小説『wanari流 小説の書き方講座『解体信条』』
作者:wanari()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

5.wanari流 小説のレベルアップ方法




 自戒を込めて、このお話を書きます。

 小説が上手くなりたい。それは物書きなら誰もが思うことです。
 では一体、どうすればよいのか。
 よく言われているのは「多く読み」「多く書く」ということです。
 僕は特に後者、「多く書く」ことを推したい。それも、必ず「完結」させるという条件付きです。
 この一行を書くだけで実に胃が痛くなりますね……。まあ、それはともかく。
 当たり前の話ですが、小説には冒頭があって、中盤があって、結末があります。それらをすべてひっくるめたものを小説と呼ぶのですから、途中で終わっていては小説として成り立ちません。作者から見れば、小説を書くために必要な修練を途中で放棄していることになるのです。
 じゃあ、どうすれば「完結」させることができるのか。
 個人的な体験と思いで恐縮ですが、小説を書くときに一番苦しいのは中盤ではないでしょうか。特に原稿用紙百枚(四万字)以上の長編の場合、中盤はいわゆる「中だるみ」の状態に陥りやすい。ぶっちゃけて言えば途中で飽きてしまう。
 冒頭はいい。書き出しに苦労しても、そこには「書くんだ」というエネルギーがある。
 結末もいい。ゴールが見えて、ラストスパートの力が湧いてくる。
 問題は冒頭と結末を繋ぐエネルギーをいかに維持するか。
 正直言って、これは書き手さんによって千差万別、さまざま方法があるかと思います。
 僕はここで、「ゴールを明確にすること」と「プロットを見直すこと」、そして「常に新しい刺激を取り込むようにすること」を挙げたいと思います。
 人間、前途が明るいと自然にやる気が出てきます。また、たとえ平坦な道でも景色が良ければ退屈しません。それは小説を書く際でも同じ。書きたい、という気持ちを維持するためには、「必ず完結できる」と確信できる明確な道筋を彩り良く用意することが大切です。その手段が、上記の三つ。
 具体的には次の通りです。
 「ゴールを明確にする」……「ラストはこうする。そのために今の場面がある」と考える時間を持つ。
 「プロットを見直す」……筆が止まったときこそプロットをじっくりと見る。プロットを書いていたときに抱いていた熱意を思い出す時間を持つ。
 「常に新しい刺激を取り込むようにする」……誰かに作品を見てもらって、気になるところを指摘してもらい、それを元に修正する時間を持つ。
 これらに共通しているのは、「時間を持つこと」です。立ち止まって遥か前方や、自分の歩いてきた道や、今自分が立っている周囲を見回す余裕を持つことです。
 小説を、とりわけ長編を仕上げるのは、実は結構な茨の道だったりします。僕にとってはそうです。そこを何とか前へ前へ進むよう心を砕くのは、苦行だと感じることもありました。
 ですが――敢えて言います。完結させましょう。
 茨の道を乗り越え見事作品を完結させたとき、あなたの力は間違いなく向上します。それは、冒頭から中盤、そして結末へと至る流れをつかみ、表現する力です。こればっかりは、作品を完結させなければ体得することができません。

 ときおり、物書きは孤独で辛い旅をするのだなと思うときがあります。
 けれどそれは同時に、完結後の達成感と成長という素晴らしい宝物が待っている、特別な旅なのではないかと、僕は思うのです。

 みなさんはどのように感じていますか?





(まとめ)
・レベルアップの秘訣は「完結」にあり。大変だけどね……。

-6-
Copyright ©wanari All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える