小説『女戦士は穏健派』
作者:剣聖()

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第9話【偽りの正義の勇者‥!その悪夢に憑かれた無垢な腕白‥!】



源太郎【‥オレがかつて居た相撲部屋の大関(おおぜき)[千畳山(せんじょうやま)]ってヤツをよぉ‥!!!!!】

‥まさしく風雲急(ふううんきゅう)を告げると申しましょうか!
突然の源太郎による過去の「殺人宣言」を聞き、いちように愕(おどろ)きを隠せない太一と美智子‥!
それにしても、現役時代の源太郎がいた相撲部屋の大関力士「千畳山(せんじょうやま)」とはどう云う人物なのでしょうか?

美智子【(驚)‥‥その四股名(しこな)の力士、ウチ聞いた事あるわよ(驚)。‥確か4年前、稽古(けいこ)中の事故で亡(な)くなりはったって‥(驚)!】

太一【ぼくも[千畳山]関なら知ってますよ!と云ってもぼく自身相撲はさほど観ないから委(くわ)しくはないですけど‥。
でも千畳山関って[23時間テレビ]を始めとしたチャリティー番組やイベントなんかの常連で、紛争地域や被災地域などに自ら出向いて、私財を用いて毎度手厚い援助を惜しまない人物で有名な人ですよ!確か!】

太一【ぼくも彼の慈善活動を含めた相撲以外の活動に非常に感動を憶えちゃって、だから尊敬してる人物のひとりなんですよ。
それ故に突然の事故死が惜しまれる人だったんだよなあ‥。】

美智子【ええ‥ウチも千畳山さんについては粗方(あらかた)存じてます。もっとも、メディアを通しての情報ですけど‥。
でも以前テレビで観た、アフリカの難民キャンプで自分は不眠不休で材料の[ウサギ]とか[鹿]とか狩りしたり、昼夜問わずサバンナや雑木林(ぞうきばやし)かき分けて木の実とかを獲ってきて、それで作った自家製のちゃんこ鍋を難民さん全員に洩れなく振る舞ったりしはったりとか、
現地で[大相撲の定例巡業(ていれいじゅんぎょう)]とか云う前例の無い事も相撲協会に提案してキッチリ決めはって、そのうえ、興行収入は凡(すべ)て現地に寄進(きしん)しはったりした事あった筈です。】

美智子【あと、確か8年前に南米で起こった[テロリストによる日本人邦人、旅行者集団拉致事件]と云うテロがありましたけど、当時の首相やった[小橋(こばし)首相]や与党の[痴民党(ちみんとう)]の政治家さん達は
[危険区域と指定されているにも拘(かかわ)らず旅行した者達や危険区域からの帰還勧告(きかんかんこく)に応じなかった企業社員に対して、さすがに日本國政府も全幅(ぜんぷく)の責任は持ちかねる]
って意味の事云いはって、事実上観殺しにしようとした事件やった思います。
その時も[眠愚党(みんぐとう)]の野澤党首(のざわとうしゅ)の日本人人質救済の呼び掛けに有志として先頭に立って応じはった著名人が千畳山さんやって、そして野澤党首と有志代表で千畳山さんのふたりがテロ組織のリーダーと会談した結果、人質全員無事に解放して救って日本に帰國させれたって云う英断なさった人やと存じてます。】

太一【ええ!!ええ!!ぼくもあの事件ハッキリと憶えてますよ美智子さん!
首相でも無理だとさじ投げて観殺しにしようとした人質を、野澤さんとふたりで危険顧(かえりみ)ず救いに行ったって事でふたり共人質連れて日本帰ってきた時、もう英雄の凱旋帰國状態(がいせんきこくじょうたい)になってましたよね!?】

太一【まあ~野澤さんの方は明らかに政治パフォーマンス観え観えだったと思うけど?実際、それから半年後の総選挙で余勢を駈った眠愚党があの事件以来國民敵に廻(ま)わした痴民党に圧倒的過半数で勝利して与党から引きずり降ろして、今日まで眠愚党が政権与党で来ちゃってるんですからね。
でも千畳山さんの方はあの時、秋場所1ヶ月前と云う大事な時期にも拘らず人質救いにいったんだから、純粋にすごい正義感だなあと思いましたよ。】

美智子【ちなみにウチ‥人質事件の時、救済の有志に応募したんです。
[眠愚党]がテレビでフリーダイヤル載せて一般有志募集してはったから。努力すれば救える命やのに、しかも知らんと偶偶(たまたま)旅行行った人や仕事があって已(や)むおえず帰れんかった人を観殺しやなんて非道(ひど)すぎる思いましたさかい、ウチの能力(ちから)役に立てる事できへんやろかって‥。それで電話かけて、履歴書送って、結果は‥‥不合格やったですけど‥。
でも、ほんま今でもコワイ事件やった思います‥。もし!千畳山さんや野澤党首の働きがなかったらと思うと‥‥。】

ちなみに僭越ながら少し解説を♪
上に出てきました「痴民党」とは
「痴遊民死党(ちゆうみんしとう)」と云う元与党現野党政党名の略称です♪♪
「小橋首相←正確には元首相」とは
「小橋丈万次郎(こばし ジョンまんじろう)」元首相を指します♪♪
呆気仲屁増(ぼけなか へいぞう)元財務大臣と共に希代の迷改革♪
「聖域だらけの構造改革♪♪♪♪♪♪」
と云う異業(いぎょう)をなし遂げられた大先生の事です♪♪♪
「眠愚党の野澤党首」とは「野澤偽恥朗(のざわ ぎちろう)」副首相の事です♪♪

何とお!
千畳山の噂や人となりをかるく聞いてみると、非常に正義感の強い好人物の印象を強く持ってしまいますねぇ。
実際故人は生前、大学相撲から角界に入界し、享年40才までの18年間の現役生活を経験し、幾度も横綱昇進のチャンスがあった様だが、ここいちばんで人の良さが災いし、大関停まりになっているとも云われる。
しかし、その誠実さから色色な人物に支持され、目標とされていた力士の様ですね故人は。
となれば何故源太郎こと「鬼岩海」は彼を殺す事になったのか‥気になりますね。

源太郎【‥‥‥‥。】

美智子【‥その千畳山さんを、源太郎くんが殺した云わはるの‥!?
もっとも、ウチは角界のことまでは流石に知らんからあなたを責める事なんてできへんけど‥‥!?】

太一【う~~ん‥た、確かにぼくもシロウトだからキミ達おすもうさん同士の内情までは計り知れないよね‥。
でも、ぼくが知る限りは千畳山さんって殺される様な落ち度がある様には思えないけどなぁ?】

源太郎【‥‥落ち度のねぇ正義感の漢(オトコ)か(苦笑)‥‥たしかに知らねぇどシロウトが観ればそう思うわな(苦笑)‥。】

源太郎【オレだって‥‥‥そう思ってた‥‥‥(超悔)!!!!】

美智子【‥何か云い知れない深い訳がありそうやわね(心配)?
‥あなたが‥話すことに抵抗なければで構へんのよ(心配)?
もし、ウチでよければ聞いてもええ‥(心配)?】

源太郎は妙な喪失感のような物を纏い千畳山の事を語りだした刹那(せつな)、無念さをむき出しにし急に悔しさを露にしだす。
これを心配に感じた美智子は、まるでカウンセリングをするかの様に源太郎に訪(と)いかける。
すると!

源太郎(千畳山あ‥‥!)


ー源太郎の記憶の中‥ー


ここは源太郎の記憶の奥に位置する「深層心理」の中。
どうやら相撲部屋の稽古場のようだ‥。
少年時代の源太郎と千畳山らしき力士と部屋の親方らしき人物が居る。

千畳山【おう!今度入った新入りはキミか!?少年!!】

源太郎少年【ハイ!!!今日からこちらの部屋にご厄介になります[泰山源太郎]って云います!!!!!じぶん!!大関みたく強くてでっかい漢(オトコ)になりたくてやって参りました!!!!!
宜しくお願いします!!!!!!】

千畳山【中中元気がいいな!!!良い事だ!!観所有りだぞ!!!】

源太郎少年【ありがとうございますぅぅ!!!!!!!!!!】

滓野郎賀乃親方(かすやろうがのおやかた)【ヒュイッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒイイ~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
どうでうぇ~千畳よぉ~~♪どでっけぇ身体ぁぁと云い根ジョ(根性の事)いっちまってそ~なツラと云いいっぱつ♪期待でけそうなギュアキュイ(←ガキと親方本人は云ってるつもり)じゃろう?ヒュイッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒイイ~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪】

どうやら源太郎がかつて居た「滓野郎賀乃部屋(かすやろうがのべや)」に当時の源太郎少年が入門して来た時の様子のようだ。

滓野郎賀乃親方【むうぁぁ~~ぶぉぉじゅぅぅ(ぼうず‥と云ってるようだ)~~!!!!!たまあ~いれなおして励めやぁ~ヒュイッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒイイ~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪】

千畳山【そうだな!少年!
オレが必ず強くしてやるから、しっかりついてこいよ!!】

源太郎少年【‥ご!ごっちゃんです(感動)!!!!!】


ー更に記憶は移りかわり‥ー


<源太郎の十両昇進の掛かったとある場所>


ーどっさぁ!!!!!ー


幕下力士【のぁぁっ!!!】

行司【泰山んんん~!!!】

源太郎(よし!!!)

と心で思う力士時代の源太郎。

場内アナウンス【ただいまの~決まり手は~[下手投げ]~[下手投げ]で泰山の勝ち~。】


<滓野郎賀乃部屋 親方の間>


滓野郎賀乃親方【源太郎よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪
じゅちゅに(実に)あっぱれぇ~じゃねぇかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪
さしゅがはワシイの観込んだ漢じゃわいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪】

千畳山【ああ!全くだとも!!幕下3場所連続で全勝優勝ですんなり十両昇進決めちまった訳だからなあ~!!たいしたヤツだぜ!末怖ろしくってかなわん(笑)!】

源太郎【ごっちゃんです!!!でもじぶん、まだまだです!!!
それと‥大関も14勝1敗での幕内優勝!おめでとうございます!!!】

千畳山【いやいやなんの!ここ何場所か負けが込んでてな‥流石に今場所は優勝せんと、大関陥落にもなり兼ねん状態だったからな!ホッとしたぞ!!】

千畳山【それとだ‥来場所からおまえも[関取(せきとり)]だからな!2名ほど付人が付くぞ!更には親方から新しい[四股名(しこな)]を戴ける事になった!
よかったな!泰山!】

源太郎【!!‥マ‥マジっすか!!?】

千畳山【ああ!ほんとうだ!
関取になっても苗字(みょうじ)の[泰山]ではカッコつかんだろう?
では‥親方!】

滓野郎賀乃親方【[鬼岩海]じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪】

千畳山【だそうだ!イイ名だろう?
鬼の如き強強しく!岩の如き頑強に!そして‥海の如き広広と‥!
どうだ!?気に入ったか!?】

源太郎【も!もちろんっすよ!!!ごっちゃんです!!!】

千畳山【そいつはよかった!
‥じゃあ鬼岩海♪もうちゃんこも食った事だし、今日はゆっくり休め!】

源太郎【ごっちゃんです!!では!!!】


ーぱたん!(←源太郎がふすまを閉めた音)ー


滓野郎賀乃親方【‥‥行ったか?
フン!チョット煽(おだ)ててやったくれえでまい上がってくれやがる(悪笑)。実に遣いやすいガキだぜぇ~!
ヴァカとハサミは何とやらだなぁ(悪笑)】

千畳山【ほんとうにね(悪笑)‥これからも源太郎には我等の栄光の為に役に立ってもらわんといけませんな(悪笑)。】

千畳山(‥フッ‥てめぇも遣われてる身の上なんだよ!老害!オレの野心をなす為にはてめぇの角界での名前は不可欠なモンだからなあ(嘲笑)。)

‥この親方、普段の珍妙な雰囲気は欺いてる一環だった訳か‥!
ケチな悪党らしい「さる知恵」だな‥(呆)。
それにしても千畳山‥コイツの悪どさ‥まるで時代劇の悪徳商人を観てる気分だ!


ー2週間後の夜ー


鬼岩海の付人1、2【関取ぃ~!!!今日はお疲れさんです!!!】

鬼岩海(源太郎)【おう!!お疲れさん!!】

鬼岩海(オレの後援会も出来て、今日初めて[お呼ばれ]ってヤツにあずかれたぜ!オレの相撲人生もついに波に乗ったな~!)

と思う鬼岩海こと源太郎。
すると。

鬼岩海(‥!アレ!?あんな所に大関が?
‥いっしょにいる男はいったい誰だ??)

気づかれない様隠れながら近寄る源太郎。

千畳山【‥いやぁ~小杉さん(ゴマ)!先場所はすんません(ゴマ)。[歩歩害害(ほほがいがい)]のヤツと[語路語路(ごろごろ)親方]のふたりの八百(やお)の説得に手ぇ貸して下さって。
ホントアイツら石頭で‥歩歩害害は横審から引退勧告までつき付けられかけるぐれぇヤバかったてぇのに、ズルはいけねぇなんてぬかしやがって‥!
まったくこれだからヴァカは‥(ゴマ)!ははは(ゴマ)。】

小杉【その馬鹿にも大切な[家族]と云う物は存在する‥!
大抵の場合
[家族に累が及ぶ]
と警告すれば納得せざる負えないと感じる物なんですよ。】

千畳山【ははっ!凄みあるお言葉だ(ゴマ)。さすがは小杉さん!】

小杉【まあ~それはともかく‥キミの部屋に活きのいい若者がいるそうですね?】

千畳山【そうなんです(ゴマ)![泰山源太郎]って云いましてね、四股名は[鬼岩海]ってんですが‥。
中中希(まれ)に観る強さしてましてね、その反面オツムが空っぽと来てますから、便利な事この上なくってね(ゴマ)。】

小杉【ほう‥。】

千畳山【近近(ちかぢか)小杉さんにもご紹介しますよ(ゴマ)!
それと‥‥例の23時間テレビの慈善活動のネタ!感動的なものをお願いしますよ(ゴマ)!】

小杉【‥それならもう考えてあります。
キミがまだ貧困から立ち直れない[アフリカのエチオピア]に出向いて、定例巡業を行なわせ、収益をエチオピアに寄進する‥。その過程原住民との触れあいの一環で、現地の食材でちゃんこ鍋でも創ってあげるといい‥。
大衆はそう云う映像に決まって感動を禁じ得んものですからね。】

千畳山【それはすばらしい(ゴマ)!協会は最早オレの傀儡(かいらい)ですから、定例巡業ひとつ増やすくらい朝メシ前ですよ(ゴマ)!
それに‥さっき云いました源太郎ね、美味(うま)いちゃんこ創るんですよ。早速役に立ってもらうか!ヤツに(笑)。】

内容は‥くされヤローだった千畳山が「ゴマすりヤロー」に変わっている様だ‥けっ!
その相手は‥どうやら小杉と名乗る男にらしいが‥?
風貌は‥パリッとスーツを着こなす痩せ型の紳士と云った感じだ。メガネが様になって垢抜(あかぬ)けた知的でニヒルな印象を感じる。何となく俳優の「大杉漣」に似てる気もするような。
何者か‥?

鬼岩海(‥先場所の大関の優勝は八百長‥!?オレがバカだから遣いやすい!?
それに常に毅然とした大関がなんであんなにゴマすってんだ‥!?)

と思った源太郎!
その瞬間、なぜか千畳山の元へ掛けだして行った!

鬼岩海【大関ぃ!!!!!】

千畳山【(驚)!!!??お!!おまえ‥源太郎!!!】

小杉【?】

鬼岩海【先場所の八百長っていったい何なんですか!!?それにこのひとと慈善活動の事話してましたが、あれって常に大関の善意でやってたんじゃあないんすか!!?
それに‥オレがバカって‥どう云う意味っすか!!!!】

千畳山【おまえ‥聞いていやがったのか‥!!?】

小杉【‥千畳山くん、彼がさっき云ってた[源太郎くん]かね?】

千畳山【そ‥そうです!】

小杉【フッ‥青年。世の中にはね、知りすぎると良くない事が往往(おうおう)にしてあるんだよ‥。
相撲を続けたかったら‥‥なにも云わず我我に協力しなさい。
分かったね!】

メガネを外し、怜悧な笑みを浮かべて小杉が源太郎に近寄ってくる‥!


鬼岩海【ウワアアアアアアアア‥!!!!!!!!!!



ー4月2日土曜日 名古屋市某所空地ー



源太郎(千畳山ぁぁ‥‥!!!チクショウ‥!!!!!)

心の中で過去の千畳山との出来事を回想し、悔しさを込める源太郎。
すると

美智子【源太郎くん‥‥(心配)?】

美智子【‥源太郎くん?気分でも悪なったの‥?
‥取りあえずバトル中断してひと休みしよっか?よかったらウチ、ジュースでも買って来てあげるから、欲しいのあったら云うてちょうだい(微笑)。
しんどかったら[頭痛薬]と[正露丸(せいろがん)]やったら今持ってるから、あげるわよ?どない?】

源太郎【‥いらねぇよ!別に気分も悪くなっちゃねぇし、心配する必要なんざねぇぜ‥!
ただよ‥‥昔をちょいと思い出しちまってただけのこった。】

一見放心状態気味(いっけんほうしんじょうたいぎみ)に陥(おちい)っていた源太郎を心配し、全幅で気づかってくれる美智子に照れながらつっぱった態度をとる源太郎。
ちなみに「正露丸」とは、皆さまも良くご存知の腹痛薬の名称です。

源太郎【千畳山‥(悔怒)!!あいつだけは‥どうしてもガマンならなかったんだ(悔怒)!!!】

美智子【‥源太郎くん。】

源太郎【‥千畳山のヤロー(悔怒)!奴ぁ‥‥新弟子とか十両以下の下っ端の弟弟子を稽古と称してリンチしやがる常習犯だったのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ(大悔怒)!!!!!!!!!!
それも親方とグルんなりやがってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ(大悔怒)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!】

しばし源太郎は血走った眼を潤ませ、天を仰ぎながら咆哮(ほうこう)する様に告白した。

美智子【!!?あ‥あの紳士的な千畳山さんが(驚愕)‥‥それは‥ホ!ホンマやの(驚愕)!!??源太郎くん(驚愕)!!?】

太一【!!??‥す‥相撲の世界って良く上級力士(じょうきゅうりきし)による下級力士(かきゅうりきし)への熾烈(しれつ)な荒行や体罰が度度(たびたび)問題になったりするのはニュースなんかで聞くけど‥(驚愕)。
ま‥まさかあの千畳山さんが‥(驚愕)!しかも親方の様な人まで加担(かたん)していたなんて(驚愕)‥キミ、本当にそれは間違いないの!?】

源太郎【まったくよ‥‥‥あんなのワルイ夢であってくれりゃぁどんなけ嬉しいかよ‥!!オレだって‥!!
でもよ!ヤローはオレにゃぁはっきり云いやがった!!
[オレにとって相撲はビッグになる為の足がかりに過ぎない。ビッグネームになって相撲引退してからがオレの人生の真髄が始まるんだ]
てな!!!!もとい、オレなんざヤツにとっちゃぁ[人畜無害などアホ]同然だから、こんな事打ち明けても痛くもかゆくもねぇから云ったんだろうなぁ‥今となっちゃぁ!!】

太一【‥そのセリフって、いったいどう云う意味の事なんだろ‥?委しくもっと聞いていたら教えてくれないか?キミ?】

美智子【まぁ、古久保さん。逸(はや)る気持ちは分からんでもありまへんが、源太郎くんまで焦らせる様に聞き詰めたら源太郎くん気の毒ですさかい‥。
落ち着いてゆっくり聞いたげましょう(微笑)。】

太一【すみません‥幸瀬さん(謝)。】

美智子【いえいえ(微笑)。】

太一にとっても力士としてではなく人間性で尊敬するひとりに挙げる千畳山の知られざる部分への聴取と云う事で気づかずに逸り立っていた所を、美智子に慈悲深くなだめられ反省をする太一。

美智子【話せる部分までで構へんからね、源太郎くん(微笑)。他に聞いたり知ってる事あったら、ウチ達でよかったら打ち明けてくれへん?その方があなたも楽になれるんちゃうかって思うから。
ね?源太郎くん(微笑)。】

源太郎【‥‥‥‥千畳山、アイツな‥現役時代の大半を八百長(やおちょう)に費やしてやがったんだ!
自分自身の必要勝ち星や優勝獲得にはもちろん事、優勝遠ざかって横審(横綱審議委員会の意)から資質問われだした横綱や協会から観込まれた新入幕のホープなんかに、部屋を通じて交渉させて優勝賞金とか懸賞金の3割ってのを相場に勝ち星提供して、手広くビジネスにしていやがった‥!!!!
つまり、ピンチな横綱やこれから角界の顔になる若いのにワザと負けて恩売って、自分のピンチの時はそいつらに勝ち星工面(くめん)して助けてもらうって云う‥‥力士としても!闘士としても!いや‥人間としても腐りきってやがる様な汚ったねぇビジネスをなぁ!!!!】

美智子【‥そんな‥!!??】

太一【‥そんな観下げ果てた事を‥千畳山さんが‥‥!!?
‥‥で!でも!チョ!チョット待って!そんな大大的(だいだいてき)な八百長ビジネスを千畳山さんがしていたとして、相撲協会は気づいて注意や処分を下そうとはしなかったの!!?】

源太郎【‥千畳山の後ろにゃぁ[極道連合会(ごくどうれんごうかい)]って云うヤクザが着いていやがった!コイツは角界にいた事あるヤツなら誰しも知ってる暗黙の了解の事さ‥。
だから協会もヤロー問いただすって事は、極道連合会を敵に廻わすって事になるのが怖くって出来なかったって事さ‥。】

源太郎【しかもその極道連合会の顔役って云われてて、実質上の日本最強のヤクザって噂される極道連合の代貸し
[小杉漣輔(こすぎ れんすけ)]
ってヤツと兄弟分の契りまで結んでいやがるんだ!
その証拠にヤツの後援会の会長やタニマチの代表者に小杉が名前連ねてやがったからよ!
この小杉の存在と八百長ビジネスのお蔭で角界は最早千畳山が掌握してた様なモンだった‥!】

太一【そんな‥希代(きだい)の正義漢[千畳山]の正体が、[偽善]と[矛盾(むじゅん)]で私腹を肥やす悪党だったなんて‥!!】

美智子【‥非道(ひど)い‥非道いわ‥!!】

脚を揃えた美しい立ち姿勢で口を両掌で覆いながら絶句する美智子と血の気の失せたような顔をして同じく絶句する太一。
ここで広域指定暴力団「極道連合会」とそこの代貸し「小杉漣輔(こすぎ れんすけ)」なる人物の説明を軽く致しましょう。

極道連合会(ごくどうれんごうかい):1998年に関東最大の暴力団「芋食会(いもくいかい)」と関西最大の暴力団「蝦蟇愚痴組(がまぐちぐみ)」が合併し、誕生した日本最大の指定暴力団です。
小杉漣輔(こすぎ れんすけ):現在45才。出身地及び少年時代と十代時代の経歴は不詳。最終学歴ハーバード大大学院卒。在学中MBA、弁護士、教員、内科医資格、NASA一級研究者等の多数の資格免許を取得し、銃火器のスペシャリストでもあり、クラブマガの有段者と云う猛者で、闘士としても活動をしている「文武両道」を地で行く秀才肌なエリートやくざである。

美智子【ほな‥源太郎くん‥!例の[アフリカの大相撲定例巡業]の話も協会が千畳山さんに対して許可した云うんは、そう云うのが大きく拘ってるって事やのね‥!?】

源太郎【もちろんさ!断りやがったら、八百長を協会も黙認してた事や、そんで一斉にクビんなった角界の重役どもも社会復帰できねぇ様小杉に働きかけるってでも云って嚇(おど)しやがったにちがいねぇぜ!千畳山めぇ!!
残念だったな‥アンタ等がご存知の美談なんざじゃなくてよ‥。】

太一【じゃぁ‥人質事件なんかも‥!?】

源太郎【ワリイけどオレは馬鹿ヤローだから政治の事なんざ分かんねえけどよ‥。
小ざかしい千畳山のやる事だから、蔭に小杉が居んのはまちがいねぇだろよ。野澤にもそんでクチ聞いてもらったんだろ‥?どうせ。】

源太郎【それにヤローこうも云いやがったぁ!!!
[オレがお前ら下っ端のゴミどもを粛清体罰(しゅくせいたいばつ)くだしてんのは、危険を排除する意味もあるが、神になれる瞬間を味わう為だ!ってのもある。自らの意思次第でゴミとは云え、生命を好き勝手に玩(もてあそ)べるなんてのは、優等生に疲れてきたオレにとっては最高の気分転換だ!]
ともなぁ!!!!!!!!!!
その場には親方はもちろん小杉も居やがった!!!!!!!!!!
そしてヤローオレに云いやがった!!
[何ならオレが今、云った事警察に云ってもいいぞ。連中がお前のようなチンピラ上がりの云う事をまともに相手してくれればのハナシだが?]
てな!!!!!!!!!!クソったれがあ!!!!!!!!!!】

源太郎【そしてオレは‥‥4年前の夏巡業のすぐ後の部屋稽古の時、千畳山に対してさっきアンタにも喰らわそうとして完全に防(ふせ)がれた[突っ張り十連]をヤツの胸板めがけてうち込んでやったんだ‥!
元元ヤロー、八百長に頼んねぇと相撲取りとしても半端な強さしかねぇヤローだったから、そん時まだ誰にも観せてねぇ十八番(おはこ)だったこの技をガチでヤローに打ち込みゃぁイチコロだってことは分かってたしさ。
案の定急性心臓発作(きゅうせいしんぞうほっさ)で手後れだったさ‥。無論稽古中の事故って事で片づけられて、オレは3日後に協会から[廃業処分]を下されて角界をお払箱になったわけさ。モチ未練なんざコレっぽっちもねぇけどさ‥‥‥んで、現在に到(いた)ってる。】

太一【‥‥‥くっ!!!!!
なんて‥下劣な‥下劣漢(げれつかん)なんだ‥!!!!!
千畳山め‥!!!!!】

美智子【‥‥‥。
‥‥‥千畳山さん‥非道い人や‥!!!
‥赦せん人や‥‥!!!
そして同時に‥‥かわいそうな人や‥。】

太一【かわいそう‥??なぜです?幸瀬さん?】

美智子【千畳山さん自身にどう云う経緯があってそないな性格の人になったかは分かりまへんが‥病的な功名心(こうみょうしん)にとり憑かれて、結果的に人間の温かみに余りふれる事なく40才と云う若さで亡くなりはった‥。
ウチにはかわいそうに思えてなりません‥。】

なんと‥!!
「角界の正義漢」「現代の勇者」と譽(ほま)れられた男、千畳山の偉業は虚構の産物だった様だ!
そしてその正体は‥詐欺師(さぎし)と云っても過言ではない下劣漢であった!
あまりに唐突且つ衝撃的な事実に美智子も太一も途惑(とまど)いを隠せない。

美智子【‥‥ウチ、あなたに謝らんとあかんわね‥。
こないな殺生(せっしょう)なめに遇(お)うて来て、傷背負うて生きてきた云うのに
[屈辱や挫折を味わった事ない人]やなんて‥!ゴメンなさいね‥源太郎くん。心無いウチの短慮、どうか赦して下さいね‥!】

源太郎【ア‥アンタがなんで謝んだよ‥。オレが舎弟いたぶってアンタがキレちまったのは人として当然の成り行きだろ?気に病む必要ねぇじゃねぇか。】

太一【うん‥そうだね。でも、ぼくからもお願いするよ。幸瀬さんのお詫びの気持ち‥どうか受け取ってあげて。】

美智子【古久保さん‥。】

源太郎【‥アンタら‥‥。】

美智子は自身の失言を源太郎にわびる。太一にも後押しをされながら‥。
美智子自身清廉で篤(あつ)い真心を持つが故にケジメを付けずにはいられなかったのだ。
源太郎は途惑いつつも美智子のケジメを受け取った。

美智子【‥さて!随分辛気(しんき)くさくなってしもた‥♪
源太郎くん(微笑)!バトルの途中やったから続き始めよか(微笑)?おたがい禊(みそぎ)終えてスッキリした訳やし、第2ラウンド再開やで(微笑)!!
ウチを殺してまうつもりでかかって来て構へんから、持てる凡てを観せてみて(微笑)!!源太郎くん!!!】

源太郎【‥かく云うオレもあん時は千畳山の表面(おもてづら)に魅(ひ)かれて角界に入ったクチなんだがなあ‥‥‥(淋)。
‥‥ウッ‥(泪)!
ウウウッ(泪)‥ウウ‥‥(泪)。
ウワアアアアアアアアアア(号泣)!!!!!!!!!!】

美智子【源太郎くん‥(心配)!!?】

急に嗚咽(おえつ)を洩(も)らし、泣きだした源太郎。
恐らく、社会との拘わりや人の情と云う物にこれまで背を向け生きてきた源太郎‥美智子の偽りなき真心と慈愛に触れ、凍てつく心が鎔(と)かされたが故の泪(なみだ)か‥?
それとも、相撲や挌闘技に未練は尽きぬのに未練無しと云い放った事への呵責(かしゃく)か‥?

美智子【‥源太郎くん(心配)。】

そう云うと美智子はゆっくりと歩いて源太郎のそばへやってくる。

源太郎【‥‥(号泣)?】

美智子【‥辛いのね‥源太郎くん。分かってる‥ウチは源太郎くんの傷みは染み入る程によく分かる‥。
今はもう‥泣いてええのよ。なにも云わんでええし、なにも思い出さんでええから‥‥。
ウチの中で好きなだけ泣いてちょうだい‥‥!】

太一【‥幸瀬さん‥‥。】

美智子はそう云うと源太郎を強く抱きしめた‥!
ラバーのライダースーツに包まれた美智子の胸の中で幼児(おさなご)の様に泣きじゃくる源太郎‥!
美智子は自らの眼を薄っすらと潤ませながら源太郎を観つめている‥!
そんなふたりの様子を太一も安堵と同情を感じ眺めている‥!

すると‥


ーとん‥!ー


源太郎は自らを包み込む様に抱きしめる美智子の肩を、そっと‥軽く‥突いてみせた‥!
源太郎に押され、抱きしめた手を離し、1~2歩程度後ろへ下がってしまった美智子‥!


美智子【‥‥源太郎くん‥(心配)?】

源太郎【‥‥‥(泪)。
‥キモチだけ‥受け取っておくぜ‥(泪)。
仮にも‥アンタとオレは闘う相手同士なんだからよ‥(苦笑)。
‥すまねぇな。】

美智子【ええのよ、源太郎くん‥(微笑)。あやまる必要なんか‥(微笑)。
それにね、もうウチと源太郎くんは闘いあう相手と云うか、互いに強くなる為に組み手して切磋琢磨(せっさたくま)しあう仲間やないかしら(微笑)!?】

泪を拭い、苦笑いして照れながら美智子の抱擁(ほうよう)を途中で拒否した事を美智子にわびる源太郎。
互いは未だ闘う相手同士‥それは毅然とした闘士としてのこだわりを持つ源太郎らしさ故の悪気なき行動である。
だが、美智子は源太郎の「毅然な気風」を更に大きく上まわる「受容の気風」をもって更に「仲間」と云う言葉を贈り、源太郎の思いに見事応えた。

源太郎【‥‥へっ‥(苦笑)!
なぁアンタ‥まだ名前聞いて無かったな?教えてくれないか‥?】

美智子【ウフフフ♪そんな名前ぐらいお安いご用で教えますよって♪緊張せんとって下さい(微笑)。と云いますかウチも最初に名乗っておくのが礼儀でしたのに‥すみません(微笑謝)。】

美智子【ウチ、[幸瀬美智子]と申します(微笑)♪字は幸福の[幸]に瀬戸内海の[瀬]美智子は[美]に[智]に子どもの[子]と書きます(微笑)♪
住所は[大阪府の堺市北区在住]です(微笑)♪
どうぞ、よろしゅうお願いします(微笑)♪】

太一【ぼ、ぼくもじゃぁついでに‥!
ぼくは[古久保太一]って云うんだ。[古いと云う字に久保に太いの太に漢字の一]って書くんだよ♪以後よろしくね、泰山くん!】

源太郎【‥プッ!
ブワーーーーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ(大爆笑)!!!!!!!!!!
なんか妙にスッキリしちまって不思議な気分だぜぇ(満悦)!!!!!!!!!!
今までのオレは何だったんだろうなぁぁ~~!!!!!!!!!!
しっかし‥アンタらって今のご時世珍しいくれぇ良いヤツだなぁ~~まったくよ(満悦)!!!】

太一【キミ‥(悦)。】

美智子【源太郎くん‥‥よかった(安堵)。】

源太郎に対して快く名乗りあげる美智子と太一。
その後、見事なまでにふっきれた源太郎は、先程までとは打って変わった様なさわやかさを醸(かも)し出し、本来の豪放磊落(ごうほうらいらく)ブリを取り戻し、きっぷ良い豪傑漢を披露する。
そして‥!

源太郎【どすこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!】


ードッズウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ー


今一度たぎる気合いを響かせ四股を踏みなおし、闘争体勢を整える源太郎!
先程にも増して響きわたっている!!

太一【ヒイイッ(怖)!!!!!】

太一(ち!近くで観るとよけいに迫力があり過ぎるよ(怖)!ホントに(怖)!]

美智子[源太郎くんの四股‥最初の時とは何十倍も迫力も躍動感(やくどうかん)も違ごうてる(嬉)♪
源太郎くんの真髄がもうすぐ観れる(嬉)♪愉しみや(嬉)♪♪)

と心で思い、源太郎の四股に恐怖を感じる太一と、ワクワクしてきて堪(たま)らない美智子(笑)。

源太郎【[鬼岩海]改め[闘士!泰山源太郎]完全復活じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
幸瀬さんよぉ!!!!!凡てアンタのお蔭だからよぉ!
オレの真の全力を披露する事んよって礼として酬(むく)いるぜ!!
観届けてくれ!!!!!】

美智子【ありがとう源太郎くん‥(嬉)!
ほな!ウチも!源太郎くんの真髄を正面から受け止める事で応えます!】

源太郎は相撲の立ち合いの構えをとり、美智子はN・S(ニュートラル・スタンス)の構えをとり、お互い臨戦体勢に入った!
ここからが真の「第2ラウンド」であり、同時に佳境(かきょう)!
ふたりの烈しいバトルの結末は!!?

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