小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第1話 転生してまた死んで





「……知らない天井だ」

 とりあえず言ってみたかった台詞その一を言ってみる。俺はソファで寝てたらしい。
 俺がいるのはおそらくリビングだと思うが、普通に広い。変な装飾やら高級な家具とかがあるわけでもなくいたってシンプル。傷や埃もないことから、建てられてからそれ程経過してはいないのだろう。もしかして俺が住む家だろうか?

 ふと、テーブルの上に目をやると、何かの薬品の入ったビンと携帯が置いてあった。
 何が入ってるんだろう? そして携帯は俺が生前使っていたものとまったく同じモデルのものだ。

 家の中を散策してみる。部屋は沢山あるし、二階へ続く階段もある。しかし誰もいない、人っ子一人いないのだ。寂しくなった。
 それ故にサーヴァントでも召喚してみようと思ったが、大事なことに気がついた。

――魔術回路ってどうやって開けばいいんだろう?

 魔術回路、それすなわち魔術師の魔力を生み出す擬似神経。一度スイッチを作ってしまえばオンオフは可能になるが、俺は魔術回路が開いているかどうかすらよくわからない。

〜〜♪

 そんなことを考えていたらリビングの携帯から着うたが。もちろん俺は設定なんてしていない。
 俺は急いでリビングに戻ると携帯を手に取った。待ち受け画面には『女神ユー』とある。心辺りなんてあの女神くらいしか思いつかない。

「……もしもし?」

『どうやら無事転生に成功したようだな。おめでとう』

電話の声はあの女神のものだった。

「ああ、問題はない……と思う。それより、ここは一体どこなんだ?」

『君の家だ。生活に必要なものはこちらで用意させてもらった。生活費も振り込んであるし、定期的に資金に不自由しない程度にこれからも振り込んでいく。他に必要なものがあったら自分で買い足してくれ』

「ありがとう。……そういえばここって俺しか住んでないのか?」

『そうだ』

「俺の両親とかはいないの?」

『君は輪廻の輪から外れた存在だからな。人間から生まれることはできないんだよ。肉体はこちらで適当に作ってそこに君の魂を定着させたんだ』

適当とか言ってるけど大丈夫なのかこの体…………あれ?
そういえばさっきから視線が低い。手も小さくなってプニプ二している。
これってもしかして縮んでないか?

「俺の体が縮んでるんだけど?」

『なにせ新しい人生だからな、子どもの頃からやり直すのも面白いだろう?』

面白いかどうかと言えば微妙だ。

『そうだ。言い忘れてたが君には学校にも行ってもらう』

「学校?」

 この年だと小学校か? 

『確か私立聖祥大学付属小学校だったかな? 一ヶ月後にそこに通ってもらう』

 私立の小学校か。生前は地元の公立の学校だったから新鮮だな。

『制服はクローゼットの中にある。サイズはぴったりの筈だ』

小学校の頃から制服……俺はどっちかといえば私服のほうが堅苦しくなくていいなぁ。
大学も私服だったし。

『地下には訓練施設や簡単な工房もある。二階への階段の一番下に君の魔力を流せば階段が出てくる仕組みだ』

 至れり尽くせりだな。

『私からはこれくらいか。質問はあるか?』

「俺の魔術回路ってどうなってんの? どうやったら開けるの?」

『テーブルの上に小瓶があるだろう。その中身を飲めば魔術回路を開くことが出来る』

さっきも見たテーブルに置いてある小瓶だ。怪しいが、魔術回路を開ける方法なんて他の魔術師の手を借りるくらいしか知らない。つまりこれしか手掛かりがないのだ。
俺は半信半疑で小瓶を開けて中身をグイッと飲んだ。本当に一口分くらいしかなく、味もしない。

『……だが、全身が酷い激痛に苛まれるから飲むんだったら覚悟しとけよ』

「はぁ!? そういうことは先に……カハぁッ!!」

痛いイタイイタイ。
女神の言ったとおり、全身に激痛が走る。俺はあまりの痛みに携帯を落とし、全身を掻き毟る。

「ギ……ガ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアアアア!!」

 最初こそあまりの痛みに叫んでいたものの、徐々に言葉にならずに擬音語のように口から漏れ出すだけだ。いっそ首を絞めて死んでしまおうかとも思ったが痛みで神経が麻痺したのか、腕が動かなくなってきた。呼吸するのも辛くなり、ヒューヒューと喉から空気を求める音が聞こえてくる。酸素が足りなくなり、頭がぼーっとしてきた。そして俺の意識は途絶えた。





「んぅ……」

 目が覚める。幸か不幸か俺は生きているらしい。
 ……違うな、ヘラクレスの宝具の一つ『|十二の試練(ゴッドハンド)』よって一度死んだが蘇ったようだ。自分でも何故かは分からないが感覚的に命が一つ減っているのが分かる。あと、あの薬のおかげか魔術回路は開いていて、スイッチも出来ていた。
 俺のスイッチは『金槌で鉄を叩くイメージ』だった。
 錬鉄の英雄っぽくてカッコいいだろ? 別に投影で宝具がつくり出せるわけではないんだけどさ。
 とりあえず落ちていた携帯を拾う。盛大に落としてしまったが壊れてはいないようだ。それをポケットにしまう。

 俺は一体何時間くらい寝てたんだろう?
 ふと時計を見ると、もう夕方の4時。外は大分暗くなっていた。
 外の空気を吸いたくなって庭がある方の窓を開けようとしたら、庭に何やら突き刺さっているのが見える。

「これは……」

 俺は玄関から靴を履いて庭に出た。そこにあるのは見間違いようも無い。ヘラクレスがバーサーカーとして召喚された第5次聖杯戦争で武装概念として使用していた斧剣がある。

 試しに振ってみようとしたが……抜けない。ビクともしない。というか俺の背が剣の柄に届かない。
この剣が本当にあの斧剣なら|セイバー(アーサー王)の|聖剣(エクスカリバー)と打ち合っても全く破損してない強力な武器になる。

 どうにかして使えないものか。せめて子どもの俺にも持てるくらいの重さになればな。そう思っていたら斧剣に変化が起こった。どんどん小さくなっているのだ。やがてその大きさは子供用のバットと同じくらいになる。鍛えないと振り回すのは難しそうだが、持つこと自体は可能になった。軽くなってるせいで破壊力はダダ下がりだろうが、持てないよりはマシだろう。もしかしたらこの斧剣は俺が念じると大きさが変化するのかもしれない。試しに元の大きさに戻れと念じたら、身の丈の倍以上ある巨大な斧剣に戻った。

 さて、これからどうしようか。能力の確認? 『|十二の試練(ゴッドハンド)』がきちんと機能してるのは分かったし、俺が貰ったのは魔術師としての才能なのでいきなり魔術が使えるわけじゃない。誰かキャスタークラスのサーヴァントを召喚して教えてもらうか、さっき書斎で見つけた魔術の本を読んで独学でやってくくらいしかないだろう。幸い学校に通うまで一ヶ月ほど期間はある。ゆっくりやればいい。

 さしあたって今やらなければいけないことは

「腹減った」





 てなわけで近所のスーパーに到着。腹減ったけど冷蔵庫にはミネラルウォーターしか入ってねぇの。「式のアパートかっ!!」って思わずツッコんでしまった。コンビニでもよかったが、どうせ食材は必要になるだろうしこの時間帯なら弁当も安くなってるだろうしと考えてスーパーに行くことにした。行く途中道に迷ったが、買い物帰りと思われるメイドさんに丁寧に、というか機械的に教えてもらった。それよりも秋葉原以外でメイドなんて見たことなかったので普通にビビった。

 俺が真っ先に行ったのは弁当のコーナー。
 おっ、カツ丼が30%offになってる。今日の夕飯はこれにサラダと、明日用に弁当以外も買っておこうか。調味料も無かったしそっち方面も揃えておかないと後で面倒だ。

『ただいまから〜鶏モモ肉が100g5円! 100g5円の提供になっております!』

 そのアナウンスに俺は0.1秒で反応する。自炊していただけあってタイムセールスや半額の商品なんかには結構弱い。食材も買うつもりだったし一つ買っていこう。

 鶏肉のコーナーではタイムセールスに群がる|オバちゃんの軍勢(アラフォー・ヘタイロイ)。どうやら俺は出遅れてしまったらしい。あんなの相手に出来るかっ!俺は早々に諦めて別の食材を買い込み(米は流石に無理があった)家へと帰ってきた。
 
 今日はもう、あれだ。色々あって疲れた。カツ丼食ってとっとと寝ることにする。あと一ヶ月あるんだし明日から本気出す。
 
 これじゃあ本気ださないやつの常套文句だった。

-2-
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