「おわっ!?」
「もぉ! 宝楽ってホントいい奴!」
「それはいいから、離れろって!」
斎姫が抱きついてきたせいで、クラスメイトが何事かとこっちを見てきてる。妙な誤解を招きたくなくて、斎姫を引き剥がそうとするが剥がれない。
だが、唐突に斎姫と引き剥がされた。
間に割って入って来たのは、頬を膨らませた愛実だった。
ああ、すっげー嫌な予感がする。
「イチャついてんじゃないわよっ! 宝楽は私のだって言ってるでしょ!!」
「いつ、あんたのものになったのよ? 勝手ばっか言ってると、捨てられるわよ」
またいつもの口喧嘩が始まった。
俺はさっさと自分の席に戻って、頬杖を突くと、大きなため息をつくのだった。そのうち、俺に飛び火してくるんだろうが、一先ずそれまでは、傍観者になったって、文句を言う奴はいないだろう。
こうして、俺は再び日常を謳歌するのだった。
『路地裏の魔王』終