小説『真剣でD×Dに恋しなさい!『完結』』
作者:ダーク・シリウス()

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最終回―――未来へ



―――レーティングゲームから数日後



「・・・・・っ」


一人の男が顔を顰めてゆっくりと目蓋を開ける。ボンヤリとした視界に真紅が入った。


「・・・・・気が付いたようだな」


「・・・・・」


「・・・・・我が解るか?」


視界が少しずつ正常になり真紅の正体が解った


「ガイ・・・・・ア・・・・・?」


「ああ、そうだ」


愛おしそうに一誠の頬を撫でる。その手に触れて一誠は脳裏にレーティングゲームの事を思い出す


「そっか・・・・・負けたか、俺は・・・・・」


「お前だけではない。我とオーフィスも一緒に負けた」


「ゾラード達は?」


「既にお前の中にいる。ブラフマーに至ってはお前の胸元にいるぞ」


『『主・・・・・』』


『イッセー!良かったぁ・・・・・!』


『ようやく目を覚ましたか』


と心や胸元から声が聞こえた。


「ここは・・・・・?」


「我等の船の中だ」


「・・・・・元の世界に戻っているのか?」


「ふっ」


「・・・・・?」


「それはこいつらを見れば解る事だ」


ガイアは静かにドアに近づき―――開けた


『わっ!?』


ドスンッ!


「・・・・・」


「まったく、貴様等は気配を隠しきれていないぞ」


ガイアは呆れた声音で一誠の部屋に入ってきた人物達に向かって言った。一誠は思わず苦笑を浮かべた


「・・・・・そうか、俺達はまだこの世界にいるのか」


「そう言う事だ」


ムクリと一誠の部屋に入りこんだ人物達は―――瞬時で一誠に近づいた


「「「「一誠さん!」」」」


「イッセーさん!」


「先輩!」


「「「「一誠!」」」」


「一誠君!」


「久しぶりと言うべきか?冬馬、準、ユキ、ユミ、燕、百代、揚羽、辰、由紀江、伊予、梅子」


「うん!久しぶりだね!」


「やっと起きてくれたか、こっちは大変だったぜ?」


「そうですね、貴方が中々起きないのですからユキが準に八つ当たりしていたんですよ」


「一誠さん!傷は大丈夫ですか!?具合とか悪くないですか!?」


「ああ、別に何ともないけど・・・・・いや、まだ身体が動けなさそうだ」


身体を動かそうとするがピクリとも動かす事が出来なかった為、ガイアが一誠の体を起こしながら苦笑した。


「サマエルの毒は我等の方まで浸食してきたからな。我等も気が付いた時には苦労をした。サマエルの毒で

しばらく身体が動けなかったからな」


「一誠・・・・・悪かったな・・・・・サマエルの毒があんなにお前を苦しめるものだとは・・・・・」


「もう済んだ事だ。だから気にするな」


「一誠・・・・・」


「はぁ・・・・・それにしても、家族以外で負けたのは生まれて初めてだ」


「ふふっ、それは嬉しい事だな。我等が一番乗りという事だな?」


「そう言う訳だよ。あー、まだまだ俺は弱いようだな。もっと修行をしなくちゃ」


「うむ。敗北を糧として成長をしようという向上心は良い事だ」


「梅子・・・・・名前を呼んでくれたら嬉しいんだがなぁ・・・・・」


「うっ・・・・・い、一誠・・・・・」


「うん、梅子・・・・・」


「一誠くぅ〜ん!」


ボスッ!


「ぐふっ!?」


「ん〜、久しぶりに一誠君の温もりを感じれるよ〜」


「おい、貴様。一誠から離れろ」


「やだ〜」


「・・・・・」


「あわわわ!辰子さん!ガイアさんが怒っていますから離れましょうよ〜!」


「・・・・・名前を呼ぶほどの仲に成ったのか?」


「ん?ああ・・・・・お前が寝ている間にこいつらが毎日お前の見舞いをしに来るもんだからな」


「そっか・・・・・ありがとうな」


「そんな、イッセー先輩が中々目を覚まさなくて心配だから私達はお見舞いしに来ただけですよ」


「伊予」


「はい?」


「これからは由紀江と同様、イッセーと呼んでくれないか?」


「ええっ!?」


「無理なら『さん』を付けて行っても構わない」


「え、えっと・・・・・じゃあ、イ、イッセー・・・・・さん」


「ああ、急に言われても成れないだろうが少しずつ呼んでくれれば良いさ」


「はい・・・・・」


「一誠さん、本当に目を覚ましてくれて安心しましたよ」


「ユミ・・・・・?お前、口調が・・・・・」


「はい!もう、本当の私でいようと決意しました!これからは素直で皆と接するつもりですよ」


「ユミがこんな奴だと知った時は驚いたぞ。クールなユミが優しそうな女の子に変わったんだからさ」


「うふふ、実を言うと私とユキちゃんは知っていたんだけどねぇ〜」


「私と弓道部の部員達も矢場が仮面を被っている事を知っている」


「俺もそうだな」


「なっ!私だけ知らなかったというのか!?」


「私はなんとなくですね」


「俺もそんな感じか?」


「全然知りませんでした・・・・・」


「私もだよ・・・・・」


と、矢場弓子の本当の性格と素顔の事で盛り上がったが一誠が拍手をして収めた


「さて、本題に入るぞ。お前達は見事に俺を相手して勝利した。―――改めて訊くぞ。

お前達の願いは何だ?」


元、川神・F・ドラゴンズは互いに顔を見合わせて頷いた。


「一つは一誠さん、貴方はこの世界に私達と一緒に暮らす事です」


「・・・・・」


「二つ、既に達成していますけどブラフマーさん、メリア、ゾラード、サマエルを許して

一誠さんと一緒に居させる事」


「最後は何だ?」


「―――最後は一誠さんの家族、『幽幻龍騎士団』もこの世界に住む事です」


「「・・・・・っ!?」」


燕の言葉に一誠は目を大きく見開くガイアに視線を送った。ガイアも衝撃だったのか一誠と同じように

目を見開いていた。


「私達が望む願いはこの三つです」


「・・・・・俺は兎も角、俺を探しに一緒に来てくれた奴等を元の世界に返したい。家族とはいえ本来は

別の世界に住んでいた奴等だ。その世界にいる親族も心配をしている筈だ」


「そうなんですか・・・・・」


「だから、最後の願いは―――」


「一誠、その事なんだが・・・・・我等が元の世界に戻る必要は無い」


「・・・・・なに?」


「一誠、お前がこの世界に暮らして数十年間の間に我等は色々と先の事を考え準備をしてきたのだ。

確かにこの地球に到着するまでは大変だったが再び我等が住んでいた世界に戻る為に宇宙へ旅立つ事は

しなくてもいいんだ」


「・・・・・まさか・・・・・直ぐに戻れるというのか?あの世界に・・・・・」


「ああ、ジェイルとダンタリオン、プレシアが創りあげた物がこの船とあの世界にある」


「―――っ!?」


「なんなら、久しぶりに帰ってみるか?今頃、あの世界は数年の時間が流れているかもしれんが・・・・・」


ガイアの問いに一誠は驚愕の色を染めながらでも首を縦に振った。


「うむ。では、行こうとしよう。貴様等もついて来い、既に貴様等も我等の家族であるからな」


一誠を横に抱き抱え傍に設置されている車椅子に乗せて部屋から出る。


「皆は?」


「既に帰宅する準備をしている」


「因みに戻る方法は?」


「それはあの場所に着いてから教えるさ」


そう言ってガイアは―――


「そら!」


「うおっ!?」


ドドドドドドドドッ!


車椅子ごと速く走っていった。


「あっ!ちょっと待って下さいよ!」


「私達を置いて行くなー!」


「フハハハ!なら、貴様等も走る事だなぁー!」


「よし、絶対に追い抜いてやる!」


「百代ちゃん、私達はまだこの船の構造が解らないんだから追い抜いちゃダメだよ!」


「取り敢えず走るとするか」


揚羽達は見失わないようにガイアについて行く。しばらくして巨大な扉が見えてガイアは一誠が

吹っ飛ばされないように少しずつ速度を落とし扉の前に止まった。


「ぜぇ、ぜぇ、や、やっと・・・・・」


「ふむ。体力の面では数人がまだまだのようだな。まあいい、入るぞ」


車椅子を押して扉に近づくと自動的に開いた。ガイア達が入ると部屋の中は様々な電子機器や機械が

置いてあり、白衣を着た男性達がいればナンバーズ達もいて電子機器を操作していた。


「凄い・・・・・本格的な操縦室だ・・・・・」


「これを風間の奴が見たら大はしゃぎ間違いなしだな」


「九鬼家の技術力ではここまでは作り上げる事は不可能だ・・・・・」


「うん?おお、一誠くん。ようやく目覚めたのかね?」


「えっ?あっ!イッセーが来ているっスよ!」


白衣の男性が声を掛けた途端に傍にいたナンバーズの一人が大声で他に電子機器を操作していた

ナンバーズに知らせた。一誠はガイアに指示して押してもらい、ナンバーズのところへと移動した


「皆、久しぶりだ」


「ええ、お久しぶり」


「まったく、起きるのが遅いんだよ」


「ノーヴェ、密かにイッセーの部屋に入りこんでいるのは知っているわよ?」


「っ〜〜〜!?」


「あっ、赤くなった」


「素直じゃないからね、ノーヴェ姉は・・・・・」


「うふふ、可愛いわぁ〜」


「さて、色々と話したい事があるけどジェイル。ガイアから聞いたけど本当に戻れるのか?宇宙に

旅立つ事もしないで」


「戻れるさ、ザナドゥや次元の狭間、冥界に設置してきたからね」


「方法は?」


「今、その準備をしているところだよ。娘達、持ち場に戻って準備を」


ジェイルの指示にナンバーズは戻って電子機器を操作する。


「あの、私達も本当について行っていいんですか?」


「勿論だ。唯一、ブラフマー達の力を借りたからと言っても我等に勝った人間だ。問題は無い」


「あはは、つまりブラフマーさん達の力を借りなければ私達は勝てないって事ですよね?」


「ふん、当然だ。特にサマエルは驚異的だ。サマエルに勝てるのはゾラード達3匹とブラフマーのみだ。

そいつらをお前達が力を貸してもらって我等と戦って勝利した」


「本当に私達って凄いドラゴンと神に力を貸してくれたんだね・・・・・」


「しかし、お前達には神器を宿している。もうこの世界にお前達が敵わない敵がいない」


「あー、それだとつまらないなぁ・・・・・世界のレベルを私達は超えちゃったのか・・・・・」


「だが、我等の『世界』はこの世界のレベルより高いぞ?様々な種族や能力を持った存在が星の数いる」


「よし!その世界の強者と戦うぞ!」


「少しは自制心を持てと何度言えば・・・・・」


「―――よし、準備ができたよ」


ジェイルが顔を一誠達に向けた。ガイアは頷き一誠に視線を送る


「ああ、それじゃあ―――久しぶりに帰るぞ。俺達の故郷へ!」


『了解!』


ジェイルとナンバーズ達が電子機器を素早く操作する


「エネルギー充電500%!」


「全てのシステムオールグリーン!」


「エラー無し、船内の故障個所も無いっス!」


「異次元空間のゲート、オープン!」


操縦席から覗ける空に突如、バチバチッ!と音を立てて空間が渦を巻きながら現れた。


「やばい・・・・!ワクワクしてきたよ!」


「さあて、一誠さんの世界の幼女が俺を待っている!」


「美しい女性もいるでしょうね・・・・・」


「一誠が強いと思っている強者と私は戦うぞぉー!」


「その世界で能力が高い者がいれば勧誘してみるとするか」


「ウェーイ!楽しみだよー!」


「ぐぅ・・・・・、ぐぅ・・・・・」


「やっぱり寝ていますね」


「あはは・・・・・」


「どんな世界なんだろう、楽しみだなぁー」


「向こうの世界とこの世界との時間はどのくらいだろうか・・・・・」


十人十色。皆、それぞれ色々な想いを抱き口にする。


「・・・・・ははっ」


「どうした?」


「―――ようやく、ようやく俺はあの世界に戻れるんだと思うと嬉しくてしょうがない」


「・・・・・一誠」


「ん?」


「んふ・・・・・っ」


ガイアが一誠の唇に自分の唇を押しつけた。船は目の前に歪んだ空間に進入していき

―――船全体が空間の中に潜って歪んだ空間が正常に戻って穴が塞いだ。


一拍して


『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?』


一誠に好意を抱く少女達は2人がキスしている所を見て悲鳴を上げた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――数十年後


「・・・・・」


とある男性がアルバムを開いて集合写真を見ていた。


「何を見ているんだ?」


「ああ、懐かしい夢を見てふと、このアルバムを見たくなったんだ」


「ふふっ、それか・・・・・懐かしいな」


「だろう?」


「あの頃は色々と楽しかったな」


「ああ、楽しんだり喧嘩したり大騒ぎしたりしていたな・・・・・」


「今でも変わらないけどな」


「だな」


「子供達はどうだ?」


「一生懸命、守りたいものを守る為に強くなろうと修行している」


「まだまだ俺達に勝てる気配はないけどな」


「それでも他の奴等を圧倒するほどの力を持っている」


ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


「・・・・・今の調理場か?」


「まさか、あいつらが・・・・・?」


ドタドタッ!―――バンッ!


「た、大変だよ!またキッチンが爆発したよ!」


「で、その原因は何だ?」


「えっとぉ・・・・・シャマルさんがまた・・・・・」


「「はぁ・・・・・・」」


「露骨に溜め息を吐かないで!」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


「今度はどこだ?」


「訓練室のようだね・・・・・」


「問題ないな」


「少々、力加減が下手のようだがな・・・・・」


「もう、この家で爆発が起きる事が日常茶飯事になっているよね・・・・・」


「たまには静に暮らしたいものだ」


「同感だ」


「ところで何を見ているの?」


「思い出の写真だ」


「なるほどねぇー」


「お父さん!」


「うん?」


「見て、見て!この魔法を使えるようになったよ!」


「―――って、この場所でその魔法を使っては―――」


「あっ」


「「・・・・・」」


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


瞬時でバリアを張って身を守った。煙が晴れる頃には子供が黒焦げで倒れていて部屋に入ってきた

男性も黒焦げになっていた。


「おい」


「は、はい!」


「部屋で魔法を使わすなと言ったよな?」


「ご、ごめんなさい!」


「後でシンシアに言っておく」


「そ、それだけは勘弁―――」


「和樹様?」


「っ!?」


「子供と一緒にこっちに来てください」


「・・・・・はい」


子供を魔法で浮かせて和樹と呼ばれた男性は眼鏡を掛けた銀髪メイドと共に部屋から出た。


「・・・・・ふう、俺達も子供達の方へ行くとしようか」


「うむ。そうしよう」


真紅の長髪を持つ女性が男性の腕に抱き付きながら一緒に歩を進める。


「―――ガイア」


「ん?」


「これから先も俺の傍にいてくれ」


「・・・・・ふふ、何を言っているのだ」


男性を自分の方へ向けて真紅の長髪の女性―――ガイアは


「我はずっと永遠にお前の傍にいるつもりだぞ?我が最愛の一誠よ」


一誠と呼んだ男の首に腕を回して自分から顔を近づけてキスをした。


「俺はお前を放すつもりはない」


「我もお前を放すつもりはない」


「「俺(我)は永遠の愛を誓いお前と共に生き続ける」」

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