「蒼」
「ん?」
「好き」
「…うん」
面と向かって言うのは初めてなのに、何の抵抗もなく言葉が流れる。
蒼は一言返事をし、優しく微笑む。
「好き、蒼が好き」
「うん」
「蒼と一緒にいたい」
「うん」
俺の口からは止め処なく言葉が溢れる。
この言葉一つ一つは全て本物で、この二年間色褪せることのなかった、むしろ強くなった想い。
「…蒼の、隣にいさせて」
返事はない、けれど…。
少し照れたように優しい笑みを浮かべる彼の表情が、全ての答えだ。
彼へと手を伸ばす。
腕を掴んで自分の方へ引くと、蒼は抵抗せずに先ほどのように俺の胸へと収まった。
さらさらと流れるような黒髪も、服越しに伝わってくる体温も、懐かしい彼の匂いも、彼の全てが俺の胸を高鳴らせる。
「…抱き締めて、いい?」
「もう抱き締めてるじゃん」
「…もっと…」
子供のように強請る俺に、蒼は笑みを零す。
「…いいよ」
蒼の返事を聞くと同時に、腕の力を強めた。
愛しい、ただその想いが俺の胸の内を満たした。
「お前、身長伸びたな」
「うん、蒼まであと一センチ。抜けなかった」
けれど、彼を抱き締めるには十分な身長だから、特に不満はない。
「直也」
「何?」
「…好きだ」
蒼の告白と同時に、俺の腕は無意識の内に力が入る。
痛い、腕の中で小さくそう呟かれたが、しばらくはこのままでいたい。
俺達の再会は感動で涙するようなものでは無く、何だか味気のない…けれど温かで、心の内を満たされるような、そんな感じ。
それが俺達なのだと思う。
けれど、変わったのだ。
以前とは絶対に違う二人。
それでもずっと一緒にいたいと思う、愛しいと思う、だから再び共にいる。
俺の大好きな彼が隣にいる、俺の大好きな彼の隣にいられる。
その事実だけで、他にはもう何もいらない。
『君の隣で、』完結