小説『魔法少女リリカルなのは〜英霊を召喚する転生者〜』
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第2話 サーヴァントと+α




腹一杯飯を食べてグッスリ寝たことで、朝起きたときには頭の中はすっきりして身体の調子も絶好調だ。さてと、まず何からやろうか? 
そういえば訓練場があるなんて言ってたっけ。

「二階への階段の一番下にある床……だったっけ?」

床を軽く叩いてみたり、ボタンがないか確認してみたりするも何も見つからない。

『地下には訓練施設や簡単な工房もある。二階への階段の一番下に君の魔力を流せば階段が出てくる仕組みだ』

女神が昨日言っていた言葉を思い出す。

「――|Anfang(セット)

魔力の放出なんてやってこと無いが、とりあえず魔術回路に魔力を通して、床に触れてみた。

テロリロリロリロリロン♪

何処からともなくゼル伝のダンジョン等で鉄格子の扉が開いたり、宝箱が出現したりしそうな効果音が流れる。そして床は下へと続く階段に早代わり。早速降りてみることにする。
地下は壁自体が発光しているようで暗くない。足元を踏み外したりする心配もなさそうだ。

五分くらいかけて一番下に到着。そこには扉が一つあるだけで他には何もない。
俺は扉をそうっと開ける。

そこにあったのはただただ広い空間。広すぎて向こう側が見えないくらいだ。

『訓練場にようこそ八代彼方君』

空間全体に女神の声が響き渡る。
八代彼方ってもしかして俺の名前か?

『あ、ちなみにこの声は録音してるものだからお前の声には応えないぞ? 今からここの基本的な使い方の説明をする。一回しか言わないからよく覚えろよ少年』

俺は録音された声に耳を傾ける。

説明されたのはこんな内容だ。
・この空間の広さは特に決まっておらず、好きなように設定が可能。また地形や景色も登録されているものなら変更することが出来る。

・どんな衝撃を受けてもビクともしない耐久性があり、対城宝具でもちょっと位しか傷つかない。外からの衝撃にも同等の耐久制度を誇る。

・空間内では魔素が満ちていて、魔力の回復も早い。設定すれば魔素を無くすことも可能。ここ全域を工房にすることもできる。

・ムーンセルのアリーナのようにエネミーを創り出しての模擬戦が可能。強さもE〜A++まで自由に設定できる。

やべえ、チートにも程がある訓練場だこれ。
ここで俺はあることを閃いた。

「ここでサーヴァントを召喚すればいいんじゃね?」

サーヴァント召喚にはかなりの魔力を消費するらしいが、ここならその心配もない。
しかし、魔方陣の書き方なんて知らないし、何よりも大事なのは聖遺物。それはとある聖剣の鞘だったり、この世で一番初めに脱皮した蛇の抜け殻だったり、マントの切れ端だったり、鎧の破片だったりと様々だ。そんな年季の入ったものなんて当然ながら持ってるわけがない。

『追伸』

「わっ!」

また女神の声が聞こえてきたので驚いた。

『サーヴァントは魔術回路さえ開ければ召喚できるようにしておいたぞ』

それを最後に声が響くことはなくなった。
俺は魔術回路を開いて詠唱を始めた。
聖遺物なしだと召喚主と相性のいい英霊が現れるというし、そっちの方がいいかもしれない。

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

  閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する

 ―――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ

 誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、異界の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

辺りが白い光に包まれた。

手応えあり!! ……っても言ってみただけだけどね。
でもきっとうまくやっていけるサーヴァントが現れるに違いない! …筈だ。

そして光が収まると共に”それ”は姿を現す。

「あ、そこの人。暫(しばら)く、暫(しばら)くぅ〜〜!!」



……………………へ?



「謂われはなくとも即参上! 宇迦乃御魂神(うかのみたまのかみ)もご照覧あれ!サーヴァント『キャスター』。軒猿陵墓(けんえんりょうぼ)から、良妻狐のデリバリーにやってきました〜!! 」

気が抜けるような口上と共に彼女は現れた。
そういやこういう登場の仕方だったな。

「あ、なんかドン引きしてません? えーと、貴方が私のご主人様……でいいんですよね?」

「あ、うん。たぶんそうです」

「やったあ、契約成立! よろしくお願いしますねご主人様(マスター)」

彼女、キャスターこと玉藻の前は嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねている。

玉藻の前とは、平安時代末期、鳥羽上皇に仕えた白面金毛九尾の狐が化けた伝説上の絶世の美女。鳥羽上皇が院政を行った1129年から1156年の間に活躍したといわれ、20歳前後の若い女性(少女とも)でありながら、大変な博識と美貌の持ち主であり、天下一の美女とも、国一番の賢女とも謳われた。
改めてみるととてもそうには見えない。

頭の中に彼女のステータスが映し出される。

知名度補正があるお陰かキャスターにしては身体能力が軒並み高い。
これは嬉しいことだ。


「何を隠そうこのタ―――いえ、このワタクシ、ご主人様みたいなかわいい人のサーヴァントになりたいってずっと思ってたのです! ああ、しかもこうして故郷に呼び出してくれるなんて!?」

「か、かわいい……か…」

俺男だし、かわいいと言われてもあんまりうれしくないというか。
まだ小学生だし仕方ないかな?

「まあ落ち込まないでください。その顔ならきっと将来イケメンになりますから」

「ああ、ありがと、い、痛っ!」

突然左手に熱が生じ、赤い紋章の様なもの『令呪』が浮かび上がってきた。

「令呪だ……」

「あれ? ご主人様、令呪のことご存知なんですか? まだ若いのに博識ですね」

「ちょっとね」

あ、そうだ。

「そうだ自己紹介がまだだったね。俺は八代彼方。これからよろしく」

「こちらこそよろしくお願いしますご主人様。不肖このキャスター、ひとたびこの身を捧げたのなら、六道輪廻の果ての果て、主の魂魄が尽きるまで精一杯仕えさせていただきます。」

そ、そこまで重く考えなくても。

「別に聖杯戦争じゃないんだからもっと気楽にして良いんだよ」

「はい? それってどういうことなんですか?」

これからやっていく上でちゃんと話すべきだろうな。







「………ということなんだ」

俺はすべて話した。己が転生者という常識はずれな存在であるということ。この世界やサーヴァント、そして聖杯戦争がとある創作物の世界であることを。

キャスターは黙っていた。否、驚愕のあまり声が出なかったというほうが正確だろう。

「この世界には聖杯戦争はないんだ。…えっと、だから…その…」

何と言えばいいんだろう?

「あの…ご主人様」

キャスターが口を開いた。

「ご主人様はそれを踏まえたうえで私を呼んでくれたんですか?」

「呼んだというか。うまくやっていけるサーヴァントにきて欲しいと願ったというか」

キャスターの体がフルフルと震えている。
そうだよな。英霊がそんな理由で呼び出されて怒らないわけが…

「…それって…それって…」













「…とってもロマンチックじゃないですか!?」

「………はい?」

自分が想像してたのとは180度違う答えが返ってきた。

「だってそうでしょう? ご主人様は偶然転生する資格を得て、さらに偶然と言っていい確率で私を引き当てた。こんな偶然あるんですか?いやもうこれは運命としか言い様がないですよ! …ああ、私とご主人様は1万年と二千年前から赤い糸で結ばれてたんですね!」

一体どこから1万年と二千年という数字が出てきたのか。

「…怒ってないの?」

「え? なんで怒るんです?」

「だって聖杯戦争でもないのに呼ばれたのに」

「ご主人様。私はそのようなことで怒ったりはしませんよ」

キャスターは俺を優しく抱き寄せる。

「えっ、わっ!」

「ご主人様は全てを話して下さいました。魔法のようで、とっても突拍子の無い事だったから、流石の私もちょーっと驚いちゃいましたけど。さっきの言葉を撤回するつもりはありませんよ」

嬉しかった。キャスターはそれを踏まえた上で俺を認めてくれたのだから。

「たとえどんな理由で呼ばれたとしても私にとってご主人様はご主人様ですから…ですからこれから末永くよろしくお願いしますね」

「うん。よろしく」





「……あら?」

俺を抱きしめているキャスターが怪訝な表情を見せる。

「魔術回路……は、ちゃんと機能してますよね。何なんでしょうこの魔力の塊は?」

キャスターがペタペタと俺の身体を触って、少し恥ずかしい。

「どうかした?」

「ああ、何でもありませんよ。ところでここは一体?」

キャスターは訓練場をキョロキョロ見回している。

「猫?」

「猫がどうかした?」

キャスターが指をさした先には、茶色い毛並みの猫がいた。ボロボロで正しく瀕死、というより死んでいるのかもしれない。
駆け寄って耳を近づけるとまだ僅かに息があった。

「キャ、キャスター。こいつこのままだと死んじゃうんじゃ」

「でしたらこの子を使い魔にするというのはどうでしょう? ご主人様とレイラインを繋いで魔力供給を受けられれば使い魔として生き続けることが出来るかもしれません。レイラインは私が繋げます」

キャスターは俺とこの猫との間に(一方的に)レイラインを繋いで、猫は一命を取り留めた。あとはしばらくここで療養していれば復活するだろう。

「僅かですけど魔力を感じますね。もしかしたら誰かの使い魔だったのかも」

キャスターの言葉が本当なら本来の主に捨てられたか、もしくは帰らぬ人になってしまったのか。ともかく可哀想だ。
使い魔って喋るんだっけ? 蒼崎橙子の使ってるのは喋らなかったし、他の魔術師のも偵察に使っているくらいだったから無理か?

「ご主人様。これからどうします?」

「……朝食食べてから訓練、かな」

「あっ、だったら私が腕によりをかけて作っちゃいますからね」

そう言って彼女は霊体化して上へと上って行った。

さてと、これからやることが山済みだぞと。

-3-
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