小説『都市伝説.com』
作者:海猫()

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 学校から帰ると、俺はすぐにパソコンを起動させる。

 繋ぐのは当然『エンドレス・エデン』だ。

 画面に現れた文字に笑みを浮かべる。


 ようこそ! エンドレス・エデンへ! オスクリダ様はエリア9に待機中です!


 俺はエリア9から、適当に別のエリアを選択した。

『オスクリダ』の出現に、プレイヤーたちが慌て出す。それをおかしそうに見ながら、俺は向こうが攻撃態勢を整える前に、攻撃する。

 先手必勝とは、よく言ったものだ。

 最初に致命的なダメージを与えておけば、何人でかかって来ようと、魔王が勝てる。

 実際、決着は五分とかからずについた。そして、他のプレイヤーが駆けつける前に、さっさと別のエリアへ飛んだ。


 実は『オスクリダ』は、一年前から存在している。最初は俺も魔王になるつもりはなかった。

 だが、それなりにレベルが上がった頃、魔王に襲われたのだ。

 幸運だったのは、当時パーティーを組んでいたため、魔王の攻撃が分散し、隙をついて倒すことができたことだった。

 そして、その時、倒した俺に、魔王の経験値が手に入った。

 飛躍的にレベルが上がったのに、俺は浮かれた。

 魔王を選ぶ奴の気持ちがわかった。俺はパーティーを抜けて、魔王になった。

 勇者を倒す方が、モンスターを狩るよりもずっと楽しい。モンスターを狩るより、自分が強くなっているのが実感できるし、モンスターと違って、予想外の攻撃を繰り出してくることも多い。

 俺は勇者を狩ることに夢中になった。

 いつの間にか、『オスクリダ』の名は有名になり、魔王の一人として、警戒されるようになっていた。

 それが都市伝説みたいな存在になったのは、受験がきっかけだった。

 勉強に集中するため、一日十五分から二十分の短時間で借りをしていたため、情報を得て駆けつけても、すでにログアウトした後ということが多く、実在するかもわからない存在になってしまった。

 俺はそれを利用して、存在するかもわからない都市伝説のような存在に化けることにした。

『オスクリダ』の名が有名になるほど、妙な高揚感を抱くようになった。

 俺は魔王であることに罪悪感など持たなくなっていた。

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