小説『ドラゴンボールN』
作者:プータ()

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 第三十七話 天津飯って三つ目人ていう宇宙人らしいね

 side三人称

 『さあ準決勝第一試合は前回優勝者のタキシード仮面選手と鶴仙流のお弟子さんで亀仙人のお弟子さんにも勝った天津飯選手です!』

 リポーターによりよばれた名前の二人はそれぞれ順に武舞台に上がる。
 タキシード仮面は目元は隠されていて見えないが口元は微笑みに固定されている。
 天津飯のほうはきつく締められている。やはり多少なりとも緊張しているのかもしれない。なにせ相手はチャオズを一方的に倒した相手だ。
 ちなみにくだんのチャオズは医務室から帰還して鶴仙人と一緒だ。

 「(奴は強い!チャオズが一方的にたおされるほどに。だがこの後の決勝戦では亀仙流の弟子がいる。即効で決めて体力を温存するほかあるまい)」

 程よい緊張感の中、天津飯は冷静だった。
 チャオズとて気を使った戦いは一切していない。武空術もチャオズはそれほど早く移動はできない。それに予選は室内、いかに空を飛べようとも限界はあった。それゆえタキシード仮面との戦いでは本気を出せなかったんだろう。天津飯はチャオズが負けた理由をそう決め付けて自身よりは格下と見た。
 この考えにいたるのはタキシード仮面が気を使っていない事(うまく隠しているのでかなり気の感知に長けた者でないときがつけない)と、チャオズは今だ未熟であったからだ。どどん波も使っていなかった。というよりはタキシード仮面が周囲に被害が行かないように使う前に倒しただけだが。
 
 『それでははじめてください!』

 その声と同時にタキシード仮面へと襲い掛かる天津飯。タキシード仮面はそれを見ているだけだ。
 天津飯の高速での拳がタキシード仮面を次々と打っていく。

 「すさまじい攻撃!まるでマシンガンじゃ!」

 その攻撃を見ていた亀仙人(ジャッキーは負けたので変装を解いて観客席でセロリやウーロンと戦いを見ている)はそういった。
 勿論セロリは全く気にした様子も無くみている。殴られているタキシード仮面はその場を全く動いていない事に気がつくものは少ない。天津飯とんでもない拳の雨の衝撃のほうが大きく、観客達はそちらのすごさを見て驚いているからだ。
 だが亀仙人や鶴仙人、悟空は気がつく。

 「「あやつ、きいておらん!」」
 
 くしくも、中の悪い鶴と亀は全く同時に気がついた。もちろんセロリは最初から知っていた。
 
 「(くっ、なんだ!?こいつは!)」

 天津飯は自身の攻撃が全く効いていないことに気がついた。拳が当たっているのに、その感触はまるで鉄を殴り続けているのような物。だんだんと拳にダメージがたまっているのを感じた天津飯は攻撃をやめた。
 
 「なんだ?もうおしまいかい?いいマッサージだったんだがね」

 全く効いていないタキシード仮面。

 「けっ!やせ我慢のうまい奴だぜ」

 天津飯はタキシード仮面の言葉をきいても信じない。だがタキシード仮面がタフなのは理解した。多少殺す気でやっても失格にはならないだろうと自分の中でギアをあげる。
 天津飯は自身で気がついているが師である鶴仙人を越えている。そんな自分が負けるわけがないと今だ自分の強さを疑っていないのだ。

 「ならば!」

 そういって今度は目にも留まらぬ速さでタキシード仮面の後ろに回る。そして狙うは後頭部。ためた力を一気に振りかぶる天津飯。だがその攻撃はタキシード仮面の体をすり抜けてしまう。

 「ざ、残像拳だと!?」
 「そうだよ」
 「なっ!」

 気がつけば天津飯の後ろにはタキシード仮面が立っている。天津飯へと軽くパンチを繰り出すタキシード仮面。だが天津飯からしてみればとんでもない一撃によって場外へと吹っ飛ばされる。そしてゆっくりと消えていく残像拳。
 天津飯は吹っ飛ばされた体を武空術で立て直して舞台へと戻ってくる。武空術が使えるものは早々場外へと落ちないいい例だ。
 天津飯はあせっていた。自身の三つの目で見切れぬスピードなど今まで見たことも無かった。反応が追いつかなかったり遅かったりすることはあっても全く見えないといういうことは初めての経験だった。

 「ならばこれで!」

 上空にとどまったままで指先に気を集中させる。

 「どどん!……波ァ!」

 そうしてタキシード仮面へと向けられる指から放たれる黄色い光線、どどん波。それはタキシード仮面へと一直線へと進んでいく。タキシード仮面は全く避けようともせず、ただゆっくりと手を前にかざすだけだ。そして着弾。爆風と砂埃を会場へと散らす。

 「死んだか……これでは失格ではないか」

 観客席で見ていた鶴仙人は断定した。鶴仙人であってもあの威力のどどん波を直撃すればただではすまないからだ。
 だが砂埃がやみ、出てくるのは自身がしていた手袋がこげているのみで悠々と立っているタキシード仮面。
 
 「この程度か鶴仙流……」
 「何!!」
 
 無傷のタキシード仮面は言ってのける。それを見た天津飯は無傷の驚きと自分の流派を馬鹿にされた憤怒を覚えた。そしてタキシード仮面の異常なタフさに驚いた。
 
 「どどん波ね。その程度の技なら私でもできる」
 「はっ!戯言を!」

 この言葉を皮切りに指を一本立ててそこへ気を注ぎ込んでいくタキシード仮面。指にたまった気はドンドン膨張していく。その光景を宙に浮かんで見ていた天津飯は最初こそそれが?といわんばかりに平然としていた。不完全なものであれば多少気を扱えるものであればできる技能だ。避けるのもたやすいし、いっそ跳ね返す事も天津飯には簡単だ。だがそれはドンドンとでかく、膨張していくどどん波をみて考えを改める。

 「(何だあのでかい気は!あれはどどん波なんかじゃない!もっと別の……!)」

 最終的な大きさは小型の太陽のような、大人一人分の大きさまで成長した。

 「いかん!あんなものここで爆発すれば島が吹っ飛ぶ!」

 亀仙人は慌てた。明らかに過剰な攻撃力だ。もしも地上付近で爆発すれば島が吹き飛んでしまうほどのエネルギー。亀仙人は自身の気を感知する能力でもってそう察知した。
 タキシード仮面はそれを天津飯へと向ける。

 「どどん!」
 「うぉぉぉぉ!!!」

 放たれる特大どどん波とそれを避けようとする天津飯。あんなものあたったら絶対に死ぬと言わんばかりのあせりようだ。実際に天津飯に当たったら死んでしまうだろうが。
 なんとかスピードの無い武空術で避ける天津飯。その横を天空へと向かって進んでいくどどん波が突き進んでゆく。恐らく宇宙まではいっただろう。

 「私のどどん波はどうだい?」
 「ど、どんなに威力があろうと当たらなければ意味が無い!この猿真似やろうが!」

 実際の驚きを隠して罵倒する天津飯。タキシード仮面は心の中で「わざと当てないに決まってるだろう」と毒づいた。
 天津飯は言葉を言い終わると地上のタキシード仮面へと近づいていく。理由としては接近戦であまり手を出してこないのを肉弾戦はあまり得意でないのではないかと思ったからだ。更に言えば先ほどのどどん波をみて気功波の類をタキシード仮面にうたせるのはまずいと思っての行為だ。
 天津飯はこのまま接近戦で勝負をつけようと本気の接近戦をする。一撃一撃が殺す気の攻撃。だがその攻撃はまったくタキシード仮面にヒットしない。当たりそうな気配が無い。全ての攻撃を避けるのだ。ついでにその攻撃のすきまにタキシード仮面は失神しない程度のパンチを天津飯へと攻撃を当てていくのだから始末が悪い。

 「(こんな大衆の面前で!亀のじじいが見ている前でこのような無様な試合などでわが鶴仙流がまけるわけにはいかん!!)おいチャオズ、あのタキシード仮面とか言うのの動きを止めろ」
 「えっ、で、でも……」
 「いいからやれ!」

 鶴仙人はそのプライドゆえに暴走を始める。自身の弟子である天津飯が負けそうになるやチャオズの超能力を使ってタキシード仮面の動きを止めようとする。
 
 「くっ!全く当たらん!?」
 「そんなスローな動きではあくびが出てしまうよ」

 天津飯からしてみれば幼い頃より磨いてきた自分の武術が全く効かないというのは悪夢のようなものだ。そして今彼は全力全速全開でもって攻撃している。しかもそれが全く当たらない。当たっても効くかも怪しいが。
 ふと、タキシード仮面の動きが一瞬鈍る。それでも全く当たらないのはかわらない。タキシード仮面はつい先ほどこれを受けた記憶がある。予選会場の時のチャオズだ。今は試合用に気を抑えているタキシード仮面はいかに超能力が効かないといっても全く効果が無いわけではない。多少動きが鈍ったりはする。

 「……君達鶴仙流とはくずの集まりなのか?」
 「なんだと!?取り消せ!誰がくずだ!」

 天津飯が激昂する。普段の冷静な彼なら気にしないかもしれないが今は自身の全力が効かない相手がいる状況では怒りもする。
 タキシード仮面は攻撃を避けながら言う。

 「試合に手を出そうとする奴がくず以外なんだというんだ?チャオズを見てみるがいい」
 
 そういわれてちらりと天津飯がチャオズを見れば、超能力を使う時と同じく手を突き出している。明らかに妨害しているのが天津飯にはわかった。それを見た天津飯は動きは止める。

 「(どうしてそんな事をしてるんだ!!チャオズ!)」
 「(だって師匠が……)」
 「(何だと!)」

 鶴仙流の技と思われるテレパシーのようなもので会話する天津飯達。

 「(何故です!?何故こんな事を!)」
 「(おぬしが負けそうだからではないか!わしに恥を書かせるきか天津飯!)」
 「(しかし……)」

 タキシード仮面はその様子を見守りながらなんとなく原作を思い出していた。このまま天津飯が更生すればこの大会は終了だなと。だが……。

 「(おぬしが勝てる相手か?手段を選んでいるようでは殺し屋にはなれんぞ?)」
 
 天津飯は原作とは違いジャッキーに変装した亀仙人に諭されていない。今だ殺し屋になろうと思っている状態だ。そのため今の状態では……。 

 「(……わかりました)」

 そしてそのまま天津飯はタキシード仮面に向き直る。その表情は苦々しいものだがけっして悪びれるものではない。
 それを見たタキシード仮面は少し驚いた。自分にまとわりつく超能力は全く効いていないが解けていない。これの意味するところを理解したタキシード仮面は。

 「やはりくずだったようだね」
 「うるさい!」
 「まあ私にあの程度の超能力は聞かないからいいんだがね」

 正直言って内心驚いているタキシード仮面。これじゃZ戦士が一人減る。それでもこういった卑怯な事を感受してしまうような奴は将来的にどうかなと思うタキシード仮面。まあでもピッコロも似たようなものかと考え直す。

 「まあいいさ。じゃあヤムチャ君のぶんもふくめてちょっとお仕置きだ」
 「はっ!避けるだけが精一杯の癖にハッタリもいい加減にしろよ」
 「嘘だと思うなら感じてみるといいよ?」
 
 そう言ってタキシード仮面は消える。その速度たるや悟空や天津飯にすら感知できるものではない。
 どうにかタキシード仮面を見つけようと周りを見ながら集中する天津飯。だがそれをあざ笑うようにタキシード仮面は天津飯の眼前に現れてでこピンを天津飯に当てる。

 「ぐあ!」

 そしてまた吹っ飛んでいく天津飯。天津飯はたまらず空中に非難する。今までの試合でタキシード仮面が武空術を使っていないので天津飯は空中なら非難可能と思っての行動。だがタキシード仮面はそれをあざ笑うように空を飛び天津飯の元へと行く。

 「貴様!武空術までも……!?」

 天津飯からしてみればまたしても人の技術の模倣にしか見えない。

 「ああ、武空術だったね。残念ながらこんな簡単な技、私は一歳のときにはできていたよ」
 「な、なんだと!?嘘をつくのも対外にしろよ!このほら吹き野郎が!」

 天津飯からしてみたら一歳というのはありえない数字だ。だがサイヤ人の初期教育の一つでもある。脳みそにやり方をぶち込まれるだけの簡単なことでできてしまうのだ。
 そしてタキシード仮面はまた掻き消える。その飛行速度は天津飯では比較にならない。そして始まる空中でのでこピンお手玉。でこピンで吹っ飛ばされてはいつの間にか吹っ飛ばされた方向にいるタキシード仮面にでこピンで吹っ飛ばされるのを繰り返される天津飯。

 「(こいつ!俺より早く武空術で移動できるだと!しかもこの感触でこピン……!?だ、だめだ、か、格が違う……)」

 あまりの衝撃にでこピンで気を失いそうな天津飯。鶴仙流によって築かれた自信はボロボロになっている。でこピン一つで手が出ないのだからひどいものだろう。実力伯仲、まさに天と地、蟻と像の差である。
 それから暫く。でこピンに飽きたタキシード仮面によってわざと武舞台の中心部へとたたきをとされた天津飯。意識は朦朧としているが天空から自分を狙って降りてくるタキシード仮面が見えた。それはまるで第一試合最後の焼き直し。天津飯がヤムチャの失神中にしたことと全く同じ光景。悟空や亀仙人は「やりすぎだ!」などと考えたその行為。
 天津飯もまさか自身が同じ目に合わされるなどとは思ってもいない。体はでこピンによってほとんど動かない状態。その上から落ちてくるタキシード仮面には恐怖しか感じない。そしてタキシード仮面が天津飯の足に直撃する瞬間、天津飯は来るべき激痛に備えようとして目をぎゅっと瞑る。
 だが暫くたっても痛みを感じない天津飯は恐る恐る目を開けてみる。そこには浮いているタキシード仮面がこっちを見てにやけている。
 そして天津飯は気がつく自分がたばかられたのだと。最初からタキシード仮面は天津飯の足をヤムチャと同じにする気など無かったのだと。気が抜けた天津飯はそのまま体を襲う痛みと倦怠感に身を任せ意識を失った。
 タキシード仮面の勝利宣言が響き渡った。



 おまけ
 NGシーン
 
 「これで終わりだ」

 そういって天津飯へととどめの一撃をはなとうとするタキシード仮面。

 「がんばれえ天津飯!」
 「え?」

 声に反応するタキシード仮面。声は普段から聞きなれている最愛の息子、スピナーから放たれたもの。それゆえに、相手を応援している息子に反応してしまった。

 「!、今だ!」

 そう言ってすぐさまタキシード仮面を場外へと叩き落した天津飯。むすこにおうえんされなかったタキシード仮面は呆然としていたせいでそのまま場外へ。タキシード仮面の負けとなった。

 「なぜ俺を応援しないんだスピナー……」

 ナスビとしての素がでているタキシード仮面の呟きは誰にも聞こなかった。
 こうして史実のとうりに決勝へと進み悟空と戦った天津飯は更生した。

 ※本編とは関係ありません。
 




 あとがき

 毎日更新が崩れてちょっとショックです。昨日は更新できませんでした。まあこれからも毎日は難しいんですが。
 アクセス二十万声と昨日の更新なしの分、今日は文章量二倍でお送りします。

 初期の天津飯は自信家ですし、悟空に対しても戦い始めは雑魚だと思っていた節があります。いかにナスビが強かろうとも最初は下に見るでしょう。そう言ったことが伝わったなら良かったです。
 天津飯の改心フラグが吹っ飛びましたwどうなるんでしょうね。
 おまけはこの作品でもしも悟空VS天津飯が成立していた場合です。親ばかのナスビならこうなるかも?見たいな感じです。こっちのほうが天津飯にはいい気がしますw
 

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