小説『宇宙戦艦ヤマト復活編〜妄想第2部』
作者:kenis()

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宇宙戦艦ヤマト復活編〜妄想第2部 第2節

「左舷被弾! 第1副砲損傷!」
「主力戦艦【扶桑】、【和泉】、撃沈されました!」
「SUS艦隊、突撃してきます!」

 宇宙戦艦ヤマト艦橋―――
 ヤマト率いる地球防衛軍とSUS軍が、激突していた。
「スーパーアンドロメダ級全艦、拡散波動砲にエネルギー充填120%! 発射準備完了!」
「発射!」
 十数隻のスーパーアンドロメダ級戦艦から、一斉にSUS艦隊に向け、拡散波動砲が放たれる。十数本の光の奔流は、SUS艦隊の手前で無数の光に拡散し、迫り来るSUS艦隊全てを巻き込み消滅させた。
『敵艦隊、全て消滅しました!』
 電算室から真帆の声―――真帆たち電算室員は、第三艦橋大破により、全員が高濃度放射能を浴び、仮死状態で救出されたが、懸命な治療のかいあって、全員が蘇生できた。が、将来、子供に遺伝子的な障害が出るかもしれないと医者に言われた時は心苦しそうだった―――。今回もSUSを撃退できた。
「地球防衛軍司令部へ、我、敵艦隊を全て撃退せり、と報告せよ」
「了解」
 古代の命令で、地球に勝利の報告が届く。

 宇宙戦艦ヤマトの活躍により、SUSの本拠地を壊滅させ、カスケードブラックホールを破壊してから2年の歳月が経過していた。
 SUSは銀河系の支配を確立する為に築いた活動拠点を失ったが、その後も天の川銀河の各所に艦隊が現れ、地球防衛軍や大ウルップ星間国家連合に対し、艦隊による攻撃を繰り返していた。SUSは神出鬼没であり、各国とも専ら専守防衛を強いられていた。SUS軍は、いつどこに現れるか全くわからないのだ。
 地球防衛軍、大ウルップ星間連合軍、そして新ガトランティス帝国軍にボラー連邦まで、銀河系に住まう全ての者たちが力を結集し、SUSの攻撃から天の川銀河を守っていた。
 太陽系のある銀河系東部方面には、修復された地球防衛軍艦隊旗艦【ブルーノア】率いる艦隊が、ロアズのある銀河系南部方面は【まほろば?】率いるロアズ防衛艦隊、核恒星系、大ウルップ星間連合では、フリーデ、ベルデル、エトスの連合軍に加え、地球からもアマール防衛のため、地球防衛軍を派遣していた。
 銀河系西部方面には新ガトランティス帝国のノーデンスが周回、警備を担当し、銀河系北部では国家再建が進むボラー連邦が目を光らせ、それら勢力の眼の届かない地域には宇宙戦艦ヤマトが派遣された。
 いまや地球の勢力圏は銀河系東部のペルセウス腕全体、天の川銀河の約4分の1を占めるまでに拡大していた。地球防衛軍は、その理念通り、宇宙の平和を守るリーダーとして、名実共にその地位を確立しつつあった。地球連邦の国家理念は『地球は、いかなる国家・勢力に対して支配、管理しない。またいかなる国家、勢力に対して支配、管理されない。それらが守られぬ場合は、たとえ最後の一人になっても戦い続けることを辞さない』。そして、その象徴として、宇宙戦艦ヤマトの勇姿があった。
 その理念は、皮肉にも、SUSという共通の敵の存在によって、銀河系のあらゆる国家に広がった。各国家間の交流も盛んになり、『大銀河連合』の樹立も遠い未来の話ではないのかもしれない。

 地球防衛軍司令部―――
 その大パネルには、銀河系全体図が表示され、各国の艦隊とSUSの動向を随時把握している。
「ヤマトより入電。我、敵艦隊を全て撃破せり」
「ロアズ防衛軍、【まほろば】の神崎長官より入電。SUS艦隊を全て撃退せり」
「うむ」
 真田長官が頷く。大パネルの一角に示されていたSUSを示す赤い矢印が二つ消える。その銀河系全体図には、地球とロアズ、先に消えたSUSと相対した位置、そしてアマールに地球防衛軍を示す青い矢印。核恒星系には大ウルップ星間国家連合を示す緑の矢印、銀河系西部方面には新ガトランティス帝国の黄色の矢印が赤い矢印と相対し、銀河系北部のあちらこちらにはボラー連邦を示す紫の矢印。
「ガトランティス帝国軍より入電。SUS艦隊撃破!」
 黄色の矢印に相対していた赤い矢印が消える。これで銀河系に存在する赤い矢印は全て駆逐された。今のところは。
「各国に第9次SUS侵攻艦隊の撃退の報を送れ」
「はっ!」
「ヤマトには至急地球に帰還するよう通達せよ」
「了解」
 今回、ヤマトが向かった宙域では激戦が繰り広げられた。ヤマトも少なからず被害を受けたのだ。

 宇宙戦艦ヤマト艦橋―――
「艦長、地球防衛軍司令部より入電。ただちに帰還せよ、との事です」
 通信士の中西が報告する。
「うむ。中西、全艦隊に戦闘態勢解除、地球への帰還準備に入るよう通達しろ。島、進路地球へ」
「はい」
 ヤマトの操舵席には島次郎が座っていた。結果的に地球は救われたとはいえ、約6億人もの人命が失われた事実は、移民計画本部長の島次郎を退任、降格させるには十分な理由だった。島は自ら艦隊勤務を希望し、古代や真田の計らいもあり、ヤマトの操舵席に座ることになった。それから2年。島は見る見るうちにその実力を開花させ、亡き兄、島大介にも勝るとも劣らない才能を発揮した。
「うっは〜、やれやれ、今日はキツかったぜ〜」
「よう、お疲れ」
 軽口を叩いて、艦橋に入室してきた小林に、上条が声を返す。小林はそのまま上条の左隣の探査席に無造作にもたれかかる。島が操舵を任されたことにより、小林はコスモパルサー隊に専念することとなったのだが、コスモタイガー隊隊長では、形式上、戦術長の上条の部下になってしまう。それに小林が難色を示し、航海長兼コスモタイガー隊隊長という、何とも奇妙な組合せの兼任となった。舵を握る島は、立場上は航海班員の一人だ。
「小林! 戦闘が終わったとはいえ、まだ任務中だぞ!」
 小林の態度を見かねて、機関長席から徳川が怒鳴る。しかし、日常茶飯事となったこのやり取りを気にする者は誰もいなかった。徳川は、はぁ、と溜息をつく。そんな徳川に古代が声をかける。
「徳川、すまんが少し艦を頼む」
「あ、はい。艦長、どちらに?」
 艦橋を出て行く古代に徳川が聞く。
「すぐ戻る」
 一言言うと、古代は艦橋を出て行く。徳川が納得した顔になる。
「はっは〜ん、さすがに艦長も気になるようっすねぇ」
「そりゃそうだろ。任務中とはいえ、常に気になっていたはずだ」
 小林の誰何に、上条が答える。そこに桜井が加わる。
「お嬢さんのこと?」
「他に何がある?」
 そう、この宇宙戦艦ヤマトには、古代美雪も船務班医務科隊員として乗り込んでいたのだ。美雪は今回が初陣だ。もちろん古代は娘の防衛軍入隊には難色を示した。何しろ、地球防衛軍、しかも艦隊勤務者は、度重なる侵略者のせいで殉職率90%を越える職場なのだ。しかも宇宙戦艦という、野郎ばかりが集まる隔離された閉鎖空間に、母親譲りの美貌の娘が乗り込むなど、親として心配なのは当然だ―――もっとも、慢性的な人材不足である地球防衛軍ゆえ、最近は女性隊員も増加しているが―――。しかし、両親から意志の強さと頑固さを受け継いだ娘を止めることはできなかった。真田長官の計らいで、ヤマトに配属になったものの、心配には違いない。
 古代が医務室に入ると、聞きなれた声が耳に入る。
「おぅ、来よったな、古代。そろそろ来る頃じゃと思っとったぞ」
 佐渡酒蔵だ。今回、美雪のヤマト乗組を古代がしぶしぶ認めた理由の一つだ。佐渡が美雪を心配し、ヤマト復帰を決意、美雪の指導に当たってくれるというのだ。
「お、お父さん・・・じゃなくて、艦長!」
 さっと美雪が敬礼する。が、その肩は緊張で強張っている。古代は頷くと艦橋に戻っていった。
「美雪ちゃん、やっぱりさすがの古代も心配しちょるようじゃ」
 佐渡が負傷者の治療を片手に、一升瓶を傾けつつ言う。
「うん・・・」
 美雪も負傷者に包帯を巻きながら相槌を返す。以前ほどの父娘の確執はなくなったものの、母の行方は一向に知れず、しかも周囲から期待の視線。あの“英雄”、古代進と森雪の娘。できて当然、できなければ失望。“英雄”の名の重みに潰されそうな時もあった。
「美雪サンハ、何ガアッテモ、私ガ守リマス」
「ありがと、アナライザー・・・」
「まあ、そんなに緊張しなさんな。この艦には美雪ちゃんを“英雄”の言葉で押しつぶすような輩はいないからね」
 コスモパルサー隊制服のまま、負傷者の手当ての手伝いに来た美晴が言う。美晴は佐渡の復帰と共に、正式に念願のコスモパルサー隊隊員となったのだが、ちょくちょく医務室に手伝いに来てくれる。
「但し、悪い虫には気を付けな。美雪ちゃん、かわいいからねぇ」
 冗談交じりに美晴が言う。
「そんな事・・・」
「特に、女と見れば見境なく声をかける奴がいるからねぇ」

「へっくし!」
 小林の突然のくしゃみに上条が嫌な顔をする。唾が小林の目の前のパネルに飛散したからだ。
「ははは・・・」
 ハンカチを取り出し、照れ笑いをして丁寧に拭き取っていく小林。そこへ、真帆がレーダーに映る小さな点に気付いた。
「機関長、レーダーに反応、10時の方向、距離7千。小さな金属反応があります」
「ん? デブリじゃないのか?」
「いえ、微弱ですが、電波を発信しています」
「何? よし、探査機を出して回収させろ。木下」
「はい、工作班、探査機の発進準備にかかれ。漂流物の回収と解析の準備!」
 ヤマトから探査機が発進していった―――

・・・・・

「これが回収したカプセルです」
「ふーむ?」
 木下技師長が古代に回収した通信カプセルのような漂流物を見せ、古代が首を傾げる。なんと、通信カプセルには『古代進へ』と自分の名が書かれていたのだ。
「解析できるか?」
「やってみましたが、まだ解析できていません。防衛軍のあらゆる解析コードを試してみましたが、駄目でした」
「他の解析コードは?」
「後はガミラス戦役以前のコードか、もしくは他国のコードで試してみるしかありませんね」
「そうか。じゃあガミラスの解析コードからやってみようか」
「はい」
 木下がカプセルを解析機にかけ、ガミラスの解析コードを入力する。
 ピピピ・・・
 パネルに反応があった。
「当たりのようだな」
「しかし、何故ガミラスのものが?」
「ガルマン・ガミラス時代のものが漂っていたのかもな」
 古代が想像するが、その内容は、さすがに想像の範疇を越えている事を全員がまだ知らなかった。
「解析完了。音声が出ます」

『久しぶりだね、古代・・・』
「デスラー!」
 カプセルから流れてきた音声はデスラーのものだった。
『ヤマトが沈んでから19年。お互い、歳をとった・・・』
 ヤマト自沈から19年? 通信カプセルはかつてのガルマン・ガミラスのものでない。最近放たれたものだ。
『私はあれから、赤色銀河に新天地を求め、旅立った。赤色銀河は元の異次元に急速に消えてしまったので、我々も巻き込まれ、君達の次元とは永くコンタクトが取れなくなってしまった。私は十年以上も赤色銀河を彷徨い、やっとのことで新しい母なる星を見つけ、ガルマン・ガミラスを再興させた』
『だが、そんな我々を突然攻撃してきた輩がおるのだ。君達も知っていよう。SUSだ』
「SUSがガルマン・ガミラスにも攻撃を!?」
『聞けば、赤色銀河を異次元から出現させ、我がガルマン・ガミラスを滅ぼしたのは奴等の仕業らしい。SUSは銀河系に侵攻するにあたり、障害となるであろう我がガルマン・ガミラスとボラーを一気に片付けるつもりだったようだ。私をそれを知ったとき誓った。必ずや、やつらの母星を見つけ出し、その身でガルマン・ガミラスを滅ぼした罪を贖わせてやると』
「・・・・・」
『だが、今の我々には次元を移動する術はない。奴等は神出鬼没で、我々も苦戦している』
『聞けば、地球もSUSの攻撃を受けているそうだね。我々が偶然手に入れた記録媒体からの情報で、地球の状況は大方わかっている。君達の事だ。必ずやSUSを撃退し、移動性ブラックホール・・・奴等SUSの次元トンネルを破壊したものと信じている』
「・・・何故デスラーがその事を?」
『・・・古代。我々は現在、次元航行が可能な宇宙戦艦を開発している。いまはまだ次元トンネルが不安定で、大きさも拳大のものを作るのが精一杯。とても艦が通れるレベルではないがね。そこに通信カプセルを大量に撃ち込んだのだ。これはその内の一つだ。どれか一つが君の元に届けば幸いだ』
『古代! この通信カプセルの最後に、我々が開発した次元トンネル発生機の設計図がある。地球でもそれを元に次元トンネルの技術を研究し、我々の次元へ来るのだ! 我々の開発した次元トンネル発生機は、入り口こそ充分な大きさを作る事ができるが、出口が小さくて、次元トンネルを通過できんのだ。地球のある次元からも、この次元トンネル発生機を改良し、出口を広げて欲しい。そうすれば、我々は再び再会することができる』
『そして共に我等を脅かす敵、SUSと戦おうではないか。我々が組めば、何者にも負けはしない!』
『もう一度言う。古代、次元トンネル発生機を完成させ、我々の次元に来るのだ! ユキも待っておる』
『あなた・・・』
「雪!」
『ワープインの直前に艦橋に被弾し、私は異次元空間に放り出されてしまったの。そこをたまたまガルマン・ガミラスの艦が通りかかって、助けてもらったの』
『一時は危なかったが、もう大丈夫だ。残念なのはユキと一緒に収容した他3名は助けることができなかった事だが、丁重に葬らせていただいた』
「デスラー・・・」
 やっと、やっと愛する妻の足取りが掴めた。しかも無事だというのだ。古代の心に喜びが広がった。だが、同時に生存者は雪一人、という事には心が痛む。
『古代、我々の赤色銀河の核恒星系で、大規模なSUSの要塞が建設中との情報がある。SUSの警備も厳重で、とても手が出せん状態なのだが・・・。だが我々と地球軍が協力すれば、必ずや敵の防衛網を突破し、要塞内に乗り込めるだろう。奴等の要塞内にあるであろう、奴等の母星のある次元と位置の情報を見つけ出すのが目的だ』
『奴等の母星に攻め込み、奴等を根元から葬らねば、SUS艦隊は尽きることなく我々を攻撃してくる。このままでは、我々はいずれ消耗し、攻め滅ぼされてしまうだろう・・・』
「・・・・・」
『君達が来るのを信じて待っているよ。再会を楽しみにしている・・・』
 音声が切れ、パネルに何かの設計図が映し出される。
「こ、これが次元トンネル発生機の設計図でしょうか?」
「うむ。地球に帰還したら、真田さんに見てもらおう。皆、この内容は他言無用だ。」
「はっ!」
「工作班は、地球に帰還するまで総動員で設計図の解析をできる限り進めてくれ」
「はっ!」
 ヤマトとその艦隊は急ぎ地球への帰途についた・・・

・・・・・

 地球。西暦2223年―――
 デスラーからのメッセージを受け取ってから、更に1年が過ぎた。
 古代は宇宙開発局に足を運んだ。あれから何度もSUSとの戦いがあったが、現在ヤマトはパワーアップの為の改装中だ。当分は地上勤務と休暇になっている。
 宇宙開発局の地下深く、一際警備の厳重なエリアに入っていく。警備員が誰何すると、古代は名を告げ、身分証明を見せる。警備員がさっと敬礼し、道を開け、ゲートを開く。
 内部では宇宙戦艦ヤマトが改修中だった。その傍らに設置してあるブースに真田長官がいる。古代が足を向けると、他にも二人、人がいるのがわかった。一人は確かロアズ防衛軍の技術責任者、伊賀だ。もう一人は・・・童顔の眼鏡美女で顔とはアンバランスに盛り上がった胸。その肌はピンクに近く、明らかに地球人ではない。しかし、真田がうんうんと頷き、彼女がコンソールを操作している事から察するに、技術者なのだろう。
「真田さん」
「古代、来たか」
「彼女は?」
「こちらは、新ガトランティス帝国技術開発局のエレクトラ局長だ。今回の次元トンネル発生機の開発において、協力してもらっている」
「エレクトラで〜す! よ・ろ・し・く〜! 貴方が古代艦長さんですか〜?」
「そ、そうだが・・・」
 何ともいえない間延びした口調。これが本当にあの彗星帝国の技術者・・・それも技術開発局のトップか?
「あ、その顔は信じてませんね〜。地球軍の波動砲を解析したのも〜、コスモパルサーの原型になってるグリファー?を開発したのも〜、あたしなんですよ〜」
「古代、こう見えても彼女は優秀な、いや天才的な科学者だ」
「そ、そうですか・・・。しかし彗星帝国の技術協力とは・・・。よく向こうが承知しましたね?」
「ぶ〜! 彗星帝国じゃなくて〜、新! ガトランティス! あんな滅茶苦茶な〜、前大帝と一緒にしないでくださ〜い!」
「す、すまない・・・」
「いいじゃないの〜。SUSはあたしたちにとっても敵なんだし〜。あ〜、確かにあたしたちと地球は過去争いましたけど〜、あたしは全然そんな事気にしてませんから〜。っていうか、元々この設計図はガミラスからもたらされたんでしょ〜? 一緒じゃないですか〜」
 長い話に間延びした口調。古代はクラクラしてきた。
「古代。どうもこの次元トンネル発生機には、瞬間物質移送機の技術が応用されている。地球だけではとても装置を開発できん。だからロアズからの筋で、ガトランティスにも事情を話し、技術協力してもらっている訳だ」
「な、なるほど」
「・・・皮肉ですよね〜。かつてはあたしたちにとっては悪魔の象徴、畏怖すべき大敵のヤマトが目の前にあるなんて〜。しかもそれの改修にあたしが手を貸して〜、そしてそのヤマトがあたしたちを含めた〜、この銀河系全ての人を救うんですからね〜」
「・・・・・」
「ねぇ〜、真田さ〜ん? やっぱりヤマトの波動砲にはリップルラブラブハート波動砲を・・・」
「それはいらんから」
「え〜! ヤマトの六連波動炉心の出力なら〜、艦隊どころか恒星だって破壊できちゃいますよ〜」
「な、なんですか、そのリップル何とかというのは?」
 クラクラしながらも古代が聞く。
「や〜ん! よくぞ聞いてくれました〜! え〜とですね〜、ハート型に収束したタキオン粒子が〜、砲口からぽわん、ぽわんとシャボン玉みたいに飛び出して〜、敵を攻撃するので〜す! ヤマトの六連波動炉心なら〜、計算上〜、前方距離30万宇宙キロ、直径10万宇宙キロの宙域を一気に消滅できま〜す! これを標準装備した戦艦が量産された暁には〜、SUS艦隊なんか〜、1隻であっとゆ〜まに消滅できま〜す! すごいと思いませんか〜?」
「・・・・・」
 確かに凄そうな兵器には違いないのだが・・・
「な、何故ハート型なのですか?」
「え〜! かわいいからに決まってるじゃないですか〜!」
「・・・・・」
 自分たちはかつてこんなの相手に死闘を繰り広げたのか・・・? こんなのがあの悪魔的な彗星帝国を造ったのか・・・? あの戦いで散っていった戦友が不憫に思えてきた。
「ま、まあ、リップル何々はまたの機会にして、今は次元トンネル発生機の開発に全力を注ごう」
「は〜い!」
 心なしか、真田長官の顔に不安の色が見えるのは気のせいか。
 しかし、間延びした口調で話していたエレクトラが、手元は恐るべきスピードでコンソールを操作し、画面に映し出されている映像が次から次へと処理されているのを見て、古代は驚く。
「これで〜、どうでしょ〜か。ちょっと実験してみたいですね〜」
「いきなりヤマトで実験できんから、無人艦に搭載してみよう」
「でも収束型波動砲搭載艦、それも三連の波動砲が必要ですよ〜。出口の空間の穴を波動砲で広げなくちゃいけませんから〜」
「どういうことですか?」
 古代が聞く。
「この試作型装置では、入り口の穴を開く時、そして出口の穴を開く時、膨大なエネルギーを必要とするんだ。入り口を開くのは、他の艦が波動砲を撃てばいいが、出口はトンネルを通過している艦が撃つ必要がある。それも三発分のエネルギーが必要なんだ」
「では無人艦3隻を?」
「いや、トンネルは1隻が通過するのがせいぜいの大きさなんだ。六連のヤマトなら問題ないのだがな・・・」
「無人艦3隻持ってきて〜、くっつけるしかないですね〜。今から三連波動炉心搭載艦なんか造ってる時間的余裕はないですし〜」
「しかし、長官。充分な出力をもった波動砲搭載艦を3隻もくっつけてしまうと、サイズが大きくなりすぎてしまいます。トンネルを通過できるかどうか・・・」
 伊賀が発言する。
「そうだな・・・」
「長官。仕方がありません。こんな事もあろうかと、保管していたアレを使うしかないのでは?」
「アレか・・・」
「アレ、とは?」
 真田、古代、伊賀が話し込む。そこへエレクトラが割り込む。
「あ〜、も〜、あたしも話に混ぜてよ〜」
 そんなエレクトラをよそに、伊賀がコンソールを操作すると、1隻の戦艦が映し出される。それはアンドロメダをさらに強化した大型戦艦。
「あ、このいかついゴテゴテの戦艦は〜、見覚えがありますね〜」
 艦首波動砲を3門装備したアンドロメダ級戦略指揮戦艦。全長360m、総重量15万トン。建造から20年が経過し、【ブルーノア】の完成と共に退役したかつての地球防衛軍総旗艦。
「【春蘭】だ」
「こんな事もあろうかと、保管してあったのです」
「【春蘭】の3門の波動砲と自動制御システムをそのまま使おう。波動エンジンは波動砲充填用に回さねばならないから、別制御の補助エンジンを増設せねばならないな」
「そうですね」
「では、早速準備に取り掛かろうか」
「は〜い!」
「よ、よろしくお願いします・・・」
 古代は一礼して、秘密ドックを後にした。

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