小説『約813の問題児が異世界からくるそうですよ?』
作者:tasogare2728()

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第二十章

それから二日後――

「龍嗣さん!!龍嗣さんどこですか!!」
黒ウサギはものすごく慌て龍嗣を探していた。
そして、動ける人たちは全員動いて龍嗣を探していた。

「ったく、どういうことだよ、黒ウサギ」
少し今の状況に舌打ちする十六夜
「黒ウサギにも真意は、わかりませんが――黒ウサギの立会いの下、龍嗣さんとグリムグリモワール・ハーメルンの個人対コミュニティの全面交渉だなんて――相当大きな事をしたみたいです」
「ゲームが始まる可能性は?」
「ジン坊ちゃんとサンドラ様の名前がありません、なので、その可能性はないかと?」
「なぜ?」
黒ウサギと一緒に飛びながら探している十六夜
「サンドラ様の合意が必要だからです」
「確かに、あの場にはジンもいたからな、ってことは、最終通告?」
「いえ、あちらは確かに交渉と言っておりましたし」
「そうか、黒ウサギ――この騒動だ、龍嗣が見つけるのに時間はかからないだろう、龍嗣はこっちで探す、お前はサンドラとジンを見つけて、すぐさま交渉場に入れ、いいな?」
「YES,わかりました」
そういって二手に別れるのであった

龍嗣は、一人ぶらぶらと外を歩いて、そして、黒死病患者にある程度効く薬を与えていた。そして、若干通りが騒がしかった。


「あ、ここにいた!!龍嗣さ〜ん!!」
狐耳の少女リリがやってきた
「リリ、どうかしたか?」
「黒ウサギのお姉ちゃんが、龍嗣さん早く来てって」
龍嗣の脳裏に嫌な気配が過ぎる
「黒ウサギが・・・わかった」
そして、龍嗣は飛び出した

タンッ!!タンッ!!
屋根上に飛び出すと、視線の先には十六夜がいた
「十六夜!!」
「お、いたいた」
こっちをみて、手を振る十六夜――。
「それで、騒がしいがどうかしたのか?」
「あぁ、お前宛てに、あっちが交渉を持ちかけてきたんだよ」
「グリムグリモワール・ハーメルンが・・・わかった」
龍嗣は、貴賓室に駆け足で向かっていった。

「「龍嗣さん!!」」
貴賓室の前には、ジンとサンドラがいた
「なにが、あったんですか?」
「あぁ、少し宛てはあるがな・・・・・・」
そういうと、二人に一瞥して、龍嗣は部屋に向かった

「・・・これは、これは」
貴賓室には、顔を難しくした三人と黒ウサギがいた。龍嗣は、ペストの前に座ると
「これより、個人交渉を開始します――ホスト側より、今回の交渉の内容は――」
「龍嗣、どういうこと――ちゃんと説明して頂戴、なんで黒死病の患者が減っているの?」
ペストの顔が歪んだと同時に黒ウサギの顔が驚き一色になった。
「・・・あちゃー、バレたか」
龍嗣がばれたような顔をした――それを聞いて、ラッテンが言った
「ジャッジマスター!!これは、最初の交渉のゲームの前提条件を崩すわ!!」
「ええ、ゲーム期間を設けたのは、そちらが黒死病発症という前提をもってだわ、そうなるとこちらが一方的な不利な状態になるわ――わかるわよね」
「確かに――ゲームは対等にしなければな」
「そうね、それと、プレイヤー側の龍嗣にそして、箱庭の貴族であるあなたに問うわ――どうして、太陽が一部のエリアで活性化しているのかしら、私たちは太陽に弱いの――これは禁止事項;・一週間を、相互不可侵の時間として設ける;に抵触するわ」
「・・・何も言い返せません」
「そう、それでいいわ――ジャッジマスターこの場合、どうなるのかしら?」
「この場合だと――ゲームの再交渉が行われます」
深刻な顔の黒ウサギ
「そう・・・こっちから注文していいかしら?」
「あぁ、俺個人に対してだがな」
「えぇ、それでいいわ、まず最初――太陽に干渉することは全面禁止と、九十九龍嗣の身柄を3日間の間、こちらが拘束させてもらうわ――いいわね?」
「プレイヤー側、異議は?」
「ないよ――全てばれちゃ何もいえないからね」
そういうことで、龍嗣は、三日間の拘束を受けることになった

三日間の二日目

美術展出展会場 魔王側本陣営――龍嗣は、ペスト・ラッテン・ヴェーザーと共に展示会場の奥にある大空洞に居座っていた

「あれから四日、徐々に感染者が発症し始めたみたいですねえ」
「そうね――なんとか、発症し始めてくれたわ」
そっけなく、少し疲れた返事をするペスト
「あーあ、何もかも順調なのに、消えた鉄人形と逃げ出したお嬢さんは見つからないですねー、それにしてもマスターは相手してくれないしぃ、暇だなー暇だなーせめて、;白雪;か;灰かぶり姫;の連中がいれば、傘下に入れた連中を使って面白おかしく歌劇でも演じさせたのにぃ」
「・・・・・・?;白雪;と;灰かぶり姫;」
魔道書(グリモア)シリーズのグリム童話出身で、私達と姉妹になる魔書です、まあにぎやかな連中でしてね、毎夜毎晩、楽団気取って馬鹿騒ぎしてたんですよ、魔法の靴を小人にはかせて、灼熱の上でタップダンスを躍らせたりね」
「ああ、あれは笑えたな、灰かぶりの奴は陰気だったが、ユーモアのセンスは中々だった」
「;幻想魔道書郡(グリムグリモワール);って楽しいコミュニティだったの?」
「それはもう!何せ前のマスターの場合は魔王になった理由からして頭悪かったですよ」
「;俺が魔王になり、怠惰な神々に代わって箱庭を華々しく飾ってやろう!!;って感じの人で、はじめはとんだはずれくじを引かされたと思いましたけど、最後のその一瞬まで、魔王の名に恥じない散り様したよ」
ラッテンとヴェーザーの顔から笑顔が消えた。幾星霜の彼方、過ぎた日を顧みる二人の瞳は、自然と遠いものとなった。

「・・・・・・あぁ、そうだマスター、一つ大事な話をしておきます」
「何?」
「貴女は、魔王としてギフトゲームを開催しました、今後、多くのコミュニティに狙われることになるでしょう――魔王として戦って戦って、そして、やがで――必ず没します」
「必ずな」
「・・・・・・・」
黙り込むペスト――そして、龍嗣は呟いた
「光があれば闇がある、秩序を乱すものがいれば、秩序を正すものがいる、この箱庭は、そういうところさ――」
「コイツの言う通りだな、上をみたらきりがねえ、上層は修羅神仏の蠢く魔境、しかし、魔王となる以上、上を目指し続けなきゃ生き残れない、俺達は箱庭の秩序の外に身を置く代償に、秩序を正すものに滅ぼされる運命を背負うのさ――ま、前のマスターの受け売りだがね」
「・・・・・・二人は前のマスターが好きだったのね」
「いい男でしたから、本拠だって、ノイシュヴァンシュタイン城に負けないぐらい豪奢な造りのをポーン!と指先一つで召還するすごい人で――」
嬉々と語っていたラッテンの声が止まる。不意にそっぽ向いたペストがそこにいた
「どうしました?珍しく仕草が可愛いですよ?」
「そういう貴女は普段どおりむかつくわね、ラッテン」
毒を吐いて、展示会場のベンチに座るペスト――そんな中
「はぁ、この夕焼けをいつまで見れるんでしょうね」
「さぁな」
龍嗣は、少し悲しくなりながら言った。


それから、数日経った。ここは、隔離部屋個室
閑散とした部屋の中――龍嗣はそこにいた。
今、視線の目の前にはいるのは耀、彼女は;ノーネーム;の同士の中で春日部だけが発症した。本来発病したほとんどの患者は雑魚寝状態であるが、サンドラの取り計らいで特別に個室を与えられている。
基本的に、この一週間は動けない。それに、次々と同士が倒れるのをみて、士気を高く持つというのは困難だった。

というか、いろいろな調査や連行を含めて、龍嗣が戻ってきて、春日部と面会したのは、今だった。
「ジャック・オ・ランタンから、何か言われたな」
「――今ここでいう?」
「あぁ、病は気からっていうからな、気が病むと身体が病むそしてまた気が病むからな――身体を病魔に蝕まれ、こんな寂しい個室で辛そうにしているからな――見てられないんだよ」
「ごめん、君って私が思うより優しいんだ」
「どうも――困ったときはお互い様だからな、同じコミュニティだし、それに――今からすることはフォレス・ガロの時のお返しだ」
そういうと、龍嗣は抗生物質を作るスキル『複利厚生(リハビリレート)』と疲れを消すスキル『疲れない心臓(オミットハート)』を彼女に対して使う。
「…えっ?」
「まぁ、何も言うな――いいな?それと、これが作用する時点で少し体に負荷をかけるから少し寝ていなさい、いいね」

コクりと彼女は頷くと
「…ありがと龍嗣」
「気にするな」
そういって、彼女の頭を撫でてやる。特に嫌そうな顔をしない耀だった。

「それで、ゲームクリアの目処は経った?」
「ここだけの話――反則を使えば勝てる」
「…反則?」
「答えをな……」
故意にその先を言わない龍嗣
「チート」
「いうな」
そんな中
「おいおい、逢引中だったか?」
十六夜が少し笑いながらやって来た
「いや、そうでもないさ」
そして、頷く耀
「それにしても、まさかとは思ったが――お前には驚かされるよ」
「どうも――こう見えても813個あるんでね」
「まさに魔王だな」
薄らわらいする十六夜
「それで、ゲームクリアの目処はたった?」
「んー……大まかにはわかっているんだが、核心には至ってないってとこだな」
ベット脇で本を読み始める十六夜
「ま、そっちも大体の考察が終わっているけど、其処からの解釈に意見が分かれている感じだろ?」
「あぁ、そういうこったい」
「二人共、具体的には?」
そういうと、十六夜が考察したメモと龍嗣が考察したメモを耀に見せる。
龍嗣のメモにはこう書かれていた。
白夜叉――太陽の運行に携わっている。それだけだった。
一方の十六夜は、相手のコミュニティの伝承を色々と書いていた。
「頭の中でグルグルって感じか――お前らしいな」
「どうも」
「…それで?」
「つまり、数式に当てはめていくと、繋がらないのが―真実の伝承or偽りの伝承のはずなんだよ」
十六夜の中では、すべてが=につながっているらしい。
「なら、十六夜はどれがニセモノだと思ってる?」
「ペストだな」
即答だった。
「神隠し、暴風、地災、どれもが刹那的な死因であるにもかかわらず、黒死病だけが長期的な死因として描かれている、;ハーメルンの笛吹き;は一二八四年六月二六日という限られた時期内で一三〇人の生贄がなければいけないんだ」
「あぁ、仮に偽りとして、;黒死斑の魔王(ブラック・バーチャー);を倒すだけだとな――第一の勝利条件とかぶるからな、ブラフだとしても、第二の条件を無視するのは、あまりにも危険すぎる」
龍嗣がいう。
「……それで侵入方法は?」
「――美術工芸の出典物――ハーメルンの笛吹の魔道書の正体はおそらく、複数枚で綴られたステンドグラス状のもの、それを通じて奴らは祭典区画内に侵入したんだろう」
 ・
 ・
 ・
「ッ!?十六夜――今なんて言った?」
「祭典区画内に侵入したんだろうって――」
「その前だ」
「複数枚で綴られたステンドグラス状――」
「それだ!」
「なに!?」
「もし、俺の記憶が正しければ―― 一三〇枚で出来たステンドグラスがあるはずだ」
「それは、マジか?けど、白夜叉を拘束したロジックはどうする?」
「そうなんだよな――そこが立ちはだかるな…いや、待てよ」
そんな中春日部が言った
「あのさ、思ったんだけどそのハーメルンっていうのがそもそも偽物ってことはないの?」
そういった直後――二人の思考回路がものすごい速さで何かをはじき出した

「十六夜――まさかな?」
「言わなくてもわかるが――現状、それが一番かもな」
「…どういうこと?」
春日部が聞いてくる
「さっきの十六夜の数式法でペストをA、白夜叉をCにして、A=Cに繋げないといけないのだが、そのつなげる=のところにマウンダー極小期――つまり、太陽の黒点活動を入れると」
「あぁ、黒死病が大流行した寒冷の原因は――太陽が氷河期にはいり、世界そのものが寒冷に見舞われたと推測できるわけだ」
「ってことは、だ」
「白夜叉が封印されたのは、クリアだ――そして、さっき言った春日部の言葉を合わせると」
「グリム童話上は本物であっても本物ではないってことか!!」
「龍嗣、行くぞ!」
「オッケー十六夜!!ナイスだ耀!おかげで謎が解けた!!あとは、任せて追ってこいや」
「うん」
少し咳き込みながら二人を見送る耀だった。

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問題児たちが異世界から来るそうですよ? DVD限定版 第1巻
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