小説『赤い女』
作者:たまちゃん(たまちゃんの日常サタン事)

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男同士何人かで飲んでいて、

ひょんな事で【女房話】になったそぅです。




「いや、家の嫁が怖くてさぁ。。。」

「何だ、お前!

尻に敷かれてんのか?

ま、俺も人のこと言えないけどな。。。」




そんな中、田中さん(仮名)が、

ボツリボツリと語り初めたんです。。。



「ウチの女房もさ。。。怖いんだよ!」







この田中さん、学生時代から野球をやっていまして、

現在も社会人野球部に所属していましてね、

そんな昔からやってるもんで、

田中さんのファンの娘とかも、いたそうですよ。

その日も野球の試合で、

グラウンド借りましてね、やってたんですが。。。






ザァー!






すごい雨ですよ!

暫く待ったが、やむ気配も無いんで試合中止になった!

相手チームも、自分チームもね、みんなパラパラ帰っていった。





で、田中さんと、友人が最後に残った。

道具を片付けていますと、友人が。。。


「おい、また来てるぞ!」


言うんです。

見ると、田中さんのファンの娘なんだ!

ショートヘアーで、すっとした顔立ちの、

美人なんですよ。




でもね、

つばの広い赤い帽子、

赤い口紅、

赤いスーツに赤いハイヒール、

バックネット裏にいつも立ってる。

網をつかんでいるその指の爪にも、

真っ赤なマニキュアが塗られている。




仲間内では

【赤い女】

って呼んでいるんです。




「よっぽど熱狂的なファンだな?」

「でも、気持ち悪いぜ。。。」



だって雨の中なんですよ!

びしょぬれで田中さんを、

無表情な顔で、じっと見つめてるんだ。




異常ですよ!




でも反面、

こんな雨の中でも

自分を見に来てくれているんですからね、

悪い気はしないんだ。

それで帰る時にね、田中さん彼女に軽く会釈した。




そしたら赤い女が、にぃ〜って笑った!




田中さんさすがに気味悪くなって、

車に乗り込むなり

エンジンかけて発車したんです。




実は、このグラウンドのすぐ裏が

国道になってたんだけれども、

横の道は一方通行で、

グラウンド添いの道を、

グルリと一周しなければ

国道に出られないんですね。




それで一番最初の角を曲がると信号があったんで、

車を一時停止した。




とにかくすごい雨なんだ!

ワイパーをシャッと横にスライドさせた時だけ、前が見える。


シャッとなった瞬間!





「おい!あいついるよ!」





友人が叫んだ!

見ると…

赤い女がグラウンドの金網の向こうからジッとこちらを見てる!




実際、バックネット裏から、その場所に来るのは不可能ではない。


グラウンドを、ななめに突っ切ればいいんです!

しかし、

女性の足でしかも、

ハイヒールで、

グズグズにぬかるんだグラウンドを走るなんて、

どう考えても不可能だ!





「何なんだ?あの女?」

「分かんねぇよっ!あんま見んじゃねぇよっ!」





車の中は、パニックですよ!




怖いもんだから田中さん、

アクセル思いっきり踏み込んで、

次の角を曲がって国道の手前まで出た!





「あいついるよ!あいついるよ!」





赤い女だった。




グラウンドの端まで来てるんだ!





「何なんだよ?何なんだよ?」

「見んじゃねぇよ!見んじゃねぇよ!」





車をとばして家まで帰ったそうです。。。

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