小説『ファミリア!』
作者:レイ()

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窓ガラスに霜が降りる寒い日だった
帰りのHRで音楽を聞きながら机に伏せていると、不意に誰かが背中を軽く叩いてきた
顔を上げると、クラスの委員長である柏本がそこに立っている

「北見さん、推薦の通知を相談室でやるって先生が」

あたしはイヤホンを外すと「あ、うん」と一応の相槌を柏本に打った
特に一緒に行こうといったわけではないが、あたし達は廊下を並んで歩いていく

少し教師からの評判が悪いあたしと、優等生の柏本の背は同じくらいで
学級会議では意見が逆になることが多いので顔は色濃く覚えている
黙々と廊下を歩いているのも何だったのであたしは前から思っていたことを柏本に聞いた

「柏本ってさ、髪染めてるの?」

柏本が改めてあたしに顔を向ける、ううん、と柏本は首を振った

「地毛だよ・・・えっと、北見さんは染めてるんだっけ?」

お互いの髪を一瞥する、茶色にほぼ近い少し金色の混じった色、
あたしは風紀検査の時毎回注意されるので疎く思っていた

「あたしも地毛、ほらあたし真面目だから」

あたしが冗談めかして言うと
柏本はどうかな〜とあたしのブレザーから覗く音楽プレイヤーやコスメを見て苦笑いをする

「でも、それなら私達何だか髪質似てるね?」
「・・・柏本みたいな地味子と一緒にされるのは・・・」
「え、酷い」

そんな風に柏本は思っていたより気さくで会話がある程度弾んできたとき、怒声が飛んだ

「柏本、北見、喋ってないで早く来い!」

担任の数学教師が相談室の前で仁王立ちをしていた
柏本は肩をすくめると「いこ」とあたしの手を掴んだ

______手首に激痛が走る

「っ!!」

内側から針金で引っ掻き回されるような痛みがあたしを襲い、
あたしは突き放すように柏本の手を振りほどいていた
困惑したように柏本があたしを上目遣いに見てくる

「ご、ごめん、強く握りすぎたかな」

あたしは無言で首を振った、ごくり、唾を飲んで一呼吸置き、
明るい笑顔を柏本に向けた

「ゴメン柏本!ちょっと腕痺れててさ、死ぬかと思った」

ホッとしたように柏本が胸をなで下ろす
そこから担任に謝りながら二人で廊下を走った

無理に作った笑顔、引きつっていたのがバレてはいないだろうか
ブレザーとブラウスの下、紫色に腫れた左手首
誰にも知らたくなかったから

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