小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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0話 対立





ここは…霊峰と呼ばれている場所。


主にそう呼んでいるのは人間達である。


その嶮しき山の頂上では…2つの影があった。


影の形からして、人ではない。


それは圧倒的な存在感である。


それらは…絶対的存在。


人間を支配する存在。


決して抗う事の出来ない存在である。


あまりにも…人間達との力の差があるため、人間をなんとも思っていない。


蟻に似等しい存在…


いや… 土地に住まい… その土地の自然を切り開くその姿を見れば…


この星に住まう病原体…害虫。


そうとしか感じられない。


故に、人の世界を滅ぼす事に何も感じない。


そして、積極的に根こそぎやろうとも思わない。


単なる憂さ晴らし?で王国をも滅ぼすことだってある。


人間は無数に存在している。


それこそ病原菌のように… 害虫のように・・・


全ては自らが思うがまま…


それらの影が動いた…


一体は翼のようなものを広げていた…


そう…かの存在は…


竜(ドラゴン)だ…


竜が人を支配する世界…


『…なぜその様な事を言うのだ?ゼルディウスよ… 我には理解しがたい…』


一体の黒き竜が翼を広げながらもう片方に問いかける…


片方の竜は何も答えない。


『お前もよく知っておろう… 人間の醜さを…いつの時代も…争う事しか頭の無い存在…いや頭の悪い害虫だ…』


その竜は続けた。


『そんな害虫(クズ)を滅ぼして 誰が困るというのだ?』


そこまで言ったところで…


片方の沈黙を守っていた竜が…話しだした。


『確かに… 貴様が言う事も正しい、人は 愚かな生き物だ。利己的で残忍で…冷酷で… そんな人間を見てきた。それも事実の1つだ。』


霊峰から下界を見下ろすかのようにそう言う。


『そうだ… その通り。我を呼ぶのはその邪念… 人の醜い部分があるからこそ、それを滅ぼしているだけだ… この星に住まう病原菌を駆逐する為に…な。なぜ… 同じ支配者(ドラゴン)であるお前がわが行いを否定するのだ?』


全く理解できない、


そう言わんばかりに言った。


『俺は…俺たちは人の影・・・闇の部分しか見てなかった事だ… 人は尊さを持っている。思いやりを・・・ 優しき心を・・・ 持っている。 俺は命の大切さを知った、それだけだ。』


そう言うと…もう一体の竜が反応した。


『だから・・・|あの時(・・・) 止めたのか… 自らを盾にしてまで。』


そう言うと… ゼルディウスはその巨体では不可能だと思えるほど静かに立ち上がった。


『闇と光… 相対する者はいつの時代も存在する。 俺は彼らを見たくなったんだ。だから… 無闇に滅ぼす貴様を止めた。』


そして、黒き竜の方をむく。


『害虫を…見るだと?』


『そう言ってくれるな… 彼らは害虫などではない、貴様は一部しか見て無さ過ぎなのだ。』


緊迫した空気が流れ出る…


そのにらみ合いは辺りに影響を及ぼす。


天は叫び…


大地は割れ…


まるで…世界が震えているようだ…


下界の人間達は恐怖に震えている…







人間 side


2体の竜がにらみ合ってるとき…


下界では大災害に等しいほどの衝撃が襲っていた。


町は揺れ…


巨大な王国の防壁には日々が入る。


天は怯えているような…怒り狂っているかのような…


雷を大地に降り注いでいる。


そして、ある山では大噴火が起きる…


そしてその火山岩、溶岩は辺りを燃やし尽くす・・・


「これは…」


1人の男が…空を見上げていた。


その先には…霊峰がある場所だ。


「また…1つの時代が終わるというのか…」


そう呟く…


「あれは…絶対的な存在… 抗う事は不可能なんだ… 彼らが止めないというなら… また…長い旅が始まる・・・」


その男は嘆いていた。


彼ら人間達を助けてやりたい…


せめて、争いの影響が少ない場所へ・・・


この災害の正体は恐らく、


絶対的存在たちの争い…


以前聞いたときは戸惑った。


あの存在が攻撃を仕掛けたとき、もう一体がそれを防いでいた。


この目でその瞬間を見た。


「クズとしか思ってない人間を・・・救う… そんなことあるのかと思ったけど… まあ 僕もいえないが。」


この男は命などかけらも想っちゃいなかったが命の尊さを知った・・・


それが…彼らの身に起きても不思議ではない…


「ありえない事はありえない… 信じ固くともそれはありえる事実・・・ か・・・」


そして、街から背を向ける。


「願わくば… あの争いに…巻き込まれない事を…願うよ… 僕は…また会えなかった…」


そう言って歩き出す…


「この時代でも…会えなかった…」


そして空を再び見上げる…


「会いたいよ…会いたい…」


その男が一歩・・・


歩くたびに… 生物…が死滅していく…


これは呪いか・・・


「ナツ…」



side out




下界が恐怖している…


(これ以上は…駄目だ。)


そう悟ると…


殺気・怒気を止める…


『なんだ… 気が変わった…ということか?』


黒き竜はそう聞いていた。


『違うな・・・俺はこんな事をする為にここに来たわけではない。俺たちの争いは世界を滅ぼしてしまう。そんなことは御免だ。』


そう言って翼を広げる…


『あくまで…害虫どもの味方・・・と言うのだな。』


その黒き竜はそう呟いた。


その目は…少し、悲しみのような… 切ないような…


そんな感情が読み取れる。


『ああ、 俺はお前の前から姿を消す… もう、会うことは無い。』


そう言う…


『もし… 年月がたち…再び相間見える時 お前が…人を襲っているのを見たらなら・・・』


その目は…黒き竜と同じ…少し悲しみのようなものが含まれている。


『俺は お前を止める。必ずな… この命を懸けてでも…』


そして… 黒き竜を見る。


『・・・・・・・』


納得は出来ない… してないが…


その目を見れば覚悟の程は伝わる。


何を言っても… 自分の真意を変えたりはしない。


確信できるのはなぜか…


それは自身がそうだからだ。


『ふん… 約束は出来ない。今も我は奴らを害虫としか思えんのでな、…が、同族である貴様と敵対するのも複雑だ。』


そう言って、黒き竜は飛びあがる。


『貴様ともう相間見えることが無いことを願うとしよう。』


そして、飛び去っていった。


『…さらばだ、アクノロギア…』


そう言って…


ゼルディウスも姿を消した…




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