小説『涙と桜』
作者:樹緑()

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涙と桜

わたしは雨がきらい
雨はじめじめしているのもあるけど
あの事件のあった後はもっときらいになった

この事件はわたしが5歳のとき
ある選挙の立候補者の街頭演説に父と母とわたしと3歳になったばかりの妹の4人で行ったときのことだ
この日もじめじめと雨が降り周りの雰囲気は暗かった
いつもは「この人が言っていることは良いことだ」とわたしや妹に言い聞かせていた父も雨のせいか静かになっている
この空気吹き飛ばしてやると言わんかぎりに候補者はマイク片手に演説をしていた
しかし、その声とは裏腹に悲劇は起きてしまった
わたし達は父が握手をしたいと言っていたから比較的前の方にいたが
そのすぐ後ろの方から悲鳴が聞こえた
その悲鳴のあとすぐにカッパを着た一人の中年で男の人か人波を掻きわけてわたし達に近付いて来た
次の瞬間、刃渡り15?ぐらいのサバイバルナイフを立候補者めがけて突き刺した
だけど…わたしや妹が再び目をあけたときは悲惨だった
その候補者の身代わりに父にナイフが『ずぶり』と当時のわたしや妹では聞いた事がないぐらい奇妙な音を出しながら刺さり体制が崩れ倒れた
そして、母はナイフ男に叫びながら殴りかかった
しかし倒れたのは母だった…その倒れた二人からは紅いトマトジュースみたいな液体が溢れ出ていた
そして、わたしが母の紅いところを触るとわたしの手まで紅い液体がついた
妹は母な抱きつき大声で泣いた
わたしは虚ろな瞳で父を見ていた
雨が降る中わたし達姉妹は濡れていった
しかし、わたし達は雨に濡れなくなった
わたしは上を見た
わたし達の上には傘があった
その傘をさしてた人物は選挙の立候補者だった
その人は笑顔だった
そのときわたしは父や母を殺したナイフ男や死んだ父や母を笑顔で眺めていた立候補者を…

あれから17年たった今でもあの二人を恨んでいる


今の職業は警察の警護課すなわちSPである
だが、SPをしているのはその二人を同時に殺し復讐を果たすことだ…

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