小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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けんたの消えた一番卓で私は我慢していた涙を流した。
全てを無くした。
何もかも無くした。
暖かいけんたの体も沙耶の優しい微笑みも・・・・
大丈夫。
まだ私は頑張れる二人のおかげで・・・・
二人から愛されたいけど、愛されるのが怖くて自分から壊した。
なんて卑怯な自分なんだろう?
愛されたくてしょうがないのに愛されたくないなんて・・・・
私は帰ってから荷造りを始めてまた涙を流した。
次の日に風俗の店にも雀荘にも店を急な都合で辞めると言った。
とりあえず一週間はこの寮にいても良いらしい。
私は次の職場は簡単に見つかった。
それに私が生きていくための家も。
だけど寮を出る一日前でも二人から離れる事を考えると涙が流れた。
コンコン
玄関のドアを叩く音がする。
誰だろう?
私の部屋を訪れる者など誰もいないはずなのに・・・・
玄関を開けると誰もいなかった。
だけど玄関の入り口には一つの手紙があった。
差出人を見ると名前は書いていなかった。
便箋を開けると私は呼んだ。
「悪かった。あの時はお前に酷い事を。だけど次の日に沙耶に泣かれたんだ。別れてくれてっこのままじゃ駄目だてっ言われたんだ。お前の事はまだ許せないけど、なるべく沙耶に捨てられないように頑張るよ。
一応母親の事は俺が黙らせておいたから何もされないとは思うけど、気をつけろよ。じゃあなお互いに幸せになれる事を・・・・」
差出人は書いてなかったがけんただと分かった。
余りに嬉しくて手紙を抱きながら私はまた泣いた。
その夜は私は涙が枯れるくらい泣いた。

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