小説『ハイスクールD×D〜闇皇の蝙蝠〜(第二部)』
作者:サドマヨ()

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闇が晴れて元の風景――――首都リリスに戻り、ギャスパーは路面に横たわっていた

ゲオルクの姿は無い、闇に完全に喰われたのだろう

祐斗はギャスパーに歩みより、顔を覗き込んでみる

ギャスパーはスヤスヤと安らかに寝息を立てているだけで、先程の危険な雰囲気が微塵も無かった

リアスはギャスパーを抱き寄せて髪をそっと優しく撫でる

「……この子について、ヴァンパイアについて訊かなくちゃならない事が色々出来たわね。けれど、ただでさえ吸血鬼は悪魔を嫌う。ヴラディ家が私の質問に答えてくれるかは分からないけれど……。以前に話を持ち掛けた時は丁寧に断られたわ」

吸血鬼は悪魔以上に階級を大事にしており、純血とそれ以下を完全に区別している

グレモリー眷属の様に仲間を想いやれる者がいないに等しく、現悪魔政府の様に元人間にチャンスを与えるような事もしない

「ヴァルハラに戻った時、興味深い話が聞けました。――――なんでもとある吸血鬼の名家が神滅具(ロンギヌス)所有者を保有した事で、吸血鬼同士で争いが勃発してしまったと」

ふいにロスヴァイセがそんな事を話す

吸血鬼の業界は未だに悪魔や他勢力と交渉すらしない閉鎖された世界

その種族が神滅具(ロンギヌス)を得た……

冥界が危機にある状況の裏でも解せない事が起きている

「……それもそうですが、今後は魔法使いにも気を付けた方が良いでしょう」

目覚めたソーナがそんな事を漏らす

「どういう事?」

「……彼ら魔法使いは実力、才能主義です。その中でも今あなた達が倒した霧使いのゲオルクはトップクラスの実力者でした。そのゲオルクを倒したあなた達に魔術協会が興味を抱いてもおかしくない。ただでさえ、あなた達は強い事で有名なのだから。彼ら魔法使い――――主に召喚系の使い手は実力のある悪魔と契約するのをステータスの1つとしています。特に将来性のありそうな若手悪魔は交渉の場に呼び出され易い。名うての悪魔は既に先客がいるか、取り引き出来たとしても高値となりますから、手のつけられていない若手悪魔を買い漁る魔法使いも少なくないのです。先物買いと言えるでしょうね。――――近い将来、必ずコンタクトを取ってくる筈です」

実は魔法使いも悪魔にとってはかなり厄介な存在で、その因縁が古より続いているのだが、その魔法使いがグレモリー眷属を契約対象と見るかもしれない

その話に疑問符を浮かべた時――――背後より気配を感じた

「あらら、ヘラクレスがやられてしまったようね。ゲオルクも……?これは参ったわ」

そこに現れたのは朱乃・渉・祐希那組と戦っていたジャンヌ

全身傷だらけで満身創痍の様子だったが、よく見ると小さな男の子が脇に抱えられていた

「待ちなさいよ、こらぁっ!」

「あなた卑怯ですよ、子供を人質に取るなんて……!」

「……やられましたわね。まさか、あんな所に逃げ遅れた親子連れがいたなんて」

そこへ祐希那、渉、朱乃が苦渋に満ちた表情で合流してきた

どうやら戦いの形勢は3人の優勢だったが、ジャンヌが子供を盾にしてここまで逃げてきたと言う事だ

ジャンヌは手に持つ聖剣の切っ先を子供の首元に突き立てる

「卑怯だな」

「ああ、戦いに関係無い子供を盾にするなど、ゲスの極みだ」

率直な憤りを述べるサイラオーグと大牙だが、ジャンヌはそれを聞いておかしそうに笑う

「悪魔と闇人が言うものではないのではないかしら?ま、義理に厚そうなあなた達ならそう言うかもしれないわね、バアルの獅子王さん。――――とりあえず、曹操を呼ばせてもらうわ。あなた達、強過ぎるのよ。私が逃げの一手になるなんてね。てな訳で、この子は曹操がここに来るまでの間の人質。OK?」

ジャンヌがそう告げてくる

最強の神滅具(ロンギヌス)を持つ曹操がここに来たら、一気に形勢が不利になるかもしれない

サイラオーグと大牙がいてくれるのは心強いが、それでもチート級の禁手(バランス・ブレイカー)を得た曹操に届くかどうかは分からない

「……ふふっ。そ・れ・と♪そこで結界に守られているアーくんも渡してもらえるかしら?」

ジャンヌは未だに目覚めてない新の身柄を要求してきた

無論、リアスと朱乃が新を庇おうとするが……ジャンヌの聖剣が子供の首に少しの傷を付け、一筋の血が垂れる

今はジャンヌの言う事を聞くしかない……状況の悪さに2人は歯噛みした

「そこの獅子王さんと闇人さんも、鎧を解いてもらえる?妙な真似はしないでね?この子を傷付けちゃうから」

「く……っ」「仕方無い」

言われるがまま、サイラオーグと大牙はそれぞれの鎧を解除、次にリアスと朱乃が結界を解く

「そうよ、大人しくしててねー?禁手化(バランス・ブレイク)♪」

ジャンヌの背後より聖剣で生成されたドラゴンが出現する

『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』の亜種禁手(バランス・ブレイカー)、『断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)』

朱乃達との戦いで傷だらけになってても、まだこれだけの余力はあったようだ

聖剣ドラゴンが長い手を伸ばして昏睡状態の新を手中に収め、ジャンヌは上機嫌となった

「アハッ、やったやった♪アーくんゲットォ☆」

グレモリー眷属が悔しそうに歯噛みする中、上空より2つの人影が飛来してきた

「ゼノヴィア!イリナ!」

リアスは飛来してきた2人の名を呼び、ゼノヴィアとイリナはフラフラと地に降り立った

ゼノヴィアが携える得物を見てグレモリー眷属は目を丸くする

「ゼノヴィア、それは――――赤いデュランダル?」

「はい、私の新しいパートナーです。ブレイズ・エクス・デュランダル――――剣護さんです」

『そう言う事だ。よろしく』

言葉を発したブレイズ・エクス・デュランダルに驚愕するグレモリー眷属

何故エクス・デュランダルがその様な姿になったのか、何故神代剣護の声が聞こえてくるのか、その質問を投げられ答えようとしたゼノヴィアだが……イリナに制止される

「その話は後よ、ゼノヴィア!見て!」

「ん?――――ッ!新!?ジャンヌ、貴様!」

ゼノヴィアは怒りを露(あらわ)にしながらブレイズ・エクス・デュランダルを構えるが、人質に取られてる子供を見せられ、渋々得物を下ろす

「はーい、良い子だから大人しくしててね?曹操が来るまでこの子は人質。妙な真似はしちゃダメ」

ジャンヌは聖剣ドラゴンにもう片方の手を下ろす指示を出し、下ろされた掌の上に乗っかる

徐々に上昇していき、人質の子供を聖剣ドラゴンに任せ――――自分は新がいる場所へ飛び移る

子供は聖剣ドラゴンの手に包まれ身動きが取れなくなった

「ご覧の通りよ、悪魔の皆さん。妙な真似をしたらあの子供は私のドラゴンちゃんに握り潰されちゃうから、気を付けてね?さてと……♪」

そう言うとジャンヌは寝ている新に近寄り、上に跨がった

その光景を視認したグレモリー陣営の殆どがギョッと驚く

「ちょ、ちょっと!あんた何しようとしてるの!?」

祐希那が訊くとジャンヌは嫌らしい笑みを見せながら答えた

「何って、曹操が来るまで寝ているアーくんで遊ぼうかなーって。キスしたり、それ以上の事をしたり♪」

『――――ッ!?』

トンでもない発言に全員が度肝を抜かれた

戦場の真っ只中でナニをナニしようとしているジャンヌ

勿論、女子陣営が黙ってる訳が無かった(アーシアはアタフタしている)

「ジャンヌ、いったい何を考えているの!?た、戦いの最中にそんな事――――」

「新さんにナニかしたら、許しませんよ……ッ?」

リアスの言葉を遮る様に放たれる朱乃の怒り

目は完全に開かれ、バチバチと雷光を迸らせながらドス黒いオーラに包まれている

般若、悪鬼羅刹、死神、冥府神、鬼神、破壊神など可愛く見えるぐらいの怒りようだった……

「あ、朱乃さんが今までで一番怖い顔になってる……」

流石の祐斗も畏怖せざるを得ず、ゼノヴィア、小猫、ロスヴァイセの3人は憤慨した

「貴様!新に変な事をしてみろ!デュランダルの錆びにしてやる!」

「……ムカつきます」

「あ、新さんを汚したら許しませんよ!」

「そうですよ!大体――――子供が見ているじゃないですか!」

「そういう問題じゃないでしょッ!?」

場違いな意見を出した渉の頭を殴る祐希那

大牙は隣にいるサイラオーグに訊く

「おい、英雄派は変態の集まりなのか?」

「……知らん。スマないが、今はこの会話に関わりたくない」

「そうだな。オレも関わりたくないな」

「なに急にドライになってんのよ!?止めなさいよ!止められなくても何か言いなさいよ!?」

「祐希那、このままじゃ人質の子供が間違った知識を覚えちゃうよ。だから正しい知識を――――」

「黙れおとぼけの極み野郎ッ!」

ツッコミの嵐に耐えきれなくなった祐希那は激しい息切れを起こし、聖剣ドラゴンの掌の上に乗っているジャンヌは笑っていた

手始めにキスしようとした矢先、ふとジャンヌは捕らわれている子供を見た

子供は全く怖がる様子を見せておらず、平気な表情をしていた

「あら、ボク、案外静かね。怖くて何も言えないのかしら?」

「ううん。ぜんぜんこわくないよ。おっぱいドラゴンがもうすぐきてくれるんだ」

「ふふふ、残念ね、ボク。おっぱいドラゴンは死んだわ。お姉さんのお友達がね、倒してしまったの。だから、もうおっぱいドラゴンはここには来られないわ」

ジャンヌがそう言うが、それでも子供は笑みを絶やさない

「だいじょうぶだよ。ゆめのなかでやくそくしたんだ。ぼくがね、おっきなモンスターをみてこわいっておもってねていたら、ゆめのなかにでてきてくれたんだよ」

人質に取られてる子供は元気に、嬉しそうに語った

「もうすぐそっちにいくから、ないちゃダメだっていってたんだ。まほうのじゅもんをとなえたら、かならずもどってきてくれるっていってたんだよ!」

人差し指を突き出し、宙に円を描いていく

「こうやって、えんをかいて、まんなかをゆびでおすの!ずむずむいやーんって、これをやればかならずもどってきてくれるって!みんなもおなじゆめをみたんだよ!フィーラーくんもトゥラスちゃんもぼくとおなじゆめをみたんだ!となりのクラスのこもおなじゆめをみたんだ!みんなみんなおなじゆめをみたんだよ!」

疑問が尽きない面々の前で子供は空に向けて歌を歌い出す

それはおっぱいドラゴン――――兵藤一誠と子供達の為に作られたあの曲だった

「とあるくにのすみっこに〜、おっぱいだいすきドラゴンすんでいる〜♪」

その時、首都の上空で快音が鳴り響く

見上げると――――上空には次元の裂け目が生じようとしていた

裂け目が徐々に開いていき、そこからグレモリー眷属にとって懐かしいオーラを感じる

それは待ちに待った英雄(ヒーロー)の帰還であり……そのオーラを感じたもう1人の英雄(ヒーロー)が目覚める予兆でもあった……

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ハイスクールD×D リアス・グレモリー (1/4.5スケール ポリレジン製塗装済み完成品)
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