小説『女戦士は穏健派』
作者:剣聖()

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第3話『臨戦態勢の女戦士』



太一『突然大声出してすみません。いや・・・幸瀬さんはどちらにツーリングに行かれるのか聞こうと思って・・・。』

美智子『私ですか・・・?私は・・・実は私、特に行き先や行く当てを以って今回はツーリングしてないのです・・・。只(ただ)色んな高速道路やハイウェイをバイクでブラブラと・・・以前からそう云うツーリングが好きでしたから。』

太一『そうでしたか。』

美智子『・・・すみません・・・。子供じみていて・・・。』

太一『いやいや(笑)、謝る必要なんて無いじゃないですか(笑)。若い女性の気儘(きまま)なツーリング・・・カワイくって良いと思いますよ!ぼくは。』

美智子『そんな、カワイイだなんて・・・。・・・それに私、32ですから・・・若い女性じゃ有りませんよ?』

太一『あはは(笑)、そんな事は有りません!今日日(きょうび)30や40はまだまだ若者ですよ。だって人生って平均80年以上有る物じゃないですか?お互いまだ3分の1程度ですよ(笑)。』

美智子『古久保さんったら・・・・・・(照笑)。あの、因(ちな)みにあなたは御年令は幾(いく)つかしら・・・?』

太一『僕は34です。貴方の2、3年先輩です!エッヘン!』

美智子『もう、古久保さん!ウフフフ(笑)。』

会ってから初めて美智子の屈託(くったく)の無い少女の様な笑顔を観た太一。テレビで「吉瀬美智子」の同様の笑顔を何度か目の当りにした事はあるが、その何十倍もの可愛らしい彼女、美智子の笑顔に身も心もグッと鷲&amp;#25681;(わしづか)みにされた太一だった。

太一(幸瀬さんの笑顔、もんくなしにカワイイぜ!)

心で思う太一。

太一『そう云う訳なら・・・僕は、名古屋の味噌カツを食べたくて調べて来たんですがね、それでふたつ行こうと思ってるんです。ひとつは、ネットで有名なところ、もうひとつは現場に行って選ぼうと思っているんですけどね。幸瀬さんさえ良ければ御一緒しませんか?』

美智子『味噌カツですか!大好きです、私も。ですが、私も一緒して宜しいのですか?御邪魔にならないかしら?』

太一『美人と食べる味噌カツは味が格別だと、これは名古屋の古くからの伝統だそうですよ(笑)。それに・・・先輩からの御誘いですから、断りは無しだよ(笑)。幸瀬くん(笑)。』

美智子『もう(笑)。分かりました、そこまで仰って戴けるなんて光栄ですから。僭越(せんえつ)ながら御一緒させて戴きます。古久保先輩(笑)。』

意を決して云った軽口(かるぐち)が効果を良い意味で発揮し、美智子と打ち解ける事に成功した太一。実に御満悦(ごまんえつ)な状態だ。

太一『じゃあ、行きますか?幸瀬さん♪』

美智子『ええ、分かりました♪』

美智子も上機嫌そうに観え、益益気持が逸(はや)る太一。御互いバイクにまたがりエンジンをかけいざ出発!しようとした・・・・・・次の瞬間。

美智子『・・・・・・!!!・・・古久保さん、待って下さい・・・!』

太一『・・・!?幸瀬さん・・・?』

美智子『あそこを・・・・・・!』

美智子が指差す場所を観る太一、そこには暴走賊(ぼうそうぞく)とおぼしき風体の数十人の男達がサービスエリアの清掃従業員(せいそうじゅうぎょういん)の老人に対して凄い剣幕(けんまく)で恐喝している様子であった。

太一『あれは・・・!・・・恐らくカツアゲっぽいですね・・・。』

美智子『ええ・・・。それに恐らくでは無くカツアゲですね・・・。紛(まぎ)れも無く・・・!』

という美智子。ふと太一は美智子の顔を観てみると、先程迄の談笑(だんしょう)の際の少女の様な笑顔は既に消え去り、悪事を赦(ゆる)せない正義感の人物特有の厳しい表情に変わっていた。
更に声も喫茶店や先程迄の談笑中は声優の「根谷美智子(ねや みちこ)」の様な高く甘い感じの色気のある雰囲気の声の持主だったが、今は思い詰めた様な低い声で太一に話す美智子。

太一『それにしてもガラの悪そうな男達だな・・・。警察に連絡しましょう!』

と携帯電話を太一が取出そうとしたら・・・!

美智子『待って下さい。・・・なんとなくあの人達がおじいさんにクレームを云っている様に聞こえる気もしますので、今警察を呼ぶとややこしくなるのではないでしょうか?・・・・・・取り敢えずここは私が行ってみます。古久保さんはここで待ってて下さい。』

太一『行くって・・・・・・幸瀬さん!!』

太一に構わずバイクを押しながら歩いて連中に近付いて行く美智子。


ーサービスエリア駐車場内 カツアゲの現場ー


暴走賊アニキ『ゴルウああああああああああ!!!!!!!!!!ジジィ!!!!!テメー!よくもオレ様の麗(うるわ)しの特攻服のズボンに水ぶっ掛けやがったなあ!!!!!ゴルウあああああ!!!!!』

老人『ヒイイイ!!!!!も!も!もうしゃけございません・・・!・・・で、で、でもいきなり車の陰から出て来るとは思わなかったんですよう・・・。』

暴走賊1『なんだああああああ!!!!!アニキが悪いなんてぬかっしゃがんのかあ〜!!!???ヴォケェ!!!!!』

老人『ヒイイイ!!!!!!どうかお赦(ゆる)しを・・・・・・!』

暴走賊2「いいや〜〜!もう赦(ゆる)せね〜な♪テメ〜のよ〜なジジィはよ!♪』

暴走賊アニキ『おうよ!!こう云う老害(ろうがい)ヤローは・・・死刑だぜ!!!!!!!!!!』

か弱き老人を相手に益益(ますます)いきり立つ一方の暴走賊達。
すると・・・!

美智子『あの、失礼します。』

暴走賊アニキ『・・・!?あんだあ?テメ〜はあ??』

ついに美智子が介入し、訝(いぶか)しがる暴走賊達。

美智子『・・・何があったのかはまだ存じませんけど、そちらのおじいさん必死に謝っていますよね?それにあなた方今暴力を振るおうとしてましたよね?やり過ぎでは・・・!?』

暴走賊3『うっるせええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!このメスがあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!シャシャり出て来んじゃねえ!!!!!!!!!!』

駐車場中を震撼(しんかん)させんばかりにがなり倒す暴走賊の一人。だが美智子は手厳しい表情で眉(まゆ)一つ動かす事もなく、全く動揺した素振等微塵も無い。

美智子『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・悪いですけど、いくら怒鳴られようともウチは無抵抗な人に危害加えようとしはる人観過(みすご)す事出来しませんから・・・!そないな事・・・止めて下さい!』

暴走賊4『あんだテメ〜♪?急に大阪弁なんざ使い出しやがってヨオオオ!!♪ろくでなしブルースの前田太尊(まえだ たいそん)かオラアアア!』

暴走賊5『ってねぇちゃんよお〜♪よくみりゃあ顔、すんげえマブイじゃね〜〜か♪確か〜死刑台のエレベーターとか云う映画ん出てた「吉瀬」ってヤツみてえでよう〜〜♪んで赤っぽいテッカテカのピッチピチパッツパツのつなぎなんて着ちゃってよお〜〜誘ってんのかあ〜〜?♪フ〜ジ子ちゃんてか〜〜?♪ジャーーーハッハッハッハッ♪♪♪』

美智子『・・・・・・・・・・・・。』

歯を食い縛り相手を観据(みす)える美智子。そこへ!

太一『幸瀬さーーん!!!ハアハア!』

太一がバイクを押しながら小走りでやって来た。

美智子『古久保さん!何故(なぜ)来はったんです?ウチ待っててって云いませんでした!?』

太一『いや・・・どうしても心配で・・・!』

美智子『せ・・・せやけど・・・・・・。』

暴走賊共『お〜〜〜っと!!♪ルパンの登場らしいな〜♪不二子ちゃんを心配してよう〜〜♪♪』

美智子『・・・・・・!!・・・ええ加減にして下さい!そんなんとちゃいますし、侮辱(ぶじょく)するならウチだけにして下さい!この人は関係有りません!』

茶化しながら今度は太一に絡(から)もうとする暴走賊共を必死で諫(いさ)める美智子。だが、

暴走賊アニキ『まあ〜待てやおめ〜ら!!♪じゃあねえちゃんよう〜こうしねえか!?条件付きでこのジジィ赦(ゆる)してやってもイイぜ!♪こっちも麗(うるわ)しの特攻服台無しにされたんでよお〜!♪』

美智子『・・・・・・その条件とは?』

暴走賊アニキ『いや〜何、簡単なこった〜♪100万払うか、オレ様のオンナになるか、どっちか二者択一(にしゃたくいつ)で選んでくれっつー事よ!♪簡単で悪くねー事だろ!?♪特にオレ様のオンナんなりゃあ〜イイぜ〜〜!♪この自慢のムスコを毎日おめ〜のマンに叩っ込んでやっからよお〜!♪オレ様のんはと〜〜〜〜〜くに!!マグナム級だからよお〜〜キモチ良いぜ〜♪ヒィヒィ云えるゼェ〜〜!♪おめヤリマンなんだろ〜!?実は?♪すました顔してよお〜〜!!♪』

暴走賊達『ヒィャッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハアアア!!!!!!!!!!ヒューヒューヒュー!!!!!!!!!!いいぜ!!!アニキーーー!!!漢(おとこ)がちげえなあ〜〜!!!♪』

美智子『・・・・・・・・・!』

あからさまなる下品な要求を突き付ける暴走賊の首領格。盛り上がる子分達。

太一『ちょ、お、おい(焦)!お前達!いい加減にしないか・・・(焦)!』

暴走賊6『あんだあ!!!!!!!!!!ゴルウああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!やんのか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ルパンよお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

太一『あっ・・・(怖)い、い、いや・・・(怖)、・・・そのう・・・(怖)。』

気圧(けお)され沈黙する太一。まあ無理も無い。

暴走賊アニキ『ん〜で!、どうなんだあ!?ねえちゃん!?♪』

美智子『申し訳無いですけど・・・!そないな要求・・・御断りします!』

低く響く声で毅然と断った美智子。
その顔は太一と談笑中の吉瀬美智子宜(よろ)しくやや目尻が緩やかに下がった品のある涼しげで優しげな瞳ではなく、切れ味抜群の日本刀の如き鋭利につり上がった迫力満点の眼つきに変っており、それを観た太一は美智子の表情に戦慄(せんりつ)を奔(はし)らせる。

太一「・・・・・・・・・!!!・・・幸瀬さん・・・・・・!!』

暴走賊アニキ『ほう・・・!テメェ・・・!』

暴走賊1『オラア!!!!!!!!!!アマあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あんだあその眼はああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
立場分かってんのかあ!!!!!!!!!!ヴォケェがあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

怒り狂いながら美智子に殴り掛る暴走賊!だが次の瞬間!


暴走賊1『うっぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

暴走賊が左手の拳を美智子の顔面目掛けて突出した瞬間、美智子は表情一つ変えず右手で暴走賊の拳を&amp;#25681;(つか)み強く握り締めた。
武闘家として極限まで鍛え尽(つく)され、両手の握力300kg前後ある美智子に拳を手加減されながらも強く握り締められ激しい絶叫を響かせる暴走賊。
激しい激痛にクシャクシャに醜く歪(ゆが)み、唾(つば)かよだれのしずくを飛び散らせながらのたうち廻(まわ)る暴走賊の顔を、鋭い眼と厳しい表情で観つめる美智子。
だが日本刀の如き鋭利な瞳は血奔(ちばし)ってなく、適度な水分で潤っていて鋭利な中にも強い慈愛(じあい)も感じさせ、あわれな暴走賊に同情を感じている様にも観える。
そして静かに瞳を閉じながら口を開け・・・

美智子『・・・参りましたか?』

暴走賊1『うっぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
まっ参ったあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
参りましたあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

放るように&amp;#25681;んでいた暴走賊の腕を放す美智子。よろめきながら暴走賊の首領に激突し、首領はその子分を横へ突き飛ばす様に払い除け美智子に云い放つ。

暴走賊アニキ『ヘッ、やるじゃねーか!ねえちゃんよお・・・!こらあ詰(つま)り・・・オレ様等ととことんやり合おうって意味だなあ!!10人以上もいるっつーのによお!!!♪』

美智子『・・・本当はこう云う荒事(あらごと)はした無かったですんやけど、あなた方がどうしても話し合いで納得してくれはらへん様ですから・・・!ウチが責任持って相手になります!その代わり・・・後悔しても遅いですよ!』

バイクを傍(そば)に停車させ、こう静かに低い声で云い放った美智子。ライダースーツを艶光りさせ、左手を腰にあてながら仁王立(におうだ)ちするその姿は身長165cmの長身の体躯(たいく)が更に大きく映る程に巨大な威圧感を暴走賊達にあたえ始めていた。

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