小説『ハイスクールD×D×H×……』
作者:道長()

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まえがき

下ネタ注意報発令です。苦手な方は、回れ右をした方が精神の健康に良いと思われます。







「ねみぃ……」
「今朝は一段と眠そうだね。何かあったのかい?」

いつも通りに、朝の特訓をしようと準備体操をしていたのだが、あくびが出てしょうがない。まだ鬼コーチモードになっていない慶路が、気をつかって事情をうかがってくれた。
訓練中もこれくらい優しいと良いんだけどよ……。

「あ〜、何か昨日の夜、部長がオレの部屋に入って来てな」
「ふむふむ」
「抱いてくれ。って言ったんだよ」
「一誠」

オレの目をジッと見て、慶路が心底心配そうな様子で

「ご使用は計画的にな。何のために溜めるのか、よく考えるんだ」
「妄想じゃねぇよ!? 事実だよ!?」
「大丈夫。今日は休みにするから今のうちに空っぽにしておくんだ」

そう言って、どこからともなく新品のティッシュ箱を渡してきた。

「お前、オレの事どんな目で見てるんだよ!」
「あ、足りなかった?」
「どんだけ!? みくらなんこつの作品でも、そこまで必要な奴は中々居ないわ!?」
「こんにゃくはコンビニで買いなさい。ローションは……『自前』で大丈夫だよな?」
「なんで自前の部分を強調した!? そっちもそんな出ないから!」

てか、お前ってそんなシモに走るキャラだったっけ!?

「たまには、下ネタも良いだろう? あんまり肩肘張ってると疲れてしょうがないからね」
「肩肘張るからって、いきなり下ネタかますなよ……」

キャラが変わり過ぎてビックリしたぜ……。つーか、コイツって意外とお茶目だよな。真面目なヤツだと思ってたけど、実はウチだとけっこうヤンチャだったりするのか?

「しかし……、抱いて……か。大方はアレだろうな」

慶路の顔が、いたずら好きそうな顔から、真顔に変わる。
心あたりがあるのか?
部長がオレにあんな事を言う理由について。

「何か知ってんのか?」
「ああ。ま、古い家のしがらみというヤツだよ。僕達だけで変えていい問題じゃない」

それでも一誠達の力は必要になるとは思うけどね。
いつもの薄い笑みを浮かべて答える慶路。

「とりあえず今日は休みにしよう。今日一日で疲れを取りきるように」
「マジか!」

正直、夜の仕事と慶路との特訓でかなりキツい状態だったから助かる。

「ひさしぶりに二度寝が出来る……!」

待ってろよ。愛しいハニー(ベッド)、今朝は寝させてもらうぜ!

「……何日猶予がある……? 明日ということは無いからな。早くて次の休み、遅くて二週間か……?」

慶路が何か言ってるが、よく分からないのでスルーする。何か言って邪魔したら悪いしな。

「最早賭けにもならんな……。情報アドバンテージ以外、勝ってる要素が無い……。いや、こちらのジョーカーはリアスと姫島だと思われてる筈だ。これなら付け焼き刃でもなんとかなるか?」

部長と朱乃さんが何かしたのか?
それに付け焼き刃でもなんとかなるかって……?
慶路の顔を覗き込むが、口許に手を当て、考え込む仕草をしているばかりで反応がない。

「不確定要素は大きいが……。不確定要素を確定要素だと思い込んでいるのなら、寧ろ旨味か。後はお茶を濁す算段だな……」

よし、と。顔を上げると踵を返して、公園から出ていった。

「……すっげーイヤな予感が……」

アイツが真面目な顔をしてるってことは、何かあったんだよな。

頼むから、また命懸けになるのは勘弁してくれよ……。














「部長のお悩みか。たぶん、グレモリー家に関わることじゃないかな」
「ほへぇ……。部長さんも大変なんですね……」

放課後、木場とアーシアと一緒に部室へ向かう途中、最近の部長の様子がおかしい事について、木場に聞くとそんな答えがかえってきた。
オレもそうだが、それ以上にアーシアは心配そうにしていた。右も左も分からない自分に、生活出来るよう手を回してくれた部長が、大変だと聞いて居ても立ってもいられないんだろう。
(余談だが、住んでいるのはオレの家である)
ちなみに、慶路も色々手を回してくれたのだが、レイナーレのこともあって何となくぎこちないやり取りになっている。慶路に感謝していないわけではないのだが、曲がりなりにも、自分を拾ってくれたレイナーレを殺した慶路には、少し複雑なものを抱いているようだ。

(ホントに優しい子なんだよな。アーシアは)

その甲斐があってか、転校初日から上手く皆の輪に入れていた。松田曰く、

「アーシアちゃん。マジ天使。」

らしい。

「そういや、慶路も何か知ってるみたいだったな」
「慶路さんが? そういえば、あの人は部長とは幼馴染みらしいし、立場の関係でそういう話には敏感なんじゃないかな」
「部長さんと慶路さんが、ですか。何となくわかる気がします」
「オレも何となくわかるな」

アーシアの発言に、程なく頷く。部長、慶路といる時、ほんの少しだけどいつもより態度が柔らかかったからな。それに深夜、オレに抱かれようとして来たとき――

「慶路は……。……とにかくダメ。彼に迷惑をかけるわ。」

その時の部長の目、慶路がレイナーレを切った夜に、慶路を見ていた眼とすごく似ていた気がする。まるで、遠いなにかを見ているみたいな――。

「……僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」

いつの間にか部室の扉前に着いていたらしい。
木場の異変を見て、オレも神経を尖らせる。

(……ぜんっぜんっ。わかんねぇ……)

部長達は中にいるみたいだから、多分害はない……はずだ。

意を決して部室の扉を開けると。
「遅かったね……。一誠……」

なぜだかヤケに顔色の悪い慶路がいた。しかも手にバケツを抱えている。中は……カラか。

「わりい……、大丈夫か?」
「何とかね……。ちょっと危ないけど」

適当に返事をしながら部室を見回すといつもの面子が

(あ。グレイフィアさんだ)

昨日、オレの部屋に部長が来たとき、部長を止めにきた、銀髪のメイドさんがいた。

そして、気付く。
この部室、メチャクチャ居心地が悪い。

「まいったね……」

木場の小さな呟きが聞こえた。小声なのにヤケに響く。氷柱を木琴代わりに使ったらこんな感じに響くのかもしれない。

「全員揃ったわね。では、部活をする前に少し話があるの」
「お嬢さま。私がお話ししましょうか?」

部長はグレイフィアさんの申し出をいらないと手を振っていなす。
「実はね――」

瞬間、部室の床に描かれた魔法陣が光だす。
え……? 転移現象? グレモリー眷属はここに全員いる。慶路もいるし、グレイフィアさんみたくグレモリー家に仕える悪魔か、慶路の部下か?

そんなオレの無知で、無頓着な予想は儚く打ち砕かれた。

(紋章が!?)

馴染み深いグレモリー家の紋章が変化し、見知らぬ形へ変容した。
(グレモリーじゃない! じゃあ慶路の……?)

「――フェニックス」

木場の口から零れた言葉を、とっさに拾う。

フェニックスって、たしかかなり有名な悪魔じゃ!

魔法陣から炎が現れたと思うと、まるで意思を持っているみたいに盛んに燃え上がった。

チリチリと、熱気と存在感が膨れ上がる。

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

炎の中から男が出てきたと同時に





「おぅぇぇぇ……」

昼飯をリバースした慶路と

「……」

無言で慶路の背中をさすっているグレイフィアさんが見えた。

-20-
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