小説『愛されたくて愛されたくない』
作者:水士()

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沙耶から相談を受けた夜に雀荘で仕事をしていたら。
珍しい人物がやってきた。
けんただ。
最近雀荘に顔を出さなくなっていたから珍しいと思った。
店に来てからけんたはしばらくお客さんと麻雀を打っていた。
お客さんが少なくなると私の方に寄ってきた。
「ちょっと話があるんだけど・・・・」
「分かりました。一番卓で待っていて下さい。後で向かいますから」
とうとう来た。
多分私がこの前店で言った事がバレたのだろう。
私は泣かずにいられるだろうか?
多分けんたの顔が見られるのは今日までだろう。
そう思いエプロンを外し一番卓に向かった。
「失礼します」
ドンッ!
中に入った瞬間私は壁に追い込まれた。
けんたの怒った顔初めてみたな・・・・
目の前にはけんたの顔があった。
「どうして裏切った?裏切ったら許さないてっ言ったよね?」
「さぁどうしてでしょうか?だけど私は二人の事は誰よりも好きですよ」
「ならなんで!!」
けんたの声が大きくなった。
私は何も言わなかった。
「何で店の連中に言った!もし沙耶の耳に入ったらどうなるか分からなかったの?」
分かっていたよ・・・・
沙耶が悲しむことさえ。
だけど私はもうけんたとの関係も沙耶との関係も続けられそうに無かった。
私の歪んだ感情で二人をボロボロにしそうだったから・・・・
「本当にお前が男だったら殴っていたよ。とにかくこれで知花とは終わりだな。何も言わないんだな・・・・」
何か言ったらあなたは私を愛してくれる?
それは無いでしょう?
なら私だけが悪者になれば良い。
けんたは私の前から消えた。

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