小説『短編集』
作者:クロー()

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神とある坊主の対話



坊主「ねぇ、神様。本当にいるなら姿を現したらどうだよ」

神様もどき「なんだ、坊主。この世のものはすべて無常であって、永久不滅の私が君たち人間の世界に姿を現すことなどあってはならぬことなのじゃ」

坊主「でもそれじゃ神を信じない人間が増えるっすよ」

神様もどき「人間の信仰心は試されなくてはならないのじゃ。きっかけなら一杯転がってるはずじゃ」

坊主「これって神様の声っすよね。単純に俺の心の声なんじゃないかって思えるんだけど」

神様もどき「・・・・・」

坊主「おい、なんか言えよ」

神様もどき「・・・・・」

坊主「急にだんまりになりやがった、ちょっと言わせてもらいたいことがあるんだが」

神様もどき(=坊主)「なんじゃ?」

坊主「ちゃんとさぼらずに仕事してないのか?もっとなんとかならないのかよ。ジェットコースターが脱線する遊園地とかなだれの起きるスキー場とかしょっちゅう壊れるATMのようだよ、この世は」

神様もどき「そう言われてもなぁ。私の言うこと聞かないやつばっかりなんだもん」

坊主「なんだよ、神ってそんなもんなのかよ、神ってよわっちいな」

神様もどき「最終的にはみっちり罰を与えてるんじゃ」

坊主「でもちっとも世の中なんてよくならないじゃないか。むしろ、どんどん悪くなる一方じゃんか。自殺者は増えてるし、人間の心の中なんてもうぐっちゃぐちゃのどっろどろだし。やっぱさぼってんだろっ」

神様もどき「だからさぼってるんじゃないっていっとるがな」

坊主「もうだめじゃん、神様がこの世にいる人間だったらダメダメ親父って呼んでやる」

神様もどき「その程度の知識でなんでもかんでも決めつけるでない」

坊主「俺の中のイメージはあほの坂田だからね」

神様もどき「なに言われても出ていかないもんね」

坊主「もう決まりだ、これからあほのエセ神と呼んでやる」

神様もどき「勝手に言っておれ」

坊主「なんだよ、神なんか俺よりダサいじゃん」

神様もどき「人一人の力など神の力に到底及ばぬわ」

坊主「ダメダメ親父なのに?」

神様もどき「だから決めつけるなと言っとるがな。それより少し仕事したらどうかね?」

坊主「かっこよくないじゃん、そんなことしたら」

神様もどき「君がね、かっこつけててもなんの意味もないよ?」

坊主「うっさいよエセ神が」

神様もどき「いっておくが神は唯一無二の存在じゃ」

坊主「えこひいきめっちゃむかつくーー!」

神様もどき「えこひいきちゃうとか私に従順に生きてからいってみいって」



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