小説『リストラ』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

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 最終章

 「ただいま……」
 「お帰りなさい。お疲れ様でした」
 二日ぶりに連絡もなしに帰って来たのに、妻はいつもと変わりなく応対した。何故だろう?
 子供達も珍しく玄関に迎えに出た。家に入ると、いつもより豪勢な料理を用意してあった。
今夜は家族が全員揃っている。息子の克之は大学生といえ二十歳、立派な大人だ。
 色々と付き合いもあるのか夕食を共にする事は少なかった。それが今夜は居る。
 真田は余計に違和感を覚えた。

 「お父さんもういいのよ。話は全て佐竹さんから全て聞いたわ。再就職の話も決まったから
安心して労ってやってくれって言っていたよ」
 「そうか。もう知っていたのか。本当に皆には心配掛けた。もうひと踏ん張りするよ。本当に
佐竹先輩には足を向けて寝られないほど世話になった。だから何も心配ない。さあ食べようか。
俺はもう大丈夫。心機一転頑張るよ」
 真田は家族の笑顔を見てホッとした。戦場からの生還、まさに此処は天国であった。

 それから一ヵ月後、15%増の退職金を貰って退社。数日後、新しい会社に就職した。
 給料は1割ほど下がったが贅沢は言えない。退職金はローンを全額返済したら殆ど残らな
かったが、それでもローンは完済し心配はなくなった。
 真田が定年を迎える頃は、長男もきっと立派な社会人になっていると期待を込めていた。
 そして自分と同じ哲を踏ませない為に今のうちに、色んな資格を取る事を薦めた。
 万が一解雇されても資格が役に立つ筈。
 真田は今回のリストラで沢山の事を学んだ。
 良き友人を作る事。理解ある家族を作る事。常に最悪の事態を想定して備える事。
 真田は地獄からの生還は、多くの生きる為の知識を得た。



 諺
 「総領の十五は貧乏の世盛り」 古い諺であるが長男が働くまでは苦しい意味。
 「備えあれば患えなし」 読んで字の如しで、いざと言う時の為に準備する事。
 「雨の日の為に何か取っておけ」 これは同じくイギリスの諺で備えあれば…と同じ意味。

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