小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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私が人と関わりを持つのを怖がったのはいつだっただろう?
人と話したい触れたいのに私自身が距離を置くようになったのはいつだっただろう?
あぁそうだ・・・・
寒い冬の時だったけ・・・・
私は小さい時から母から言葉の暴力と身体的暴力を受けていた。
だけど流石に小学二年生になると自分の母親が他の母親と違うことに気づいた。
だからある日私は母に聞いた。
「どうしてお母さんは私に叩いたり、ひどい事を言うの?」
母は大声を張り上げながら言った。
「そんなのあんたの事が嫌いだからに決まってるじゃない!死んで欲しいくらいよ!」
私は震える声で聞いた。
「なら何で私を生んだの?捨てれば良かったのに・・・・」
母は悔しそうな表情で言った。
「私はあんたなんかたく産みたくなんかなかった。なのにあんたの父親が引き取るから産めって言ったから産んだのよ!なのにあんたの父親は産まれてあんたが女だと分かった瞬間にいらないてっ言ったのよ!
だから私はあんたを直ぐに施設に入れたわ!なのに私の身内があんたを産んだのは母親である私だから育てなさいなんてほざいたのよ!あんたなんかが生まれて来たから私の人生無茶苦茶にされたのよ!あんたなんて死んでしまえば良いのに!」
あぁそうなんだ どんなにお母さんが好きでもお母さんは私の事が好きじゃない
なら せめて お母さんの邪魔にならないように死なないと
そう思った瞬間私は家を出た。
寒い中裸足で死に場所を探した・・・・
ふと近くに海があるのを思い出して海に向かって歩いた。
私は固まった海に着いた瞬間に・・・・
夜の海がこんなに綺麗だとは思わなかった。
私は吸い込まれるように海に向かって歩いた。
冷たい水に体を浸した。
もう直ぐ頭までと言う所で私は心の中で叫んだ。
死にたくないと・・・・
私は急いで岸に向かって走った。
岸に着いた瞬間に私は生きようと思った。
だけど生きる代わりに私は二つ大切な者を自分で心の奥底に封印した。
一つは痛覚
もう一つは人との関わり
また捨てられるのが怖かったから・・・・
私はその日から母に殴られようとも痛みを感じなくなった。
それから友と全然話さなくなった。
そのまま私は小学校を卒業して、中学校に入学した。
相変わらず中学校に入学しても私は友を作らないまま卒業した。
私は高校に行かず卒業して直ぐに住み込みの仕事を探した。
だけど中々15歳で住み込みの仕事は無かった。
私はいつものコンビニで求人情報誌を読んでいたら、気になる求人を見つけた。
寮完備の風俗だった。
私は直ぐに電話をする事にした。
何故なら風俗なら私にも出来ると思ったからだ。
あまり話さなくても良いし、相手を満足させれば良いだけの事だったからだ。
私は小学生の高学年の時から母が生活費を置いていかず家を出ることがあったので、よく近所の男達からお金や食料を貰っていたから、男たちを喜ばす術は知っていた。
だから私は電話を掛けた。
プルルル ガチャ 「はいもしもし」
野太い男の声が聞こえた。
「あの求人を見たんですが、まだしてますか?」
「あぁ、まだ求人してますよ。面接とかできますか?
「はい」
「じゃあ明日の夜八時とかどうですか?」
「大丈夫です」
「そうですか。じゃあ夜八時に店の場所とか分かりますか?」
「分かります」
「じゃあお名前だけ聞いても良いですか?」
「はい、坂口です。」
「坂口さんですね。分かりました。じゃあ明日夜八時に宜しくお願いします」
「はい失礼します」
そう言って私は電話を切った。
やっぱり面接は夜なんだなと思った。

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