小説『真・恋姫†無双〜その身を捧げて〜』
作者:ディアズ・R()

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第六話 呪いの解呪って、出来るのかな?





祟り神は真っ直ぐに突進してくる。
木を足場に、祟り神の真上へ跳ぶ。
木の枝をへし折り、尖った部分を投げつけるが、刺さりもせずにすぐ腐敗した。
前面の木々を粉砕しながら進んで、愛音へと向かっていく。

「避けろ!!」
「ッ!?」

愛音はギリギリのところで、突進を回避して草むらの中に飛び込む。
沙箕へ向かおうとする祟り神の目に、白雪が矢を放った。
的確に祟り神の目に突き刺さり、悶える様に黒い蛆が球体状になる。

(ピギャァァァァァ!!!)
「やった!」

白雪がそう言った瞬間、自身の勘が最悪の予感を告げた。
本能的に白雪の前に行き、黒の塊を睨み付けると黒い蛆がこちらに向かって伸びてくる。

「え?」
「チッ!」

剣で何とか切り払うが、剣が腐ってしまい右腕に黒い蛆が殺到する。
自身の腕に黒い蛆が触れた瞬間、焼けながら引き千切られる様な痛みが襲いかかってくる。

「ガァ、アァァァァァ!!!」
「せ、先生!?」
「グッ!まだ終わってないぞ!!」
「ッ!?」

痛む右腕を力任せに振り、黒い蛆を引き剥がす。
痛みで脂汗が全身から吹き出しベタベタと気持ち悪い感触となるが、それらを全て無視して全神経を祟り神に集中する。
あらゆる行動の予想、最も確率の高い行動を予測、それら全てに対応できる自身の位置と動き。
それを数秒で計算し、相手の行動より早く動きだす。
この時、夜空の瞳からはハイライトが消えていた。
何も見ていないような空虚な瞳。
そして、祟り神が黒い蛆を全方位に伸ばし、全てを腐らせ始める。
だが、その行動を先読みしていた夜空は、紙一重で避けながら祟り神へと近づいていく。
服に掠りはするが、全て避けきって祟り神の残りの目に右腕を叩き込む。

(ピギュ!?)
「あまり、人間を舐めるな!」

目玉を引き千切るように掴み、抉り出す。
ビチャビチャと黒い血のシミが地面を染める。
掴んでいた目をすぐに手放し、右腕の確認する。
右腕の感覚はないが、動きはするようだ。
祟り神が倒れ、黒い蛆が溶けていく。
残ったのは、巨大なイノシシ。

「本当に『もののけ姫』だな……その御姿、さぞ名のある森の主と御見受けする。何故祟り神などに……」
(……貴様等人間さえいなければ……我が森は無くなることはなかった)
「……名を聞いても?私は、夜空と申します」
(我が名は、■■■……貴様には呪いがかかった。苦しみと狂気の果てに、死ぬがいい……)

イノシシはその肉全てを腐らせ、骨のみとなった。
腐臭が漂い、周囲の草木が枯れ始める。

「かつての森の主が、森を腐らせるか……悲しいな……っ」
「せ、先生……腕が……」

右腕が痛みだす。
四人が駆け寄って、その腕を見て息を呑む。
痣の様な黒い染みが、右腕を浸食していた。
夜空は出来る限り笑顔を作り、四人に心配をかけさせないようにする。

「俺は大丈夫だ。それより、ここにいるのは危険だ。急ぐぞ」

それだけ言うと、右腕を隠すようにしながら歩き出す。
白雪、愛音、沙箕は顔を見合わせて、夜空の後をついていく。
桜は夜空の瞳からハイライトが消えるのを見ていまい、どうしたら良かったのか、どう声をかければいいのか分からないでいた。
それでも今は、夜空達を小走りで追いかける。
いつか、夜空自身が話してくれるのを信じて……


◇◇◇◇◇


祟り神に会いはしたが、無事我が家へ。
桜がこちらを見てはソワソワしていたが、なんだったのだろうか?
家の者全員が、俺の腕を見て騒がしくなったりもしたが、ここもどうでもいい。
祟り神と遭遇して二日経った今、問題は……

「胡花」
「なんでしょう」
「アレは、なんだったんだ?」

胡花と俺の自室で向かい合って、この前の祟り神について尋ねていた。
いろいろ知っているし、説明が仕事らしいので尋ねた。

「祟り神、ですか……正直、わかりませんね。貴方というイレギュラーがいるからなのか、それとも他のイレギュラーがいるのか……この世界に来る前は、あんな存在確認されていませんでした。他にも祟り神が存在するのかも、貴方の腕がどうなるのかも、私にはわかりかねます。すいません」
「いや、気にしなくていい。じゃあ、一つだけ気になるんだが、呪いの力は重複されるのか?されるんだと、右腕を使わないで日常生活をしないといけなくなるからな」
「……どうやら、重複されるようです。今なら、右腕一本で夏候惇を圧倒できるんじゃないですか?ただ、元が特殊だからなのか呪いの進行が異常なまでに遅いです。もしものことを考えるなら、あまり使わない方がいいですね」
「わかった。胡花、ありがとうな」
「いえ、御仕事ですから。それに、貴方の役に立つというのも悪くありません」

ここで顔の一つも赤くしたら可愛いと思えるんだが、本当に無表情だよな。
まあ、ほんの少しだけ嬉しそうな感じがしたけど。
祟り神が生まれた理由を考える。
森が無くなったか、人によって森を追い出されたか、それとも……別の何かに変えられたのか。
最近は妖術使いなんていうのがいるらしいから、それがかかわってる可能性も否定できない。
いつか、それ相応の末路を辿ってもらおう。

「さて、散歩でも行くか。一緒にどうだ?」
「喜んで」


◇◇◇◇◇


俺は十五歳となった。
なので、旅に出た。
胡花、白雪、桜が一緒に来た。
そんなこんなで、戦争っぽいのに巻き込まれたしだいだ。

「おかしいな?」
「だね〜」
「余裕ですね」
「どどどどどうするんですか!?」

どうしようか?
えっと、片方の旗は『孫』、『黄』、『張』の字。
今の時代だと、【孫堅】、【黄蓋】かな?
あと一人、誰だ?

「この地域の孫の字……孫堅殿でしょうか。黄の字は黄蓋殿でしょうね。弓の名手との噂なので、ぜひ指導していただきたいものです。張の字は、【張昭】殿でしょうね。行商の方から聞いた話ではもっとも古株らしいです。かなりの知将とのことですよ」

張昭?孫策関係じゃ……まあ、この世界じゃそんなこと気にしてられないか。
さて、どうするか?
このまま続けば、孫堅殿の方が勝つだろうな。
だけど、微妙に嫌な予感がするな。
とりあえず、見てるか。

「い、いいのですか!?協力した方が!!」
「白雪」
「はい」
「え?ちょっと、白雪何を!?や、やめ―――」

さて、孫堅が死ぬのは黄巾の乱が終わってからだけど……一応注意しておくかな。
数刻して、孫堅殿のいるであろう軍から勝鬨が上がった。
嫌な予感が強まったので、そろそろ動くことにした。

「ふむ、大変そうだ」

-7-
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