小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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序章2
『非日常を愛する少女は共犯者を求める』



 俺の名前は笹塚(ささづか)宝楽(たから)。

 自分で言うのは何だが、どこにでもいる平凡な人間だ。そして、そういう平凡な自分も、ありふれた日常も、俺なりに楽しんで受け入れている。

 そう。今年の春、あの女に会うまでは、そう思っていたし、信じていた。


 東京と神奈川県の境に、その都市はある。

 黒曜市(こくようし)と呼ばれるその街は、その三分の二が巨大な学園の敷地だ。

 街を飲み込もうとしているその学園の名は、私立黒曜(こくよう)学園。

 この巨大な学園は、幼等部、初等部、中等部、高等部、大学部、大学院まであり、ショッピングモールや大学部に付属した病院施設もある。

 生徒、教師、学園施設で働く者たち、何百人どころか、何万人もの人間が集まっており、クラスメイトの顔を覚えるのがやっとだ。

 この馬鹿みたいな巨大な学園を作ったのは、学園の名前も冠している黒曜一族という世界的な富豪の一族だ。理事長は黒曜一族の当主が務めており、学園にも黒曜一族の人間が通っている。

 世界的な富豪が作った学園だからこそ、生徒も金持ちの子供が通っているのだろうと勘繰(かんぐ)る人もいるかもしれない。

 だが、実際は、階級はあまり関係ない。確かに富豪の子供も通っているし、政治家や巨大企業の社長の子供などもいる。

 しかし、パンフレットによると、学園の約四割の生徒は奨学生として受け入れているそうだ。

 ただし、この奨学生制度は結構厳しい。相当頭が良くなければ、まず合格できない。

 だからこそ、この黒曜学園の生徒は勉強のできる生徒が多く、自然と偏差値も高い学校で有名になる。


 俺が育ったのは、そんな黒曜市だった。

 とは言っても、俺は学園に飲み込まれていない方の街にある都立の学校に通っていた。黒曜市に住みながら、俺が黒曜学園に関わることはないと思っていた。

 だが、事態は急変するのである。

 正直、俺には不相応の学校だと思っていた。

 しかし、本格的に海外で仕事をしようと決意していた両親と歳の離れた姉貴の勧めで、黒曜学園を受験することとなった。

 姉貴も黒曜学園の卒業生だった。

 黒曜学園なら、家から近いし、学園施設もしっかりしている。さらに幅広い交友関係も築けるというのが、姉貴の言い分だった。

 親父とお袋は、俺を寮に入れようと思っていたらしいが、姉貴のおかげでそれは免れた。

 姉貴のスパルタ的な家庭教師のおかげで、俺は何とか合格することができた。

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