【後日談】
「流川、ちょっといいか。」
担任の教師である小島梅子に呼ばれて、ついていくと。
そこは学園長室だった。
「連れてまいりました。」
「ふむ……、流川海斗。何故呼ばれたかはわかっておるな。」
「あのマロマロいってる奴関係か？」
「流石に殴るのはまずかったの。大体、そこにいた３人の生徒に事情は聞いて
おるが、暴力であることにはかわりない。何のペナルティもなしでは、他の生
徒に示しがつかんのでの。残念じゃが、罰はうけてもらう。」
「退学ってやつか。」
「いや、流石にそこまではせん。今回の件はこちらにも非があることじゃしな。
しかし、停学は免れんかのう。」
「期間は？」
「それも今から会議で決めることになるじゃろう。なるべく軽くなるようにし
てやりたいが、何とも言えん。」
「はぁ、それで明日は来てもいいのか？」
「どんなに早くとも明後日からじゃ。明日は普通に登校するとよい。」
「話はそれだけなら、もう帰るぞ。」
「あまり気を落とさんようにのぅ。」
「言える立場かよ。」
ドアを閉めて出ていった。
そして、ドアの前には４人の女生徒がいた。
一子、クリス、京、由紀江。
風間ファミリーほとんど勢揃いだ。
「ちょっと、今のどういうことなの！海斗！」
「海斗さん、停学というのは…」
「悪いことでもしたのか。」
驚きと困惑を浮かべているクリス、一子、由紀江の三人。
その中で京だけが申し訳なさそうにしていた。
「ごめん、海斗。私のせいで…」
「だから、あれは俺がムカついて殴っただけだって。京関係ないだろ。」
「でも……」
「え？ちょっと待って。何があったの？」
話の状況が全く分からない三人に京がかいつまんで説明する。
「それ、海斗何も悪くないじゃない！」
「ああ、海斗は正義の行いをしている。」
「はい、今の話を聞いて私ますます納得がいきません。」
「気持ちは嬉しいけど、それだと示しがつかないんだとよ。」
「……なら、署名を集めよう。」
京がそんな提案をした。
「なんだか分からないけど、ナイスアイデアな気がするわ。」
「確かにそれなら効果的ですね。」
「自分も賛成だ。しかし、停学は早ければ明後日からだぞ。間に合うのか？」
「くくく、これは海斗が学校に来れるためだよ。人手には事欠かない。」
「あー、そういうことね…。」
―放課後
校門前、廊下、昇降口、学校の至るところで署名活動が行われていた。
「そこの者、ただちにこれを読み記入しなさい。」
「流石だ、マルさん。頼りになる。」
マルギッテとクリスが。
「うぇーい、蝶々だ〜。」
「ちゃんとやってよ！」
小雪と一子が。
「どどど、どうすればいいんでしょうか。」
「だいじょぶだよ、まゆっち。落ち着いて。」
由紀江と伊予が。
「あいつが来ないと戦うチャンスがなくなるからなー。お！そこの可愛いおに
ゃのこ書いていけ！」
「なんで俺様までこんなことを…」
「優しいとこアピールすれば、モテるよガクト。」
「京に上手いこと乗せられてるなー。」
「よーし、俺はもっと多く集めてやるぜ。競争だ！」
「どれだけ子どもなんだ。」
京と風間ファミリーの皆が。
「この私がプレミアムに貢献するわ。」
「署名をお願いするで候。」
「流川先輩を助けるためなんです、お願いしまーす。」
他にも弓道部や流川海斗ＦＣの人たちも。
これだけ大勢の人が海斗一人のために動いていた。
「やっぱり海斗は凄い。」
京はそんな光景を見て呟く。
人を惹きつける力。
その人間性に自分もまたおとされたのだと。
「ふふっ、だが最終的にその心を奪うのは私。」
ここら辺が他とは一味違う彼女の強いところだった。
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次の日、学園長室にて。
「学園長、今朝流川海斗の処分に反対する署名が提出されまして……」
「ふむ、残念じゃが一部の生徒の意見で覆すわけにはいかんのじゃ。」
「それがですね、全校生徒分ありまして。」
「なんじゃと！？」
紙の束。
その厚い積み重ねは昨日たった一日で集められたもので。
「これはしょうがないのぅ。示しをつける生徒がおらんのじゃから。」
まさに信頼と人望の結晶と言ってもいい。
署名を書いてくれる人がいて、集めてくれる人がいる。
当然、海斗の停学はなくなったという。
『愛の勝利だね、ぶい。』