「そうなの?ありがとう、夜空」

隣に座っているのは、母だ。
何かと俺に仕事をやらせようとする。
なので、先読みしてやっておくのが日課になってきた。
まあ、丁度文字の勉強にもなって便利だ。
あと、隙あらば抱きついてくる。
何がしたいんだ?

「夜空がいるだけで、私がいる必要が無いわね〜どう?王様交代しない?」
「まだ母の代わりにはなれませんよ。それと近いです」

何を言ってるんだか。
大体、いつかは旅に出ると言ってあるんですけどね。
許可は貰えてないけど。

「もう、自分を過小評価しすぎよ?夜空の御蔭で国も豊かになったし、賊も減った。それに、大陸統一派も今の状態で満足してる。これ全部夜空のしたことよ?」

それは良いけど、耳元で囁く様に言わないで欲しい。
ほら、侍女の人がチラチラ見てるよ。
俺達、家族だからな?

「変な噂が立つから離れてください」
「だって〜あの人死んじゃってるんだもん!夜に一人で寝るの寂しいな〜」
「胡花に言いなさいな」
「むぅ……あの子、夜空以外に懐かないんだもん」

母、アンタは子供か。
まあ、家族に興奮するほどダメ人間じゃないから、一緒に寝るぐらい良いけどさ。
いや、むしろほとんど性的興奮が無いんだが。
母や侍女、胡花の裸を見たが、綺麗な肌だな〜ぐらいしか感じなかった。
皆、美人美少女なんだが……俺、病気かな?
誰にかわからないが、言っておく。
男に興味は無い。
劉備には、別の意味で惚れるかもしれないが。

「仕事は、夜空が全部やっちゃったし……久しぶりに遊ぼ!」

これが、南匈奴の王か……
まあ、俺も暇だしいいかな。
文字?会話してる間にほとんど覚えた。
元々、基礎は完璧だったからな。

「何する?囲碁?将棋?智得守(チェス)?」
「智得守で!いや〜智得守は意外と、軍を率いる人達に好評なんだよね〜」
「まあ、仮想とは言え戦争だしな、これ」

俺が暇潰しの道具として、囲碁、将棋、智得守を作ってもらった。
これが意外と好評だった。
勉強嫌いの武人でも、楽しんで出来る人の動かし方。
まあ、この世界では歩兵(ポーン)以外は、基本的に全部女王(クィーン)見たいなもんだけど。
何ヶ月か前に旅をしてる【呂布】って言う小さな女の子が、大人を吹き飛ばしてたし。
真名は【恋】と言うそうだ。
長持ちするお菓子をお土産にあげたら、懐かれた。
他の将も、きっと女の子で強いんだろう。

「むぅ〜そう動かすか……なら、ここで」
「一手(チェック)」
「あれ?じゃあ、ここ」
「一手」
「え!?ここは!」
「一手」
「あれぇ!?なんでなんで!よし!一手!」
「詰み(チェックメイト)」
「負けてる!?」

母は弱いわけじゃない。
簡単に言うと、俺が強い。
なんと言うか、直感で何所に何を置けば良いかすぐにわかる。
まあ、これのせいであんまり楽しめないけど。
負けた母を見てるのが意外と楽しいので、気にしない。

「もう一回!もう一回!!」
「はいはい」

最初見た時は知的な美人だと思ったが、一緒にいるうちに意外と子供っぽい事がわかった。
普段は姉っぽい感じだが、二人になると妹っぽくなる。
大体そんな感じ。

「面白そうじゃの〜童も一緒にやらせてたもれ」
「あら、姉さん?なんでここに?」
「暇だったので、夜空に会いに来たのじゃ」

わかってると思うが、この人が呼廚泉だ。
年寄り口調だが、見た目は美少女。
今の胡花よりは、いろいろ大きいが。
髪は灰色のサイドテールで、瞳は澄んだ空色。
幼い見た目に似合わず、年上オーラを放っている。
胡坐をかいてる俺の足の上に腰を下ろす。
この人、毎回そこに座るけど何でだ?

「童は囲碁をやりたいのじゃ」
「……私もそこに」
「ダメじゃ。と言うか、お前は大きすぎるわ」
「くぅ……」

何を話してるんだろうか?
俺には、よくわからない。

「みんないる!」

その声がした方を見ると、胡花がいた。
母と同じ黒髪をツインテールにしていて、紫眼の美少女の様な美幼女。

「おぉ、胡花ではないか」
「もう起きたの?まだ寝てた方が良いわよ?」

実は、胡花は風邪を引いていた。
で、昨日一日寝てた。
胡花を手招きして右膝に乗っける。
暈さんを左膝に乗っけておく。
何故か、後ろから母が抱きついてくる。
なんだかんだで家族全員集合だな。
ふむ、皆で出来るもの……人生ゲームもどきかな?
とりあえず、動けないな。


◇◇◇◇◇


十歳になった。
あと、なんか来たらしい。
確か……そ、そう、【曹仁】?

「【曹操】ですよ。まあ、曹仁もいますけど。他にも【夏侯惇】と【夏侯淵】もいます」
「へ〜そうなんだ」
「……偶には、驚いたらどうです?」

いや、別に。
それにしても、胡花は二人っきりだとホントに変わるな。
もう慣れたけど。

「見に行かないんですか?」
「どうでもいい」

それより、今日の昼飯何にするかが大事だ。
お客もいるみたいだし、寿司でも出してみる?
マグロとかは出せないけど、良い魚あるよ。
最初は、皆生で食べるのに抵抗があったみたいだけど、一回食べたらやめられなくなった。
よし、そうと決まれば台所に行かなくてはな。


〜調理中〜


「また勝手に……料理長も何か言ってください!」
「まあまあ、いいじゃねぇか。それより侍女長!酒の用意を!」
「はぁ……わかりました」
「しゃあ!!お前等!今日は宴だぁ!!」
『よっしゃ!!』

ウチでは男性陣が酒を飲む時は、女性陣に許可を貰う必要がある。
俺が教えた酒のつまみのせいだけど。
ここの人達は酒が好き過ぎだ。
焼酎とか葡萄酒(ワイン)もいろいろな所に広まってるらしい。
だが、そんなことどうでも良い。
完璧な盛り付けだ。
準備できたし、行くか。

「じゃあ、行きますね。ソッチのは食べて良いですよ」
「ありがとよ坊ちゃん!」
「もう……物は壊さないようにしてくださいね?」

少し腹が減った。
侍女長の【白絽】さんに、刺身の盛り合わせを運んでもらっている。
真名を【珊瑚(さんご)】と言うそうだ。
蒼髪のロングストレートで、緑色の瞳。
ちょっとキツイ性格だが、美人なので男性陣に人気だ。
まあ、女性陣も尊敬してるみたいだけど。
珊瑚さんと話しながら客間に向かう。
客間の襖を

「あぁ、来たみたいね。じゃあ、食事にしましょうか?」
「そうね……今は、退いてあげるわ」

何をしてたんだ?
覇気を纏った金髪ツインテール美少女。
その後ろには、多分双子とギャルっぽい女子。
謎だ。

「これは、どんな料理なのかしら?」
「こっちの醤油に付けて、そのまま頂くんですよ」

名前がバレるとめんどくさい事になりそうだ。
と直感が告げているので、給仕の様に振舞う事にした。
金髪さんは、言われた通りに優雅に食べる。
後ろの三人は、初めて見る料理だからか料理を珍しそうに見ている。

「へぇ、なかなかいいわね」

お気に召したようだ。
後ろの三人は、まだ料理に手をつけていない。

「珊瑚さん。夜空と席を外してくれる?」
「はい、かしこまりました」

これに従った方がいいな。
ここにいるのは、拙い気がする。

「そこの男、待ちなさい」

止められてしまった。
どうしよう。
まあ、なるようになるか。

「なん―――」
「【春蘭】」
「死ねぇ!!」

俺が言い終わる前に双子の片割れで、デコが広く、大剣を持った女の子が襲い掛かってきた。
なんで?
とりあえず、適当にあしらうか。

-2-
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