小説『ソードアートオンライン〜2つのスキルを持つ蒼の剣士〜』
作者:レイフォン()

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第35話 お礼


アスナがユニークスキルを手に入れて数日後。
俺達のギルドホーム前に訪問者が訪れた。


「すいません。こちらに元ギルド『五虎(フィフティ・タイガー)』の方々がいるとお聞きしたのですが」


1人の女性の声が外から聞こえてきた。
丁度、お茶をしていたユウトは目をパチクリしながら扉を開けた。


「はい。元ギルド『五虎(フィフティ・タイガー)』のリーダーのユウトです……が?」


ユウトは自分たちへの訪問者を見て驚いていた。


「あ、あなたはあの時の!」


ユウトを始め、バーグ・ウェザ・レイナ・ハクロが驚き、入ってきた女性を見て驚いていた。
知り合いか?俺達と会う前の。


「その節はお世話になりました」


ユウト達にお辞儀をする女性。


「い、いえ。僕達は自分のしたい事をしただけですから」


……ユウト、お前相手が美人で戸惑っているな。
レイナとかが睨んでいるけど。


「いえ、あれからギルド『五虎(フィフティ・タイガー)』のことを探しても見つからず、ようやく『蒼光の軍
勢』に入っている事をつきとめたんです」


お礼を言うためだけにそこまでしたのか……礼儀正しい人ってことだな。
ん?彼女の後ろに誰かがいる。


「ほら、あなたも」


「うわ、ま、待ってくれグリセルダ」


なんとも優しそうな男性が出てきた。


「す、すまなかったね君達。君達が危険な目に合ったことは……私に責任がある」


「え、えっと……どういうことですか?」


ユウトが男性に聞く。


「じ、実は……」










男性の名前はグリムロック。ユウト達が助けたグリセルダの夫であり、現実世界でも夫婦関係がある人だった
。殺人ギルド『ラフィン・コフィン(笑う棺桶)』がグリセルダさんを狙ったのはグリムロックさんが依頼し
たからだそうだ。


アスナはそれを聞いて何で妻であるグリセルダさんを暗殺させようとしたのかを聞いた。
するとグリムロックさんはデスゲームに巻き込まれたことで変わった己の妻へ嫉妬にも似た歪んだ思いを抱き
、たまたま倒したレアモンスターから敏捷力を上げる指輪をドロップした指輪をギルドで使う意見と売って儲
けを分配する二つの意見が割れ、最終的には多数決により売却する事に決定し、それを利用し、指輪事件でグリセルダさんを殺害しようとしたんだそうだ。


それを聞いてアスナはグリムロックさんを叩こうとするのを俺が止める。
アスナは何でって言う表情で俺を見たが、俺の顔を見た叩こうとするのをやめる。


そして、今度は俺が言う。


「グリムロックさん。グリセリダさんが変わったのは現実では味わえない事を夫である貴方と共に過ごしてい
ける事が嬉しくなり、少しでもいいから現実とは変わりたかったんじゃないんですか?」


「っ!」


「怯えている貴方を早くこのゲームをクリアし、また現実で楽しい暮らしをしたかったじゃないんでしょうか
?」


「……」


俺が言うと黙るグリムロックさん。
グリセルダさんは俺が言っている事が当たっているのか少し顔を赤くしている。図星なのだな。


「私は嫉妬していたんだ。このゲームが始まってから少しずつ変わっていく妻に……それが過ちだった。それ
に気づかされたのも妻に言われてからだった。ユウト君とその仲間の皆さん。本当にすまなかった」


土下座をするグリムロックさん達。


ユウト達はそれを見ると


「謝らないでください」


そう、ユウトが言う。すると顔を上げるグリムロックさん。


「確かに僕達はその後、危ない目に会いました。けど……」


俺とアスナを見て笑う。


「僕達はレンさんとアスナさんに会う事ができました」


バーグ達は頷いている。


「あの出会いがなければ僕達はここにはいませんでした。グリセルダさんとの出会いは僕たちにとって分岐点

だったんです。感謝はしていますが、謝れることはありませんよ」


クスリっと苦笑するユウト。


それを聞き、泣くグリムロックさん。


「ありがとう……」


笑顔でお礼をしてくるグリムロックさん。


「あのひとついいか?」


俺は気になっている事を聞く。


「何でしょうか?」


「貴方は先ほど、ギルドと言ってましたが、ギルドのメンバーはどうなったんですか?」


俺は2人に聞いた。ギルドメンバーはどうしたのかを。すると


「ギルドはこの事件後、解散しました。指輪を売却したあと、均等に分けあって」


「私達2人を含めた10人はその後、3人は青竜連合に入りました。残りの5人は今は5人でパーティーを組んでレ
ベル上げなどをしているはずです」


とのことだ。


「なるほど」


「今日はお礼を言いに来たので、これで失礼しますね」


グリセルダさんはグリムロックさんと共に帰っていった。







2人が帰っていった後、


「僕達がしていたことでお礼を言いに来る日が来るなんてね」


ユウト達は自分達がしたことにわざわざお礼に来てくれるとは思っていなかったので驚いている。


「いいんじゃないか?お礼を言われて悪い気分じゃないんだろ?」


俺が聞くと5人はもちろんと笑顔になった。


「なら。あの2人の分まで俺達が頑張って早くリアルに帰れるように努力をしよう!」


『オー!』


より攻略に意気込む俺達であった。




――――――――


お待たせしました。
コメントにあった通り、グリセルダさんを登場させてみました。
次回から3話ほどは番外編を書こうかと思っています。

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