小説『アットノベルスの真実』
作者:rakatonia()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

10月6日土曜日、シンは、そのサイトに『バッドノベルス ビフォー/アフター』という提案型の書き物を投稿し、その本文に追記として、他のアドレス流出被害者に呼びかけた。

 追記
 上記提案とは関係のないことですが、2012/07/18 (水) 13:00にバッドノベルス運営からメールを受け取られた方、いらっしゃいませんか?
 その宛名欄に、自身を始めとする大勢の方の個人メールアドレスが載っていませんでしたか?
 シンのところに来たメールには、恐らくBCCとCCを間違えたのではないかと思えるメールが届き、たくさんの方の個人アドレスが載っています。
 同じメールを受け取られた方、確認のために本文コピペの上、下記までご連絡をください(本文のみのコピペで結構です。宛先にあるたくさんのメールアドレスは要りません。外部に漏れる危険もありますので、絶対にコピペはしないでください。良識のある方は、削除をお願い致します)。
 申し訳ありませんが、メールを受け取っておられない方は、この件についての問い合わせはご遠慮ください(混乱を避けるためです)。と、シンさんは追記した訳だがそれに対する運営の対応がすさまじい物だった。

2ページ目の更新をした後、それは起こった。
 IDを入力し、パスワードを打ち込んでも、マイページに入ることが出来ないのだ。
 また、同じ入力画面に戻されてしまう。
 何度やってもそれは同じで、自分のマイページに入ることが全く出来ない。
 ――もしかして。
 おれは、トップ画面左下の、ジャンル別小説からシリアスを選び、クリックした。
 衝撃だった。
 ついさっきまでそこにあった、自分の小説が、きれいさっぱりなくなっている。
 何の警告もなく、何の事前通達もなく、おれの口を封じるために、運営が登録を抹消したのだ。
 最初に思ったのは、やはり、借りていたイラストを消しておいてよかった、ということだった。
 もし、消さずに残していたなら、このサイトのクリエイタ―ズアートに作者不明で残り続け、誰かに無断使用されていたかも知れない。
 おれはそのイラストを借りる時に、
『大切に扱い、決して誰かに無断使用されることがないよう、万全の注意を払う』
 と約束したのだ。
 それが守れたことに、ホッとした。
 もちろんそれは、相手が常識のない行動を取って来る、と予期していたからでもある。
 サイトの規約上は許されても、社会的に許されない行為を――。

シンが、メールの流出被害者に呼びかけた途端の登録抹消――。
 体中が震えだすほどの薄ら寒さを感じた。
 ――俺は、こんなことを平気でするような人間のサイトに、登録していたのか。
 ご丁寧に、誰かが検索をかけても読まれることがないよう、キャッシュまで削除されている。
 こうまでして、この件を伏せておきたかったのだ。
 もちろん、これは、おれの推測である。向こうが何の意図を持ってキャッシュまで消したのかは判らない。
 だが、この件の揉み消し以外に、キャッシュまで削除しなくてはならない理由が、他にあるだろうか。
 しかも、今までの対応の鈍さとは打って変わった素早さだ。
 指先が痺れ、頭の中まで、その痺れが伝わっていた。
 だが、グズグズしてはいられない。このことを他の人たちに伝えなくてはならない。
 幸い自分には、このサイトの他にも、文章をかける場所がある。
 一刻も早く、皆にこの非社会的な出来事を伝えなければ……。

こうして、隠された真実が動き出したのです。

-5-
Copyright ©rakatonia All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える