小説『Endless Agony -Vol. 01- 〜東西日本動乱篇〜 (執筆中)』
作者:五十嵐 繚乱()

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琥珀は変わり果てた基地跡を無言で見渡す。

辺りには過去のベトナム戦争などで重宝されていたM60機関銃などが無残に投げ捨てられたままになっていた。

この様な、ベトナム戦争などで重宝された兵器も今ではDAを起動させる時間を稼ぐ為だけの道具となってしまっているのだ。

琥珀は地面から目を離すと、青く澄み渡る熱帯雨林の空を仰いだ。


「分からないなぁ…」


今の時代、人類は何処へ、そして正しい方向へ向かっているのだろうか。

本当に彼らが自分達の憧れていた人間というものなのだろうか。


「…柄にも無く何を考えてんだ?」


突然、背後から翡翠に声を掛けられる。


「…いや、これが那美が身を投げてまで救った世界なのかなぁって思ってさ」


今や、米中戦争停戦から1年以上が経っていた。

あの日から翡翠達は、世界を見て回っている。

しかし、核戦争の危機から那美が身を投じて守った世界は、翡翠達にとってそれほど価値のある場所ではなかった。

勿論、そこには幸せがあったのも事実だったが、それ以上に、その倍以上に、そこには混沌とした世界が広がっていたのだった。

米中戦争停戦後、世界各国は、続いて起こり得るアメリカと中国を中心とした第3次世界大戦へ向けて大幅な軍事力の強化、云わば「軍事ラッシュ」を競うようにして行っていた。

今や、核兵器を持たない国は数えるほどの発展途上国のみとなっていたのだった。


「『ヒト』が『人』である限り、この混沌とした世界は終わらない…。だからと言って『人』は『ヒト』へは戻れない…」


琥珀は呟きながら大きく背伸びをする。


「瑪瑙か…那美からの受け持ちか」

「…何で翡翠には私という選択肢がないのかな」


琥珀はジト目で翡翠を睨むが、翡翠は知らぬ顔で話を進める。


「争い事は力で捻じ伏せた方が効率が良い、それは理に適っている」

「それなら、私達と翡翠で世界を平定しちゃおっか」


琥珀は表情を一変させ、屈託の無い笑顔を翡翠に向けた。


『流石だな…』


翡翠は琥珀の食い付き様に舌を巻いた。

彼女は戦闘に対して一切の罪悪感を持たない。

ただ人を殺す為だけに創られた、GG Extra Numbersの1人、GG-02 beta-である。

恐らく彼女は冗談ではなく、本気で翡翠に世界征服をしちゃおうと提案をしているのだ。

翡翠は軽く溜め息を付くと、琥珀の頭に右手をポンと置く。

琥珀は突然の不意打ちに目を丸くした。

そして、彼女の頬も仄かに赤くなる。


「…いや、それは最終手段として取って置こう」


翡翠の一言に琥珀はまた表情を一変させ、今度はとても切なそうに微笑む。


「…うん。でもまぁそれは翡翠もとい那美の望む結果じゃないだろうけどね」


『…翡翠様、琥珀大姉様、お取り込み中失礼します』


話が一区切り終わるのを待って、翡翠と琥珀の頭の中で紫苑の声が響き渡る。


『何か見つけたのか?』

『いえ…そこまで大層な物でも無いのですが…』

『…分かった、今すぐ行く』

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