小説『虹の向こう』
作者:香那()

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しばらくして、ゆうちゃんは何を思ったのか告白することを決めたと言っていた。

私にはそんな勇気はなかったので、すごいなと思っていた。

ある日、突然私の元へ駆け寄ってきたゆうちゃんが言った。

「香那ちゃん、あたし、言うてきたで」
「は?何を?」
「好きって告白してきた」
「ええっ?で、なんて?」
「恥ずかしくってそのままここに来たがよ」

返事はまた…とかなにも言わずに遁走してきたらしい。

まあ、博久くんだって男だ。女に言わせといて、返事をしないのはないだろう。

「で、返事を待つが?」
「うん」
「ま、いいんじゃない」

その後は何もなかったようにしていたが、いつの間にか、ゆうちゃんと博久くんは一緒にやってきては帰るようになっていた。
てっきり、付き合いだしたものと思っていた私達だったが、聞くと違っていた。

「は?付き合ってない?」
「うん、でも、博久くんが迎えに来てくれて送ってくれるき」
「でも、好きって言うてくれんの?」
「うん。でも、今のままでもえいが」

案外、博久くんは奥手なのかと、雅巳くんと話していた。

「まあ、でも、男が送迎するってことは、好きってことやきにゃあ」
「そう?友達でもあるんやない?」
「仕事終わって、毎日するかや?俺は嫌」

言われてみればそれはそうだ。はっきりすればいいのにと思っていたら、また突然ゆうちゃんが嬉しそうにしてきた。

「香那ちゃん、香那ちゃん!聞いて聞いて!」
「いや、聞かんでもわかるような」
「言わせてや〜!あのね、あたし、正式に博久くんとお付き合いすることになったき!」
「へ〜。そりゃ良かった。なに?返事、せっついたん?」
「違うよ。なんかね、博久くんが、”あれってまだ続いてる?”みたいなこと言うき、何かと思ったら告白の ことやって。で、うんって言ったら、”好きやき、付き合おう”って」
「ほうほう」
「んで、家の前でチューしたがって。へへへ」
「…することはしたんやね。良かったね。おめでとう」
「じゃ、あたし、博久くんのとこへ行くき」

友情なんてこんなもんか(笑)
でも友達が幸せになってくれるのは、嬉しい。
家に帰って雅巳くんに知らせ、次の日、会社で散々いじってやったらしい。

でも、これでカップル成立だ。
それも仲良しコンビで。
楽しいことがいっぱい待っている気がする。そう思った。

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